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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
五章:アルファ・クラン
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二話:サイハテとかくれんぼ

遅くなったね。

申し訳ないね。

書きっぱなしで、投稿忘れてたんだ。

 南雲陽子が取った策は至極単純ではあるが、かくれんぼでは効果が高い物だった。

 目を凝らして、どこかにある違和感を探す事。

 それだけではなく、ゆっくりと顔を動かして見せたら、すばやく振り向いたり、その場でくるくる回ってみたりと死角に入られないよう、不規則に動いた。

 しかし、それでもサイハテは見つからない。


「むー……どこに行ったのよ!」


 影も形もないので、彼女は少しばかりイラついている。


「ここだよ」

「ひゃあ!?」


 耳元に息がかかる距離で声をかけられて、陽子は飛び上がってしまう。

 声がした方向へ振り向いても、彼の姿はなく、声がかかった耳を抑えながら、周囲を睨みつける陽子だったが、やはり見つける事はできない。

 とにかく耳を澄まし、目を皿のようにして探索を続けるが、どちらの方向に居るかさえ、分からないでいる。

 そんな彼女の様子を、西条疾風はじっと見つめていた。


 ――そろそろ、助け舟を出してやるか。


 今は夢中になっているが、子供と言うのは往々にして飽きやすい。正確に言うならば、自身で解決できない困難を前にすると、違う知識を求めて移動しやすいのだ。

 子供と言うのは、人生で最も困難に立ち向かっている時期であり、そんな子供たちに対して大人が出来る事と言えば、自身が学んだ知識を分けてやる事位だ。


「目を耳だけじゃない。他の感覚も使うんだ」


 人が最も頼っている感覚は五感の内二つ程。

 その二つを誤魔化す事は、思ったよりも容易い。

 故に、隠れた誰かを探す時には五感の内四つを使わなくてはならない、基本中の基本だ。


「鼻で相手の動きを追え、肌で違和感を感じろ。空気の流れを全身で感じて、相手を探し出せ」


 南雲陽子は素直な少女である。サイハテの言った事を嘘とも思わずに、感覚的な助言を自分流儀で試し始めていた。

 感覚を研ぎ澄ますと言う行為は、人間であるならば誰だって出来る。

 ただ、視覚と聴覚に集中し過ぎて、他が疎かになっているだけなのだ。


「……」


 視覚と聴覚以外を使うのは、大人になれば難しい物だが、彼女位の年齢ならば問題はないだろう。

 陽子がサイハテの居場所を感じ取るのを、彼は直感で理解した。


「そこっ!」


 彼女と目が合う。

 不機嫌そうによった眉間の皺が消えて、花開くように陽子は笑った。


「サイハテみーっけ!」


 そう言って腕をつかむ彼女の表情は、明るい。

 サイハテの腕を抱きかかえて、陽子は歯を出して幸せそうに笑っている。

 何がそこまで嬉しいのだろうかと、サイハテは考えてみるが答えは出ずに、そのまま集合場所たる食堂まで陽子と共に歩いていく。


「これから方針を決めるのよね? サイハテは何か考えてきてる?」


 巨大な拠点を手に入れたが、陽子とレアの疲労が限界だったのもあり、方針を決める会議は明日に回そうと言う話になっていたのだ。

 軍事拠点としての機能が高い、鉄筋コンクリートで覆われた地下司令部には大量の食糧と、武器が眠っているのだが、地下には感染変異体が湧いてしまっている。


「俺が提案するのは、地下に居る感染変異体の排除だな。隔壁で閉じられているから、安全っちゃあ安全だが……」

「上に上がって来られると困るもんね」


 それ以前に、サイハテは武器弾薬を確保したいのだ。

 千葉の街で装備を失って以来、補給が出来なくなっている。

 拠点の付近に海上自衛隊の元駐屯地があるが、恐らく、そこに武器弾薬は存在しないだろうとサイハテは睨んでいた。


「でも、武器が無いと排除は無理でしょ?」


 陽子はそう懸念する。

 感染変異体は、火器があるならばそこまで恐ろしい相手ではない。しかし、今の彼らが持っている武装はアサルトカービン一丁と各々が持つ拳銃位だ。

 弾薬もあまり豊富ではないので、地下の変異体を排除する前に尽きてしまう事は容易に予想できる自体だった。


「俺なら武器庫までたどり着ける。そこで武器弾薬を補充して、排除する」

「危ない事は禁止!」


 ご機嫌だった陽子が目を吊り上げるが、言われた本人はどこ吹く風で、耳をほじっている。


「怪我もしないから危険じゃない」


 唖然とする陽子だったが、サイハテの性能をすっかりと忘れていた。

 彼は単独ならば、何者にも見つからずにどこにでも行けるのだ。

 むしろ、こう言った仕事はサイハテが最も得意とする仕事であり、彼がやらねば誰がやると言うのだろうか。


「それに、今すぐ向かおうってわけじゃない。行くのは五人揃ってからだ」

「五人? 誰か来るの?」

「今日中に到着するだろう、あいつらならば」


 食堂に続く金属製の扉を開けつつ、彼はそう言ってのけた。

 食堂には大分待たされてしまったレアが、暇そうにみかんを齧っている。

 彼女はこちらに気が付くと不満そうな表情を作り、両手を振り回して叫ぶ。


「おーそーいー!」

「ああ、すまんすまん。俺の遊びに付き合ってもらっていたんだ」


 サイハテはそう説明すると、レアの頭を一度撫でて、小さな円卓の対面に座る。

 椅子が四つ程の小さな円卓に、陽子も着くと、これからの会議が始まるのだ。


「もー……きょーのぎだいは、なにするか。でしょー。それがきまらないと、ぼくもうごけないの!!」

三話も近日中に上がるよ。

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