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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
五章:アルファ・クラン
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ユニークアクセス四万人突破記念:サイハテがお引越しするようですパート3

引っ越し編パートスリー

「おかえりなさい!」


 東京にある駐屯地で、愛しい妻たる西条琴音が出迎えてくれた。

 表情は出来るだけ殺したと思ったのだが、ついつい頬が緩んでしまう。

 それでもサイハテは表情を隠そうとせず、出迎えてくれた彼女を優しく抱きとめる。


「ただいま、思ったより時間がかかってしまったよ」

「時間がかかるのは当然だと思うの」

「仕事自体は五時間で終わって、揺り戻し待ちだったんだがな」

「……相変わらず、優秀だね」


 時空転移してしまった自衛隊を、江戸時代まではるばる迎えにいった感想とは思えない言葉だ。


「まぁな、江戸時代と言っても同じ日本だ。日本語の発音が違ったのはびっくりしたけど、どうとでもなるしな」

「ふーん?」

「それにほら、琴音にお土産だ。徳川綱吉さんの寝顔写真」

「すげーーーーー!?」


 さらっと日本の歴史学会を震撼させる物品をとってきたサイハテに、琴音はこれ以上ない位驚く。

 彼が差し出したスマートフォンには、スヤスヤと眠る若い男の寝顔が映っており、これはこれで快挙なのかもしれまい。

 しかし、差し出されたそれをサイハテの手から奪い取ると、琴音はいらないものと書かれた段ボール箱に入れてしまった。


「……おい、まさか」


 嫌な予感が過ぎるサイハテ。


「そのまさかだよ」


 その嫌な予感を肯定し、背に隠してあったもう一つのいるものと書かれた箱を前にだす、彼の愛しい妻。


「はじめよっか」


 サイハテは膝から崩れ落ちそうになる程、ショックを受ける。

 まさかまさかとは思っていたが、またどこかに飛ばされる羽目になるとは考えたくなかった。思考停止していた分、余計にショックを受けてしまう。

 だが、任務は任務だ。

 とりあえずいるものといらないものに分けなくてはならない。


「……しつこいようだが、これはどうだ。スマホ、せめて君の声位は聴きたい」

「これはいらないよ」


 いつも通り、いらないものボックスへと消えるスマートフォン。


「いつもの如く、電波届かないから」


 これもまた、いつも通りだった。

 それならばと、壁に立てかけてある戦闘服Ⅱ型を取って、風音に見せつける。


「これはどうだ。どうせ戦闘任務だろう」

「これもいらないかなぁ」


 いらないものボックスへと入れられてしまう戦闘服Ⅱ型。

 それを見送って、彼女の言葉を待つ。


「相手は視覚に頼る探索方法じゃないから、これ着ていって」


 渡されたのは、最近開発されたであろうスニーキングスーツだった。


「待て待て、視覚に頼る探索方法じゃないって……相手は人間じゃないのか?」

「……一応、人類には分類される、のかな?」

「視覚に頼らない人類なんている訳ないだろう」

「一応目も見えてるってば」


 ダメだ、この状態ではさっぱりわからない。


「じゃあこれは? PXで買ったニンニク醤油味のポテトチップスなんだが……」

「それは絶対持って行って、命にかかわるから」

「これが命のかかわんの!?」

「うるさい、次」


 やはり琴音は理不尽である。

 次と言われても、サイハテに私物は少なく、出すものも少ない。

 私物を詰めたダッフルバックを漁っていると、着替えの奥に、小さな紙袋と箱が見える。これは必要ないだろうと思いながらも、それを引っ張り出して、彼女に見せる。


「これはいらないだろう。昔貰ったロザリオと銀の弾丸なんだが」

「それも絶対に持って行って、多分、生命線になるから」

「……ああ、だいたい分かってきた」


 次に出すのは日曜大工でもしようかと思って買ってきた、白木の枝である。


「じゃあ、これも必要だろ」

「うん、必要」


 頷かれた所で、サイハテは大きなため息を吐く。


「次は吸血鬼と戦うのか」


 正解だったようで、琴音は俯いている。

 彼女の目からは、真珠のような涙がぽろぽろと零れて、いらないものボックスを濡らしていた。


「日本の離島にある旧軍の研究施設で、吸血鬼が大発生したらしいから、鎮圧してこいだってさ……」


 大日本帝国軍はどうやら吸血鬼の研究までしていたようである。


「敵の数、地形、その他諸々の情報は?」

「……全部、ゼロ」


 これはきつい任務になりそうだと、サイハテは予感する。


「で、でも! 今回はちゃんとバックアップが着くよ!?」

「ほう、どんなバックアップだ?」

「……テレビクルーと、アイドル」

「お祭り気分じゃねーか!!」


 こうして、西条疾風は離島に向かって、吸血鬼退治に向かったそうな。

いつか変態VS吸血鬼を書くかも知れない。

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