PV30万突破記念小話:サイハテがお引っ越しするようですパート2
短いですが、なんとか書き上げました。
アフリカに設営した撮影キャンプで、サイハテは荷物を片づけていた。
密猟者や、ソマリアの海賊を倒した時に得た戦利品が殆どだが、裁判所で裁かれる彼らの証拠になるため、所持し続けている。
この荷物をこの国の検察官に引き渡せば、サイハテの仕事も終わりだ。
とは言っても、この証拠品をどうやって確保したか、どこで見つけたかを明確に記載しなくてはならないので、その手伝いをする為に日本から琴音がやってくるはずだった。
「やっほ、ハヤテ」
噂をすればなんとやら、現地の民族衣装に身を包んだ琴音が、テントの入口で微笑んでいる。
「来てくれたのか」
「うん、ハヤテのお引越しだもん。それじゃあ、始めようか」
その言葉と共に出される、いらないものいるものと書かれた段ボール箱に、サイハテはがっくりと首を垂れた。
「おい、またか。また俺は変なとこに飛ばされるのか……」
「……うん、ピンクの象さんはお気に召さなかったみたい」
無茶ぶりをしておいて、酷い奴等である。
何はともあれ、分別はしないといけないだろう。今回もまた、任務内容から派遣場所まで聞いていないので、彼女の判断に従わないといけない。
「それじゃあ、これ。今回はスマートフォンを使えるのか?」
「これはいらないよぉ」
哀れ、最新型スマートフォンはいらないBOXへと入れられてしまった。
「その代わり、ハイ、ドーゾ」
代わりに渡されたのは無線機だ。
自衛隊の装備品の一つ。背負って使用するタイプの野外無線機に、サイハテは困惑する。
「……なんだこれ、携帯無線機一号じゃないか」
「うん、そうだね。次」
次を催促されてしまった。
これに触れる事は禁止らしい。
ならば、次の物品を探さなくてはいけないだろう。
「じゃあ、これ。陸軍装備一式、国連軍仕様の一式だからどこに言っても……ダメなのか」
新たに用意した装備一式はいらないものBOXへと入れられてしまった。今回も戦う任務ではないのだろうか。
「今回はこっち使って、自衛隊との共同任務だから」
渡されたのは、陸上自衛隊が使っている装備一式だった。
驚く事に、89式自動小銃も支給されている。国外に無断で持ち出すのは禁止されており、89式を所持している軍人は自衛隊位しかいない。
「自衛隊との共同任務なのか……身分は?」
「ネイトが手に入れてくれたよ。一等陸曹の身分だけど」
「上々だ」
彼女が持ってきてくれた装備一式をいるものBOXへと入れておく。
自衛官としてなら、これはもちこんでもいいだろうと、あるものを彼女へと見せる。
「なら、これはどうだ。これは持って行っていいだろう? 君の写真だ」
写真立てに入れた、琴音の写真である。西条疾風は、アフリカの過酷さをこれで紛らわしていたと言っても、過言ではない。
「これもダメ、死亡フラグになっちゃうでしょ」
「……そうか、ダメか……って、死亡フラグってなんだ!?」
「うるさい、次」
どうやら、答える気はないらしい。
次の物と言っても、サイハテが持っている私物は少ないし、任務に必要な物と言われても困ってしまう。何かないかとテントの中を探し、なんとか見つけてくる。
「これならどうだ。自衛隊として活動するなら日本国内だろう、財布位ならいいだろ?」
「うーん? それならいいかな? 日本円使えないから、無駄になっちゃうだろうけど」
「日本円が使えないのか……ん!? 日本で日本円が使えないのか!?」
「そうだよ? まだ作られていない時代だろうし」
「時代!?」
まさか時代なんて単語が出てくるとは思えなかったが、これで次はどこに行くのか予想が出来た。
「……そうか、わかったぞ。俺が行くのは戦国時代だな? そうなんだな?」
ぴたりと当たってしまったのだろう。
琴音は俯いて涙をこぼし始めた。
「うぅ~……!」
「……泣く事ないだろう。俺はすぐに帰ってくるさ」
一体どこの戦国自衛隊なのか分からないが、回収時刻位は教えて貰えるのだろう。
「戦国時代じゃないよぉ!!」
等と高をくくっていたら、否定されてしまった。
一体どこに行けばいいのだろうか。
「江戸時代だよぉ!!」
「え、江戸ぉ!?」
どうした事か。
自衛隊がタイムスリップするならば、戦国時代がセオリーじゃないだろうか。それがまさかの江戸とは一体全体、何がどうなってそうなったのだろうか。
そもそも、江戸時代に飛んでも泰平の時代故に、やる事なんてないだろうに。
「……難易度下がる分、いいじゃないか。すぐに行って、迷い込んだ自衛隊を回収して帰ってくるさ」
「うん……早く帰ってきてね? 後、もう報告書に『お前、それサバンナでも同じ事言えんの?』って書くのはやめようね?」
「……それが原因だったか」
こうして、西条疾風ことジークは、江戸時代に旅立った。
現地で、迷い込んだ自衛隊と接触し、無事に回収地点まで連れ帰り、偽の名前に偽の身分でサイハテは表彰される事になる。
一週間ほどの任務だったが、自衛隊生活は楽しかったようで、しばらくその話ばっかりするサイハテに、琴音は呆れたらしい。
もうちょっといいネタを思い付いてから書きたかった……!