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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
四章:かつての街で
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小ネタ:サイハテがお引越しするようです

ノリと勢いで書いた。

少々不安。

 日本にあるアルファの本部。

 申し訳程度に用意された自分のオフィスで、結婚式を終えたばかりの西条疾風は荷造りをしていた。

 アルファからの命令で、本拠地を別の場所に移すのだ。


「……大分片付いたねー」

「……あぁ」


 その引っ越しを手伝う為に、新妻となった琴音も手伝いに来ていた。

 段ボール三つに分けられた私物ではあるが、一応西条疾風個人の物なので彼女に預かってもらう事にしたのだ。

 しかし、その状況でもサイハテには大きな疑問が一つあったので、任務を知っているだろう琴音に、尋ねてみる事にした。


「なぁ、琴音。俺が転勤する場所って、どこだ?」

「……そ、それじゃあ、いるものといらないものにわけよっか!!」

「おいィ?」


 露骨に話を変えられてしまった。一体全体、自身が向かう場所を聞くのに、そんな不都合があるのかと思ったが、自分の妻は時たま意味の分からないことする。


「……それじゃあ、このスマートフォン。現地で活動するなら必要だろう?」

「これはいらないよ……」

「ん? 何故だ」


 いらないものと書かれた箱に投げ入れられた最新型のスマートフォンを見送りながら、サイハテは尋ねた。


「……電波、多分届かないから」

「……そうか、君の声が聞けなくなるのは寂しいな。それじゃあ、この陸軍装備一式。これは必要だろう、電波が届かない状況と言うのは、孤立無援になると言う事でもあるから、現地調達はするにしても……っておい」


 陸軍装備一式も、いらないものと書かれた箱に入れられてしまった。


「銃、使っちゃダメだから……」


 琴音はそう言って涙ぐんだ。


「……じゃあどうやって戦えって言うんだ」


 サイハテの疑問に、彼女はとある物品を渡す事で答えとした。

 渡されたのは写真家仕様に改造された、高級なデジタルカメラだった。市販品と比べても、画素数、ピント調整などの性能も比べ物にならないだろう。


「戦う訳じゃ、ないから……」

「……なんだ、それじゃ、俺に写真を取れって言うのか」

「……うん、そうなんだよ」

「マジかよ」


 つまりはアレだ。

 敵の重要施設に潜入し、痕跡を一切残さずに兵器の写真データでも集める任務だろうと、サイハテは高をくくった。

 それならばとまだ片づけていないロッカーから、少し古臭いスニーキングスーツを取り出す。


「じゃあこれは必要だよな? 痕跡を残さずに潜入するならば、これは必須だ」


 スニーキングスーツをみた琴音は少しだけ渋い顔をすると、彼らの常識ではありえない事を言い放った。


「あんまり役に立たないと思うけど。潜入任務じゃないし」

「そうか、潜入任務じゃない……え!? じゃあこのカメラ何!?」

「……だから、写真を撮るんだってば」


 困惑しきったサイハテは、手に持ったカメラを見つめて、途方にくれてしまう。

 涙ぐんでいる琴音が、鼻を啜りあげる音だけがしばらく響き、そんな妻の姿を見かねても、聞かずにはいられなかった。


「そろそろ教えてくれ。俺はどこに派遣されるんだ?」


 そう尋ねても、口頭で教えて貰えるわけでもなく。

 琴音に差し出された安物の冊子、所謂旅行パンフレットを差し出される。そこには大きな文字で、南アフリカ共和国の観光案内が書かれていた。


「……え、アフリカ? 俺アフリカに派遣されんの!? 何しに派遣されんの!?」

「……ハヤテが悪いんだよっ!!」


 困惑していたら、琴音に怒鳴られて身を竦ませるサイハテ。

 彼女は涙を流しながら、彼に詰める。


「ハヤテが……ハヤテが上司を仲人にしなかったからっ!!」

「はぁ!? じゃあなんだ、俺はその仕返しっつーか、嫌がらせに派遣されんのか!?」

「そうだよ!! それしかないじゃん!! ピンク色の象さんを撮ってこいだってさ!! 新婚旅行も、初夜だってまだなのにぃ!!」

「存在する訳ないだろ!! そんな象さん!!」

「知らないよ!!」


 夫婦二人で言い争いするが、彼らに拒否権なんてある訳もなく、サイハテは派遣されてしまった。

 成田空港のロビーで、涙を流しながらハンカチを振る琴音の姿が、彼の脳内に深く焼き付いてしまう。

 どうでもいい話だが、その後サイハテは三日でピンク色の象さんを発見し、写真に収める。この功績を見た日本情報局上層部は、もっと無茶ぶりしてもいいのではないかと言う、ジーク万能論を強める事になった。

ちなみに正史。

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