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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
四章:かつての街で
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十八話:致命の一撃

「……それが致命傷になった、と言う訳デスカ」


 レアからの情報を統合した結果、ハルカはノワールが起こした事件により、地球共和国軍が壊滅したと知った。


「そーゆーこと、あとにも、さきにも、やつほどのかいぶつは、でてこないとおもう」


 その時、共和国軍は全世界に展開する為、特定の地域へ集合し再編を行っており、月面基地からの隕石攻撃によって、総戦力の70%を喪失してしまう。

 しかし、残された僅かな戦力と、各国に残された資源等のリソースを結集して、死に体となった人類文明をなんとか生かそうと試みる。

 レアが担当していたワクチン開発も、その一つだ。


「……あと、いっぽだった」


 珍しい事に、レアは強い後悔の念を込めた呟きを口にした。


「ぼくがもーすこしがんばれれば、じんるいはすくわれた」


 その視線は前を行く陽子に向いており、彼女がこんな世界でもがいているのも、レアが失敗した結果と言っても過言ではない。


「内部からの裏切りでは、どうしようもないと思われマスガ」


 ハルカはそう判断するが、レアにとっては違う事だ。


「それをみぬけなかった、ぼくのみす」


 死ぬ前に、大きな功績を残して歴史に名を刻みたい。

 それが中田の考えていた事であり、レアは老人の功名心を見抜けていなかった。

 彼を軽視し、ワクチンの開発に没頭した結果、小さな少女は全てを踏み躙られ、人類は文明を喪失してしまう。

 年を経ってしまえば、不老処置などしても意味がない。

 劣化しきった老人(残り滓)のまま不死身になっても、意味がないのだ。


「……では、今度こそ、成功するように頑張りマショウ」

「わかってる。ぼくのてふだには、きりふだがある」


 それは世界に一枚しかないジョーカー。

 レアが幸運で手に入れた切り札であり、最も扱いが難しいカードと言えよう。

 今は分かれてしまっているが、この後の頑張り次第では手元に舞い戻ってくるだろう。使い方さえ間違えなければ、そのカードが失われる事はない。


「そのカードは、レア様を殺す可能性もあるのデスガ」

「もくひょーをたっせーできれば、そんなけつまつでもかまわない」


 ケロリと自分の命をベットしたレアに対し、ハルカは不満そうだ。


「……あたし、レア様が殺される位なら、今すぐにでも奴を始末したいデス」


 そう、吐き捨てるように言い放つ、機械侍女の心境は如何に。

 レアは彼女を見上げながら、眉間に皺を寄せる。


「……なんで、そんなに、さいじょーをきらうの?」

「母親を殺すかも知れない相手に、子供が懐く訳ないデショウ」


 少女の純粋な疑問に、ハルカは再び吐き捨てるように答えた。

 ココロと呼ばれるプログラムを組み込んだ彼女は、機械にあるまじき判断基準を持つようになってきている。

 それは、誰かを好く事と嫌う事だ。


「……はるかは、さいじょーをきけんし、してる?」


 蟀谷辺りに人差し指を当てながら、レアは尋ねた。


「はい、彼は危険な男デス」


 ハルカは、目を細めながら言い放つ。

 その言葉を否定する事はできない。

 レアから見ても、サイハテ程危険な人物は居ないからだ。


「じじつ、きけん」


 でも、と少女は今まで彼を見続けて、判断した言葉を紡ぐ事にする。


「でも、さつじんをこのむにんげんじゃ、ない」


英雄ジークとしての記録ではなく、人間西条疾風を見続けた結論をレアは語る。


「おくびょーなだけで、ほんらいはやさしいひと。じぶんをころして、たにんにほーしできる、けうなにんげんだと、ぼくはおもう」


 サイハテは自分の事を多くは語らない、個性と呼んでいいものは普段行っている奇行位で、他に目立つ人間性は見当たらない。

 ただただ、己を機械であると律し、目標に向かって突き進む事で自分を誤魔化しているのではないかと、レアは感じていた。


「わけがあるなら、だれでもころす。ぎゃくをゆーなら、わけがないなら、だれもころさない」


 彼の力は友人の為だけに振るわれている。

 ハルカはレアの考えを聞いて、今まで自分が見てきた西条疾風と言う男を、再評価し始めた。彼が誰を手にかけて、どんな思想を抱いているか。

 そんな事を考えるが、やはり出た結論は危険の一言だけだった。


「やはり、危険デス」


 結論の変わらないハルカを見ても、レアは仕方ないとしか思えない。

 本来ならば、率先してその危険さを緩和させるべき行動をするのが、一番の手段ではあるが、サイハテがそんな行動を起こさないので、疑いの目はいつまでたっても疑いのままだ。


「はるかも、そのうち、わかる」

「……そうデスカ」


 わかればいいが、いざと言う時には背後から撃つしかないのだろうと、ハルカは考えていた。

 お互い無言になって歩き続けていると、唐突に陽子が足を止めて周囲を見渡し始める。


「そろそろ、休憩しましょう」


 疲労はそんなに溜まって無さそうだったが、恐らく切れた集中を復活させるための休憩である事は、ハルカにも感じ取れた。


「ええ、それがいいと思われマス」


 ハルカも肯定し、体力の総量が少ないレアは肩で息をし始めている。

 どちらにせよ、休息は必要なのだ。

酔っぱらいながら書くと、ろくなことにはならんね。

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