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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
四章:かつての街で
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六話:休息

亜細万、投稿を忘れる痛恨のミス。

オマケに短い。

 ハルカは、それ以上何かを言う事はなかった。

 憂いを湛えた瞳でしばらく見つめた後、目を反らし、レアの傍へと戻っていく。


「感情豊かになったな」


 機械侍女の背を見送った後、サイハテはそう呟いた。

 初めて会った時は、なんの感情もない機械だと思ったが、今は違う。

 呆れや怒り等の強い感情を抱き、間違っていると思った事はプログラムに逆らって、反抗するようになっている。

 彼女は、機械の体でありながら、どんどん人間へと近づいていっている事が伺えた。

 サイハテは、談笑している三人を見る。


 今は楽しそうに談笑しているが、彼女達は秩序の理を敷ける人間達だ。

 陽子は己の善性に従って、秩序を敷くだろうし、レアは自身の知性を使って、秩序を敷くだろう。どちらの国も、かつてサイハテが守った日本よりも素晴らしい国になる事は解っている。

 だが、彼女達は信じる道が反目しており、その道は将来、交わる事はないだろう。


 いつか、反目し合って、お互いの正義をぶつけ合う日が必ず来る。来てしまう。

 その時に、西条疾風が二人の傍に居れれば、なんとか出来るかも知れない。流れる血を止められるかも知れない。しかし、サイハテにはある予感があった。

 彼女達がぶつかり合う時には、己は傍に居られないのだと。


 あまりにもバカバカしい予感に、彼は首を左右に振った。

 この世界に蘇った時からある予感は、頭から消えてくれないが、思考を切り替える事はできる。今は、彼女達を安住の地へと導く事が、西条疾風と言う死人に与えられた役割なのだから、それを完遂しなくてはいけない。


 人は必ず死ぬ。

 あの時に死ぬ運命ではなかったとしても、サイハテは彼女達より、早く死んでしまう。

 それは寿命ではなく、戦いを終生の生業とした人間が背負う業だ。途中でやめられるような人間だったら、生き残る道もあるのだろうが、彼は自身がそこまで器用な人間ではないと理解している。


 ふと空を見上げると、それはどこまでも蒼かった。

 ここが死と隣り合わせの危険地帯だなんて、忘れてしまいそうな位、澄んだ青空に、サイハテは小さなため息を漏らす。


「……そろそろ、行こうか」


 いつか己が消える空から目を反らして、三人の少女達にそう言った。


「うん、行きましょうか」


 陽子が膝を叩いて立ち上がって、


「ういー」


 レアがハルカに引き起こしてもらう。

 半年程の付き合いだが、いつも通りとなった光景を見て、思わず笑みを漏らしそうになる。

 ここで笑ってしまうと、せっかくの引き締まった空気が台無しになってしまうので、昔取った杵柄で、己の表情を抑え込み、サイハテは銃を握った。


「さぁ、後少し歩いたら今日の行軍は終わりにするから、その分だけ頑張ってくれ」


 そう言って、歩き出すサイハテの背後に、三人の少女が続く。

 もう隊列を整えての行軍なんてしない、この街は瓦礫や廃墟が多すぎて、隊列を整えて歩くのは愚策だと感じたからだ。

 あまり早くはない歩調だが、距離は三時間で稼いだのでしばらくは大丈夫だろう。


 しばらく歩いていると川が見えてきた。

 管理を放棄された二級河川で、どこかの水門でも壊れたのだろう、大分水位と流れが増しており、サイハテならまだしも、陽子やレアが渡り切れるとはとても思えなかった。


「どうするの?」

「橋は……落ちているな。迂回しよう」

「とり、かうの?」

「その鵜飼いじゃない」


 ボケたレアはクエスチョンマークでも浮かべていそうな表情で、首を傾げている。

 稼いだ距離が無駄になる位は歩かないといけなそうだが、余計な事は言わない。彼女達の士気が下がってしまったら、それこそ、無駄骨になってしまうからだ。


「後三十分歩いたら、近くの建物をクリアリングして、宿にしよう。いいか、後三十分だ。頑張ってくれ」


 横転した際のダメージと、炎天下の行軍による疲労で、二人は限界が近い。

 いい加減、本格的な休息が必要だ。

終末世界のクリーチャー:ファイル1

グール

フェーズワンの変異体。

ピット器官のような部位で、熱を感知し、獲物を探す肉食クリーチャー。

人がウイルスに感染して変異した姿ではあるが、その生態は野生の動物に近い。

人を大きく上回る身体能力を持っており、ライオンを食い殺した実績もある危険な生物。

雄雌の区別は在らず、寿命が来るとグール同士で結合して、仲間を増やす。

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