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終末世界を変態が行く  作者: 亜細万
四章:かつての街で
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五話:おっぱいおっぱい!

 傾いたビルに、鉄骨だけになったコンビニ。

 ひび割れたアスファルトからは背の高い草が生えて、マンションは瓦礫の山になっている。こんな風景が見られる場所は、こんな終末世界か、戦場になった都市位しかないだろう。

 今にも崩れそうな位、老朽化した建築物も危険なのだが、それ以上に、この街をうろつく怪物の方が危険であった。


「またグール……」


 うんざりとしたような口調で、陽子が呟く。

 サイハテが忍び寄り、首を圧し折って容易く仕留められたが、あのグールは服を着ている。グールから増えたグールは素っ裸である為、あのグールは人間が感染変異して生まれた物だと予測できる。

 つまりはだ、入り込んだ誰かがグールに噛まれたのだろう。


「なぐも、ぐーるは、へんいたいの、きほん」

「解ってるわ。こっちにも基本を押さえた変態がいるもの」


 ショートパンツを抑えながら、内またでもじもじしているレアが、そんな事を言ったので、サイハテを見ながら返答する。

 彼の顔には女児用ショーツが被せられており、それはサイハテがレアから掏り取った物だ。


「少しおしっこ臭いぞ、トイレ行ったらちゃんと拭きなさい」


 戻ってきたサイハテがそんな事を言った。

 陽子は彼は本物のバカではないのかと考える。


「あんたねぇ、本当はロリコンなんじゃないの?」

「失敬な事を言うな。俺は年齢や見た目で女性を区別しないだけだ」


 ただし、少女や老人には手を出さないと言う紳士な側面も持っており、それは変態としての美学である。セックスをするなら、お互い楽しく気持ちよく健やかに、がサイハテのモットーだ。

 陽子は自信満々なサイハテを見て、大きな溜息を吐いた。

 パンツを丸めて口に運び、咀嚼して飲み込んでしまっていたからだ。


「強姦しない、十五歳以下に手を出さない。見た目や年齢で区別しない。これが変態三大原則だ」

「そんな事聞いてないわよ」

「女性を捕まえて調教とか、半端者のヤる事ですわー」

「だから聞いてないってば!」

「女を口説くときは、一対一で、対等な立場でだ。忘れるなよ!」

「……あっそ」


 サイハテの他には女しか居ないのに、そんなアドバイスや原則なんてどうやって生かせばいいのか、陽子にはさっぱりとわからなかった。

 それ以上に、こんな状況でもいつもと変わらないサイハテを見て、ミスを悩んでいた自分がバカバカしくなった位だ。


「さいじょーのえっち」


 ハルカから代えのパンツをもらって、物陰から出てきたレアの一言だ。


「エッチじゃない俺とか、ラーメン、具汁麺器(ぐしるめんうつわ)抜きだろう。常識的に考えて」

「なるほど、西条様はスケベエで無くなったら、消えてしマウのデスカ」


 それはそれで酷い言いぐさである。

 地面に落ちたモノレール網を乗り越えて、少しづつ目的の場所へと向かって行くが、何度もグールの群れを見かけて迂回する羽目になった。

 その度に目的地から遠のいて、陽子とレアは疲労がたまり始めている、どうにかしてどこかで休憩を取ってやりたいが、敵がどこから狙っているのか分からないので、それも出来ないでいる。


「……つかれた」

「……そうね」


 陽子もレアも、大分口数が少なくなってきた。

 日は少し西側に傾いた頃合いだろうか、サイハテの体内時計が正しければ、炎天下の中をもう三時間も歩かせっぱなしだ。


「よし、休憩しよう」


 もう彼女達は限界に近い、ここで三十分の休憩を取って、少しでも歩く英気を養ってもらうしかない。


「やった……」


 陽子が小さく喜びの声を漏らした、しかし、声に張りが無く、息も大分切れているようだ。

 レアの方は喜ぶ事すらせず、顎から汗を垂らして肩で息をしていた。


「水は好きに飲んでいいし、食事を取ろう。現地調達はせずに、手持ちのレーションを消費してくれ」


 彼女達が消費した水は、サイハテが飲むはずの水を減らして飲ませる事にする。

 彼は極限の渇きでも、パフォーマンスを百パーセント発揮できるように訓練されている為、一日位ならば水を摂取しなくても問題はない。

 とは言っても、この炎天下だ。水を含む程度には飲んでおく。

 休憩場所に選んだのはビルとビルの間にある日陰であり、風の通りもいい場所だ。陽子とレアは縁石に腰を下ろして、足を投げ出し休んでいる。


「はぁ、ひといき、つけた」


 水筒から水を飲んだレアが、ホッとしたように言う。


「そうねー、炎天下だもんね」


 同じように水を飲んだ陽子が、少しだけ張りのある声で答えた。

 二人は喉を湿らせると、背嚢の中からカロリーの高いチョコバーを取り出して、齧りながら談笑を始めた、喋るとその分、水分と体力を消費するので、口を閉ざしていた方がいいのだが、精神状態もある。

 好きに喋らせておくことにした。

 先日のやり取りから、ハルカはサイハテに不信感を抱いているし、陽子はどうにも様子がおかしい。仲間の精神管理を、少し失敗してしまった。


「西条様、これからどうするおつもりか、お聞かせ願えマセンカ?」


 侍女らしい控えた表情で話しかけてくるハルカだが、言葉がどうもトゲトゲしい。やはり不信感を抱かれている。


「この様子だと、長い行軍には堪えられないだろう。夕方になる前に仮拠点を見つけて、彼女達を休ませたい」

「消費した水は如何なさりマス?」


 人間、三日位なら何も食わんでもなんとかなるが、水は別だ。

 一日飲まなかったら、すぐに体調がおかしくなる。体の小さいレアは顕著だろう。


「俺が夜になったら、探しに行く」


 非常に危険な選択だった。


「……危険デス。夜はグールが活発になるばかりカ、貴方が視認出来る距離が減衰シマス。考え直しを」


 純粋に心配している訳じゃない、これは試金石だ。こう言われて、サイハテがどう反応するかを見るための試金石。


「危険だろうが、行くしかないだろう。水は明日の昼間までの分しかないんだからな」


 そうなれば、か弱い二人の少女はすぐに倒れてしまうだろう。

 明日の昼から探すと言うのも、現実的ではない。見つかるかどうか分からないからだ。サイハテは水の補給地点の候補をある程度持ってはいるが、そこに水がある保証なんてないのだ。

 探すなら、時間を自由に使える夜がいい。


「……あたしが向かう、と言う手段もございマスガ?」

「隠密性だったら俺のが上だ。不眠不休で戦えるお前にこそ、彼女らを守っていて欲しい」


 こう言われると、ハルカは黙る事しか出来ない。

 確かに、伝説のスパイだけあって、隠れたり逃げたりすることに関してはサイハテの方がずっと格上であり、ハルカだったら敵に見つかって、弾薬を消費したり拠点を教える羽目になりかねない。彼の言う事は正しく、効率的であった。


「朝の七時までに俺が合流しなかったら、お前たちは先に進め。俺は偵察の為に先に出ている、とでも言えば納得してくれるだろう……」


 その時、サイハテはここに置き去りにされてしまうのだ。

 たった一人で、この町で生きるのは、とてつもなくつらそうな未来だった。

陽子のおっぱいをもませようと考えてたら、いつの間にかサイハテがレアのパンツを食っていた。何を言っているかわからねーと思うが、私も何を書いているのかわからなかった。超スピードとか、変態とか、そんなチャチなもんじゃねぇ!

もっと恐ろしいものを味わったぜ。


あ、感想は気楽にお書き下さいませ。

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