百話目記念小話:陽子とレアがどぎまぎする話
珍しくサイハテが変態じゃない話
受信所で重傷を負ったサイハテは、腹一杯に食事を掻き込むと、ベッドに倒れてそのまま鼾をかきだした。
普段のように、身じろぎ所か呼吸音すら聞こえない寝姿ではなく、至って普通の男らしく豪快に寝ている彼は、非常に珍しかったが、気にする必要はない。
二人も相当に疲れていたので、警備をハルカに任せて眠りについた。
問題が起こったのは次の日である。
「そろそろご飯出来るから、サイハテを起こしてきて」
と陽子がレアに頼んだのだ。
普段なら起きていて、全裸待機しているサイハテもあの重傷では起きてくる事ができなかったのだろう。レアは快諾して、彼を起こしに行った。
「さーいじょー、なぐもが、ごはんだって」
寝室まで歩いていき、部屋の外から声をかけるが反応がない。
物音がしたらすぐさま覚醒する彼が、随分と珍しい事態に陥っているのを、レアは喜んだ。
普段は暑苦しいと嫌がられる添い寝ではあるが、そこまで弱っているなら、隣に寝る位では起き無さそうと、今日は同衾しても怒られなさそうだ。
寝室の扉を開けて、シメシメと忍び足で移動するレアを、庭で水蒔きしているハルカが呆れたような目で見ていた。
「……………………」
しかし、レアの行進は止まり、少女の頬に朱が差す。
彼女の視線は、サイハテが寝ているベッドに向けられている。
大の字になって気持ちよさそうに寝むる彼ではなく、彼の体にかかったシーツを、岩山のように押し上げている存在に釘づけだった。
それは、命が助かった安堵感と、仮にも自宅へと帰ってきた気のゆるみから暴走してしまった。サイハテのサイハテだ。
「お、おっきい」
これが百パーセントフルパワーだとでも言わんばかりの自己主張で、とても狂暴そうな愛馬だった。
そっと彼のベッドの元に近寄って、ポケットの中にあった巻き尺で、サイズを測ってみる。それは日本人男性の平均たる十五センチを大きく上回った二十一センチだ。
レアは自分の体を見てみる。特に下腹部だ。
「……さけちゃう」
どこがとは言わない。
こうしちゃいられないと、速足で陽子を呼びに行く事にした。
そんなレアの姿を、庭で草むしりしていたハルカが白い目で見ている。
「なぐも、たいへん」
スープを煮ていた陽子に、レアが縋り付く。
「え、サイハテがどうしたの?」
起こしに行ったレアが泡を食った様子で、そんな事を言ってきたのだ。サイハテに何があったのかを聞き返す。
「……さけちゃう」
そんな陽子の心境などいざ知らず、レアはポッと頬を染めるとそう言い放った。
「サイハテが裂けるの!?」
避けると言われたら、ついそっちを想像してしまう。
真っ二つに裂けたサイハテがベッドの上で転がっている姿を想像して、陽子は顔を青く染めた。
コンロの火を消して、救急箱を手に取り、サイハテが居るはずの寝室へと急ぐ。もしかしたら、傷が開いてしまったのかもしれないと、痛むわき腹を抑えて、寝室へと入った。
そこには、堂々と自己主張する、サイハテのサイハテがそびえ立っており、それを目撃してしまった陽子は素直に感想を漏らす。
「す、凄い」
雄々しく反り立つソレは、陽子やレアの体から見ればとても大きく、陽子はレアが言った言葉の意味を理解する。
「あ、あれは裂けちゃうわね……」
処女二人がドギマギしながら、サイハテのサイハテを観察している様子を、ハルカは窓の外から白目で見ていた。
「……そんなに気になるなら、挿れてみればいいデショウニ」
明らかに寝たふりをしているサイハテと、そそり立つサイハテのサイハテを観察している二人組相手にため息を吐くと、ハルカは自分の仕事に戻るのだった。
例え、サイハテが瞼の痙攣でSOSのモールス信号を打っていても、ハルカには与り知らぬことである。
触るところまで描写しようかと考えたが、どうあってもBANされそうなので、ここまでです。
四章二話は平成二十八年七月十六日の朝七時に更新致します。