再会
雄平に会う決心をした夕衣は、乃菊と浜名駅のホームにいた。
「夕衣さん、どうぞ・・・」
乃菊が売店で買ったコーヒーを夕衣に渡し、二人でベンチに座る。
「ごめんね、付き合わせちゃって」
夕衣は不安だった。
「いいえ、夕衣さんはお姉さんだけど、親友気分になれて嬉しいです」
乃菊は、知り合ったばかりの夕衣と一緒に居れることだけで、それだけで満足だった。
「ううん、本当の親友だよ。ずっとお願いね・・・」
電車が来て、二人は乗り込む。
前日。
国也は、呉服のみしまを出て、車で10分ほどのところにある喫茶店に寄った。そこには、雄平の妹、成宮優香がいた。
「電話で話した通り、明日、丘崎駅の改札で待っててくださいね」
コーヒーを一口飲みながら頷く優香。
「着く時間は、前もって連絡するから」
「22年ぶりだな、夕衣さんに会うの。来てくれますよね」
国也も一口コーヒーを飲む。
「でも、どうして大野さんが、そんなキューピットみたいなことをしてくれるんですか?」
国也は考える。
「んー、僕の趣味かな」
気の利いた冗談のつもりである。
「そんな、冗談ばっかり。だけど感謝してます。兄さんに希望を与えてくれて・・・」
優香は、知り合ったばかりの国也に、とにかく感謝していた。
「いえ、たいしたことしてませんから」
頭をかく国也。すぐに照れてしまうところが、ダンディになれない要素か。
「大野さんも独身でしたよね。私がシングルだったら、お嫁さんの候補になるのに、残念だわ」
喜んでいいのか、悪いのか。
「優香さん、このことはお兄さんには内緒にしてくださいね。気を使ってお店に寄りにくくなっちゃうから」
国也のささやかな願いだった。
「でも、兄さんに代わってお礼をさせてくださいね」
何をしてくれるの?欧米式?つい期待をしてしまう国也。
「ここは、私が払います」
レシートを握る優香。
「あ、はい、ありがとうございます」
残念。・・・そんなとこでしょ。
「今乗ったんで、原豊駅で乗り換えて、1時間くらいで着くと思います」
国也は優香に電話をして、同じ電車の後部車両に乗り込んだ。
帽子をかぶり、サングラスをかけ、ばれないようにしているのだ。
夕衣と乃菊の乗った電車は、浜名からおよそ1時間で丘崎駅に到着した。
二人はホームに降り立ち、改札へと向かう。ホームを進んで階段を上がり、通路を行くと改札がある。
「優香、誰が来るんだよ」
知り合いが来るとだけ聞かされている雄平は、落ち着かない。
「知り合いだから、心配しないで」
と言う優香も、実は落ち着かないのである。
優香と乃菊は、階段を上がり、通路を改札へ向かって歩く。夕衣は改札口の手前で、バッグから切符を取り出す。・・・そして前を見る。改札口の向こうに立つ男女に目が止まる。
雄平は、そわそわしながら改札口の方を見ていた。そして改札口の向こう側で、バッグから切符を取りだしている女性に目が止まる。
しばらく改札口を挟んで、時間が止まったかのように、4人も周りの風景も動きがなくなった。
「行きましょ」
乃菊が、夕衣を改札に誘導する。同時に優香も雄平の腕を掴んで、改札の前へ近づく。
カシャッと、切符が機械に入って行く音が響く。夕衣の眼には、もう涙があふれている。
「夕衣さんですよね。三島優香です」
夕衣が頷く。優香も涙を流しながら、夕衣に近づいて手を取る。
「わかりますか?兄です」
もう一度夕衣は頷く。
「ずっと、会いたいのを我慢して、今日まで一人でいたんです」
また頷く夕衣。優香は夕衣を引っ張り、雄平の前へ連れて行く。さっきからずっと同じ所に立ったままの雄平の前に、夕衣が立つ。
「お兄ちゃん、夕衣さんだよ」
そう言って、優香は二人から離れる。
「元気だった?」
雄平が聞く。
「うん、大野君は?」
夕衣も聞く。
「元気だよ」
雄平が答える。
「待っててくれて、ありがとう。道を間違えちゃった・・・」
夕衣が舌を出す。
「いいんだよ、今でいいんだ・・・」
雄平の精一杯の返事だった。
「・・・」
「・・・」
二人は涙を流しながら、見つめ合う。
見かねた優香と乃菊が割って入る。
「とりあえず、こんなところじゃなんだから、お茶でも飲みながらお話ししましょ」
優香が雄平を、乃菊が夕衣を連れて行く。少し進んで乃菊は振り返り、改札口の向こうで、帽子をかぶり、サングラスをかけた国也に、ピースサインを送る。




