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二十四話











「……リリィ、辛くはないか。次の村まで一刻はかかる、少し休むか?それとも抱いて歩こうかの」


じゃりじゃり。

日本で言う農道のような砂利道を、麻で作られたゴワつく服を着て、ドーラと二人歩いてる。


「ううん。だいじょうぶ」


あの夫婦喧嘩のあと、私たちはもう一度話し合いをした。

あの日の晩は混乱していたのもあるし、翌朝落ち着いて話してみれば、ぎこちないながらもお互いへの愛情を確認することが出来たと思ってる。

その結果がどうなったのかと言うと……。まぁ、今更ながらドーラは私の妊娠を喜んでくれたし、今度こそは守ると約束してくれた。

それから、何度か家のみんなに連絡を入れたほうがいいのでは?とドーラに提案してみたんだけどなぜか即却下。私は今もマリーさん達に手紙を書きたいと思っているけど、正直今はどこにも連絡できないしさせるわけにはいかないとドーラにきっぱり禁止されて泣く泣く諦めたというか……そんな場合じゃないわけで。


「やはり馬を買うべきじゃったな。次の村で良い馬が手に入ればいいが」


元いた国に今帰れば、お腹の赤ちゃんが危ないらしい。かと言ってこの誘拐されて連れてこられた国にいるのも立場的に良くはない。


「でも、お金は足りる?」


だから今私たちは、ドーラの知り合いが住んでいるっている遠い国に向かってる。

そこに行くには船に乗って、海を渡るらしくて妊婦の私にはちょっと辛いし、わりと年齢を気にし始めたドーラにも体力的に問題があるんじゃないかなぁと見てるわけだけど本人的には大丈夫そう……いや、意外にも体力は有り余っているように感じる。

言いたかないけど……主に夜の営み的な意味でね。


「儂の知り合いの国に着いたら家を買うつもりじゃ、金の心配はせんでいい」


お腹の赤ちゃんを安心して産むことのできる環境と、私たちが落ち着くことのできる時間が今は必要で。

マリーたちには出来るだけのことをしてきたから、もし連絡を取りたいのなら少なくとも新天地で落ち着いてからにしなさい。

ドーラにはそう諭された。


「ふぅん」


私の歩幅に合わせてゆっくり歩いてくれる大きな夫を見上げながら、ふと思った。

そういえば私、奥さんだけど我が家の金銭事情を一切知らないな……と。


「……」


……まぁでも、困ってはいないか。

空は青くてふかふかした雲がそこかしこに浮いていて、日差しは暖かくて。

となりを歩く夫は時折私を気にして柔らかな眼差しをくれる。


「しあわせ、だなぁ」


「ん、何か言ったか?」


ぽつりとこぼした言葉は、背の高い夫には拾われず空気に溶けたけど、でもやっぱり


「んん、なんでもないよ。ね、ドーラやっぱり抱っこして」







連続で投稿してみました。


楽しんでいただけたでしょうか?

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