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二十三話


「マリアンヌ、お前、これからどうするんだ?」


呑気にも、わたくしへそう問うたのは庭師のトラン。

旦那様が奥様を追いかけこの国を出ると、そう宣言されたあの瞬間にわたくし達使用人は契約を解かれ、望む者は次の仕事先を紹介して頂ける旨を説明されました。


「わたくしはもう良い歳で御座います故、引退して、以前から呼ばれておりました息子の家にでも厄介になろうかと」


「そぉかい、おらぁ……田舎に帰るかなぁ」


あの事件には、様々な思惑があり、一介の使用人風情が関わってよい問題ではないと理解はしていても、奥様をむざむざ攫われたわたくし達はどうにかして旦那様の御役に立てはしないかと今も皆で顔を突き合わせ相談しているけれど、どうにもならなければやはりお互いに身を引く以外道はないのでしょう。


「奥様は、無事にお戻りになられるでしょうか?」

「きっと!!だって、そうじゃなきゃ……」


そうでなければ、何もかもが歪み、足元が崩れてしまう。

黒の一族に頼りきってきた周辺諸国のみならず我が国も、今奥様を失うわけには、わけには…いかないのですから。


「わたくしは、奥様の身の心配はしておりません。旦那様が迎えに行かれたのですから、お怪我などなさるはずがございませんわ。けれど、」


わたくしは、そのようなことよりも、


「……わたくしが心配なのは、もっと、先のことでございます」


この先この国を出て、お二人がどこへ行かれるのか。

旦那様はこの国でお生まれになり、この国でお育ちになり、この国で職を得て、この国で勤めてこられたのですもの。


「旦那様も奥様も、この先の長い時を、どのようにお過ごしになられるのか……ねぇジャオ?」


「ン。まぁ、そうですねぇ」


初老といっても間違いではないわたくしたちの長である執事長ならば、旦那様に信を置かれているジャオならばならば間違いなく何か知っているはず。

私は、確信しておりました。


「何かご存知でしょう」




ジャオ?




「……マリアンヌ、私には何をおっしゃられているのか皆目見当も」


顔色を悪くさせた執事長に集まった皆が視線を向け、その言葉を取りこぼさぬよう耳を傾けます。


「この場にいる者は皆次の仕事や行き先を決めています。けれど、貴方だけが、なぜか自宅を売り払い、身辺整理に忙しいと小耳に挟んだものですから気になりましてね。もし、知っていらっしゃるのならどうかその情報の一欠片でも良いのです。哀れなわたくしに情けを下さいませ。奥様はご無事なのですか?」


わたくしはこれを逃すことはできぬと、膝を折りジャオの足元へと擦り寄りなした。

もし今情報を得られぬのなら、わたくしは明日にでも息子の家へ身を寄せ、他のお年寄りと共に、耄碌するまで静かに嫁の世話になる以外ないのです。


「お止めください。そのような……情けなどと」


ジャオとわたくしは先代からの長い長いお付き合いですが、わたくしは一代限りのメイドでしかありません。しかしジャオは、彼は何代も前から旦那様のご家族にお使えしてきた歴史があり、実績があり、信用があります。

だからこそ、なのだと理解はしていても、口惜しいことには代わりはございません。

わたくしとて、長い時を、旦那様にお使えし、奥様を思っている事実に変わりはないはずではありませんか。想いの強さは変わりないはずではありませんか。


「では、お教えくださるのですね」


ジャオだけが情報を持ち、ジャオだけが旦那様を追う許しを得ているなど……

お久しぶりです。

なんだか物凄く久しぶりの更新なので緊張してますが、少しでも楽しんでいただければ幸いです。

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