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二十一話


ねぇ、気が付かなかったわけじゃないの


分かってはいたの


だって私はまだ子供で


貴方はその何倍もの月日を生きて来たのだから


だから、言葉にされなくても


わざわざ現実を突き付けられなくても


知って、理解して、納得しているつもりでいたのよ


それでも貴方を愛しているの


なのに、貴方は今更


今になって、そんな目で私を見るの?











_____抱き上げられて、布にくるまれて、連れ込まれた建物内に下ろされて


「この宿の二階、階段を上がり右の一番端にある部屋です。良いですか?振り向かず、戻らぬよう」


何の怪談だよ。と思いつつ、そこにドーラがいるなら断る理由も無いでしょ。

結局仲良くはならなかったグエンラルダ・フリンスと素早くお別れをして、私は掛けだした。と言っても、この世界の近いは私にとって遠いを意味するからすぐにばてるのだけど。


「おや、御嬢さん。父ちゃんや母ちゃんはどうした?逸れたか?」


階段へ向かいながら、廊下を全力疾走していたら、通りがかりのお客さんに声をかけられて


「あ、ちが、違います。二階の、部屋に帰る途中で」


帰る と口にすれば、段々と現実味が増すドーラとの再会。

そうよ!私の帰る場所は、ドーラのいる場所。そこだけが、私の安心できる家なんだから!決意新たに強く拳を握ったまでは良かった……と思う。


「そうかい。しっかし、小さいねぇ?幾つだい?」


いくつ……って、年齢だよね?

ふ と向き合っても腰のあたりに合った視線を首が痛むのを承知で、相手の顔に向ければ……っぎょっとした。


「あ……」


視線をゆっくりと動かせば、まず大きな革のブーツを履いた足が二本。そして少し汚れた旅用の服。しかし、腹辺りで組んでいる腕を見た瞬間……ん?と疑問がわく。

……人の腕って、こんなにピカピカかな?


「おや、俺のような生物に出会うのは初めてかい?」


そのまま頭部まで見上げた私は、まさにファンタジー!!と驚愕した。

そこにいたのは、驚くほどにツルツルピカピカな鱗……二足歩行のイグアナみたいな外見のその人は果たして人なのだろうか?まるで、日本にいた頃映画か何かで見た妖怪のような男性。


「あ、すみませ」


相手が私を小さな子供だと思っているとしても、いくらなんでも不躾に見過ぎた。慌てて謝れば、


「いいさ、初めてなら皆驚くもんだ」


何とも気さくな鱗男さんは朗らかに笑い……もっとも大口を開けた瞬間見えたギザギザの大きな牙と真っ赤で長い舌は私の恐怖を大いに誘ったけれど。


「私、あの、」


実年齢を言わない方が良いんだろうなぁ。多分、こっちの国に来てからのスパルタ教育でも叩き込まれたけど、補足で、私みたいに小さい人って元々少数だったけど今じゃ希少で捕まったらそれはもう酷い目に合うって脅されたし。


「私、」


「あぁ、引き留めて悪かったなぁ。誰か待たせているんだろう?」


おどおどし過ぎたらしく、苦笑され、呆れたように背中を押された。だったら、声なんてかけないでほしかったね。

なんて心の中で文句を言いながら、鱗人間さんにさよならを告げた私は、振り向かずまた駆けた。






_____荒い息を整え、震える指先を押さえ。

大きな階段を必死こいて上ってきたこれまでの道のりを思い出し、唇をギュッと噛み締め、ノブへと指を這わせた……瞬間、


「えぇっ?!なっ」


内側に引かれたドアのノブを掴んでいたことで一緒に室内へご招待された私は勢いのまま倒れこ……まずに抱きしめられた。


「……っ良く、良く無事に帰った」


「っ……ぅぁっ、ど、らぁ、どぉらっ」


目の前は、歳のせいか最近少し出て来たと気にしていたドーラの暖かなお腹で視界は真っ暗だけど。絶対に間違えたりしない夫の腕と匂いに、安心して、全身の力が抜けていくのを、確かに感じた。

自然と流れる涙と、そのせいで上手く出ない声に苛立ちながら、回りきらないのを承知の上で私の短い腕をドーラの背中に伸ばしたけどそれはあまり意味をなさなかった。

なぜって?だって、すぐに思い出さざる負えなかったから。


「大事なかったか?すまなかった。身体は、……なにも?」


はじめは、本当に心配した声で、けれど一度詰まったその続きを予想して背筋が冷えた。

緩んだ太い腕の中で、のろのろと、やわらかなお腹に預けていた頭を上げて視線を合わせれば……閉ざされたほの暗い瞳が、青褪めた私の顔を移していた。


「……ぁ、どぉ、ら?」


そんな顔しないで。違う……私、もっと喜んでくれると思っていた?ドーラだから。だって、愛しているって、言ってくれたでしょう?













ねぇ、貴方がいなけくなればこの世界に一人ぼっち


町も人も何もかも、色を無くして


私は独り


目を閉じて 耳を塞ぎ 口を噤み


そうして世界とおさらばしようと思っていたのに


それなのに……ここに、私のお腹に小さな命が宿ってるんだって


幸せで、なのに、寂しいの


だって私、産みたいのに産みたくない


生まれてしまったら、顔を見てしまったら、声を聞いてしまったら


きっと私は、貴方を追えないでしょう?


一人ぼっちじゃ、なくなるでしょう?


貴方がいない世界で、私、生きなければいけなくなるでしょう?



調子に乗って鱗人間出してしまいすいません。獣系よりは鱗系の作者なので、この先もひょっこり顔を出すと思いますが、お許しくださいね。

久しぶりなので、感情移入しすぎたかもしれません。なので、後々我に返り手を入れる可能性ありです(苦笑

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