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十九話

ぽこん ぽこん……ぽこっ


水の音、空気の音、優しい音


ゆらゆら ゆらゆら


揺れている、揺りかご







「……まだ、だめ」


ここは違うから。私の家じゃない。だから、まだ大きくなっちゃだめだよ?

朝目を覚ましても、餌付けした小鳥達の鳴き声は聞こえないし、隣で寝ているはずのドーラなんて影も形もないのだから。だから、今はまだ駄目だよ。


「もう、朝かぁ」


また、あの尋常じゃなく恐ろしいお婆さんとの教育とは名ばかりな一日が始まる……。


「……はぁぁ、まぁ、甘やかされないおかげで」


起き上がった拍子に、さらり、と肩からこぼれ落ちる髪を右手でかきあげて


「前よりは話し方も上手くなったことだし」


さて、そろそろ仕度して行くか。

用意された白いシャツと紺のエプロンドレスを着て、これまた指示されたとうりに食堂へ向かう。


「……瞬間移動とか超能力とかあれば、ドーラに会いに行けるのにな」


ぺたぺた

転んだら危ないからって、踵のある靴をもらえない私は、ぺったんこのスリッパみたいなのを履いて移動中。


「ノールブルグ夫人……お待ちください」


ん?

背後から迫る壁……じゃなくて


「あ、おはようございます」


「はい、おはようございます。」


この屋敷の主であるグエンラルダ・フリンスが立っていた。


「夫人」


そう言えば、この人いっつも私の事ノールブルグ夫人って呼ぶよなぁ……まぁ、だからこそ貞操の危機感もあまり感じずにいられるわけなんだけど。


「夫人、聞いておられますか?」


この人、とにかく大きい。

……見上げた感じじゃ、ドーラほどではないと思うけど。やっぱりこの世界の生物は人だろうと動物だろうと植物だろうと、私みたいなチビじゃどうにもならない体格差を自覚せずにはいられない。劣等感なんて感じている暇もない程だからね。


「……夫人、実は貴方の旦那様がお見えです」


……あ?

一瞬驚きすぎて、と言うより相手の頭がおかしくなったのではないかと目の前の巨人を目を こすり こすり 三度見してみた。


「私も驚きましたが、どうやら国の役を辞してこられたようです。そうは言っても戦場で随分名も売れておいでですから、変装なされて、随分と苦労されたようですが」


無表情……うん。いつもと変わらない様子だな。仕事のしすぎかな?

いくら私が日本からこの世界に来て、浮浪者ののち箱入り妻だとしても、敵国に単身乗り込むことがどれほど大変かくらいは何となく予想はつくし。

まさか、そんな、ありえるわけない。だってドーラは、軍の偉い人で、もう歳だから引退したいってブツブツ言ってても結局引退させてもらえないくらい必要とされてて、それで、それで、部下の人とか、大事にしてて……


「夫人、時間が経てばたつほど行動が制限されます。急いでください」


急ぐって、何を?

ぽかんと口を上げたまま、目の前の男を見上げ続けること数分か、数十分か。

その内、面倒くさそうに眉を寄せたその人は、私を抱き上げ……歩き出した。


「良いですか?これから待ち合わせ場所へ向かいます。そしてあなたを引き渡し、その場で夫人やノールブルグ氏とはお別れでございます」


え?そんな簡単でいいの?

しっかし、大股で廊下を歩き続ける彼の足音は、無音。私だったらドタドタ鳴りそうなのになぁ。

なんて、抱き上げられ比較的自由な私が色々考えつつ、彼の極限まで寄せられた眉を見つめ、将来大丈夫かな?なんて心配しながら疑問符を浮かべれば……


「……夫人の生涯お知りにならぬであろうところで、手助けやその条件や今後のお約束も済ませておりますゆえご心配は無用です。むしろ、私には夫人のお身体の方が心配ではありますがね」


へぇ、やっぱり裏取引とかってあるものなのねぇ。

……あぁもう、何か嬉しかったり、驚いたり、様々な感情が思考を邪魔して、関係ないことばかり頭に浮かぶよ。


「ん?からだ……ですか?」


あれ?この人に心配されるような不調とか訴えたこと合ったかな?


「……気が付いておられないのならば、すぐにでも医者にかかることをお勧めいたします。と言いましても、もうノールブルグ氏にはそれとなくお伝えしておきましたが」


……え、


「不思議ではありませんでしたか?貴方は私達個人の意思とは関係なくこの屋敷へ下げ渡されました。それも……配偶者としてです。だと言うのに私は貴方に一度も触れませんでした、まぁ、趣味ではないと言うのもありましたが」


まぁ、確かにね。でも最後のは余計だと思う。


「この屋敷へ到着後、私は熟考を重ね、世界に残る黒の一族の血を残すためならば手を出すこともやむなしと思ったこともあります。しかし、夫人の教育係に付けている私の乳母に確認を取ったところ……貴方は、なんと、ご懐妊されておられるとの事。……現在に至っても到底信じられるモノではあるりませんが、乳母の言葉に間違いはありません」


……検査とか、された覚えないけど。何でわかったんだろう。


「乳母が言うことには、腹に子がいれば無意識だろうと腹を庇うものだとか」


あ、そう言うことか。確かに庇ったりしてたかも。


「おや、思い当たることがおありですか?」


「はい」


でも、それなら、もうドーラは知っているんだ。


……喜んで、くれるかな






二か月近くも放置してしまい申し訳ありません。

現在、椛は転職活動中でございますのでまた亀行進が続きますが、宜しければお付き合いのほどよろしくお願いいたします。

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