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十六話


 「…どぉら」


 一晩、私は一人だった。見知らぬ部屋に、放置されて、晩御飯も無し…。

 ぐぅ…ぎゅるるるぅと空腹を訴える腹をさすってため息を吐いて、ここに来てからの事を振り返る。誰もいないこの部屋でじっとしてたら嫌なことばかりが頭を過るから、一応備え付けのお風呂には入ったし、床に落とした布団に丸まって、何とか眠ろうと瞼を閉じてみたり、気を紛らわせようと努力しているのに…気が付けば窓から差し込んだ陽射しは私をさらに不安にさせた。ぼんやりとふわふわの布団に埋もれて、身を守るように体育座りして、何度も何度も、ドーラの名を呟くけど…でもやっぱり、気絶する前に耳に届いたあの悲鳴が消えてくれない。


 「…どぉら」


 一言で言いの。ねぇ、お願いだから。お願い、だから…ここにきて、貴方の声で、愛してるって、大丈夫だってそう言って…


 「どぉら、だいじょぶ、だい、じょ」


 かちゃ、きぃぃ…コツ、コツ、コツ


 「…っ」


 滲んだ涙を乱暴に拭って、急いでベットの下に布団ごと自分も潜り込む。

 そして、押しても引いても叩いても殴っても蹴っても叫んでも開かなかった扉が、その時小さな音を響かせ連れて来たのは…


 「本当にこの部屋なのでしょうね?ノールブルグ夫人はいらっしゃらないご様子ですが?」


 聞こえたのは抑揚のない冷たい男の人の声。


 「ふんっ!そんなこと俺に聞かれても知るわけがない。大体、お前も部屋に鍵がかかっていたのを見ただろう」


 それから、偉そうな男の人の大声。

 正直、何を話しているのかは分からないけど…とりあえずは息を潜め侵入者の様子を見ることにした。


 「…はぁ、ではもう結構です。案内ご苦労様でした。仕事へお戻りください」


 冷たい声の持ち主は、何やら声の大きな男の人へ告げているようだったけど…


 「…なにっ?!しかし、せっかく」


 …うぅん、買い物に来てお菓子を買う買わないと言い争っているお母さんと子供みたいな空気だなぁ。


 「もう、結構です」


 あ、見捨てられた。

 多分だけど、この目の前の太い脚の持ち主が冷たい声の人で、向こうに見える若干細めな上等のブーツを履いている人が声の大きな男の人なのだろう。


 「…」


 上等のブーツは後退り、


 「…」


 冷たい声の人の太めの足は微動だにしない。


 「…ちっ」


 あ、何やら諦めたらしい上等のブーツはコツコツと足音を響かせながら部屋から足早に退散した。


 「…そろそろ、でてきていただきたいのですが?」


 …ん?今の、私に向けて言った?

 でも、私の姿は見えないようにふわふわの布団で全身隠してるのに、なんで


 「りりぃ、のーるぶるぐふじん…おはつにおめにかかります」


 って、こわっ!!

 念のためにもっと布団に深く潜ろうと目の前の太目な足から視線を逸らしたその瞬間…


 「わたしのなまえは、グエンラルダ・フリンスともうします」


 もう気が付けば、両脇をぐわっと捕まれて引きずり出され…冷たい声をした無表情の巨漢の前に宙づりで、あれ?足が床からさよならしてますけど?


 「…うぅ」


 怖いよ、ドーラ


 「どうか、おちついてください」


 でも、このひと…私に理解できるようにわざわざゆっくりした口調で子供向けの単語を使ってくれてる?


 「これからわたしのじたくへいどうしますので、しつもんはいどうごにおねがいします」


 うぅん、何か、こう…ドーラも同じように私の言語能力向上の為に付き合ってくれたけど、この人の使う言葉は何か違うなぁ。何が違うんだろ…違和感と言うか、訛りみたいな?


 「…のーるぶるぐふじん?つたわっておられるのであれば、なにかあいずを」


 あ、えぇと、ここからどこかに行くんだよね?取りあえず意味は理解できてるから頷いておこう。そして早く私を下ろしてください。


 「では、いきましょう」


 …え?まさか、この恰好のままですか?






 久しぶりなので、変だなと思ったら手直しするかもしれませんが誤字脱字を発見されましたら優しくご一報お願いいたします。

 そして感想を頂けますと更新速度も上がるやもしれませんので(笑)宜しくお願い申し上げます!!

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