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第六話 話題の人

    「いらっしゃいませ。本日は森の国(ニリム)極東総合支部メロナのギルドにようこそ」




     ついに、ついに俺はギルドに来てしまった!!ふおおーなんかもうこのいかにもな雰囲気をこの目で実際に見られただけでも謎の感動がわき上がってくる。




     あ、あの壁にいっぱい貼り付けてあるのはもしやクエスト!? すげーあっちに宿屋とは比べ物にならなくらいの立派な酒場がある。



     やべーあのごついマッチョの装備かっけー。おお、あっちには黒ずくめのとんがり帽子の魔女っ子が。あああ!!い、いまエルフとドワーフのパーティーがそっちに。な、なにーあ、アマゾネスだと、色っぺー。



    「あの、どうかなさいましたか」


    



    「マスター、マスター」



     はっ、余りにもテンションが上がりすぎて周りが見えなくなっていた。アルが現実に連れ戻してくれなかったらどうなっていたことやら。




    「すみません、ギルドに来るのが初めてなものでつい」



    「そうでしたか。では改めて。いらっしゃいませ本日は当ギルドへどういったご依頼でしょう」




    「新しくギルド登録をしたいんですけど」




    「登録? あの失礼ですがお探しのギルドをお間違えではありませんか。ここは冒険者ギルドの受付カウンターですよ、生産系の裁縫師ギルドや料理人ギルドの受付カウンターは三階なのですが」




     この極東総合支部メロナのギルドは木造の四階建てだ




     一階は職人系の鍛冶屋ギルドや魔導具(マジックアイテム)ギルド、または商人ギルドなどがあり二階は冒険者ギルドと魔術師ギルドがある。また二階には、銀行や魔物の部位をお金と両替出来る取引所がある。



     そして、三階は先ほど受付のエルフの水色ショートのお姉さんがいっていた通り裁縫師ギルドや料理人ギルドなどの生産系のギルドがあり。また、三階と二階には吹き抜けのテラス付き酒場までもがある。



     なぜこんなにも立派な酒場がギルド内にあるのかというと。なんでも、依頼における情報収集をやりやすくするためのはからいなのと。料理人ギルドで考え出された魔物の部位を使って考えられた料理を試食として出しているからなのだそうだ。




     ちなみに、四階は倉庫兼ギルド職員の作業部屋だ。




    「ええ、間違いありません。俺たちがしたいのは冒険者ギルドの新規登録です。あの、俺達になにか? 」



    「いえ、あまりにも皆さんが軽装備でしたので」




     確かに俺たちの今のかっこは、冒険者にしたらあまりにも何も持っていなさすぎるな。




     魔術師だって何かしらの装備をして自分を守るだろうに。そもそも、冒険者になろうとしているのに冒険をするためには必需品となってくる様々な野営道具やカンテラなどの道具を俺達は何も持っていない。




    「諸々の装備や道具はギルド登録あとでしようと思っていたので――冒険者をなめすぎてますかね俺達」



    「そんなことはないと思いますよ。さすがにそのままの格好で魔物と戦いに行く、なんて無茶言われたら私共も全力でお客様がたを止めにかかりますけど。冒険者の仕事は何もダンジョンの探検やモンスターの討伐ばかりじゃありませんからね。雑務系のクエストだって立派な冒険者の仕事ですから。むしろ、ギルドからしたらそういった雑務系の仕事を多くこなしてくれる冒険者の方がありがたいぐらいですし」




     なるほど、市役所的立場のギルドからしたら町の人々の声に応えてくれる方がいいってわけね。



    「あ、すみませんついつい長話しちゃって。冒険者ギルドの登録でしたね。はい、ではまずはギルドについてご説明しますね。ご存じの通りギルドには商人ギルドや冒険者ギルドなどの13種のギルドで構成されています。これらのギルドにはいずれも、ランクがあり、始まりはF-次がF、そしてF+という風にランクが上がっていきます。ランクはF-からSSSまでの21段階です。ランクは、任務の失敗率を下げるためにつくられたのとその方がどのくらいの力量を持っているのかという目安を図るために作られたものです。クエストを受ける方は自分と同じランクかそれよりも二つ下のランクしか受けられません。ちなみに、F-ランクからD-ランクまでが初級者。DランクからBランクが中堅。B+ランクからSSSランクまでが上級者です。依頼には期限のあるものとないものがあり期限までにできなかった場合、報酬の二倍を払っていただきます。また、報酬はギルドが仲介料として5%引いたものとなりますのでご了承を。ギルドを通さなくても依頼は受けられますが、トラブルがあった場合ギルドの後ろ盾がないので依頼はギルドを通したものの方が安全です。とりあえず、ここまでで、質問はありますか?」




    「一度に複数のクエストを受けることはできないんですか?」




    「できなくはないですけどあまりお勧めはしませんね。クエストの失敗はそのままギルドの尊厳を傷つける事に繋がりますから。逆に優秀な方ですと依頼者の方からご指名がくる場合もありますよ。ああ、それとCランク以上の方からはその方の宣伝も兼ねて二つ名がつくことになります。他には?」




    「ランクアップの条件とかってどうなっているんですか?」




    「ランクアップは各ランクによってその条件が異なってくるんですけど。そうですねぇ、F-ランクからFランクですと地道な道のりでクエストの一万件の達成か可能性を信じてランクに似合う大きな偉業を達成するってとこですかね」




     おおう。ギルドランクを極めるということはなんとまあ、厳しい道のりなんでしょうか。




     つかそうなると、SSSランクってのはどんだけすげー奴らなんだ。




    「説明を続けますね。ギルドは、ほぼ全ての国にあり。また、そのいずれのギルドもどの国家にも所属していません。なぜならギルドの主体がそれぞれの分野のエキスパートたち同士の世界的な情報交換をより早く、より正確に、より親密にし、それぞれの発展を志すものだからです。各国はその恩恵から得られる国の発展を無視できないということもあるのでギルドには基本様々な意味で手出しできません。まあ、つまりは見知らぬ土地で困ったことがあったらまずはギルドに駆け込めって事ですね。またこれらは、ギルドが保有しているオーパーツである“メタトロンの瞳”によりできる各ギルド同士の正確な情報交換と全ギルド登録者のデータ管理及びその者のステータス観測、そして銀行の運営により可能となることなのです」




     なるほどなぁ。上手く出来てるもんだ。今後ともにギルドには目一杯お世話になりそうだ。




    「ギルドについてご理解なさいましたか」




    「はい、そりゃもう。二人は何か聞きたいこととかはあるか」



    「いえ、とくには」




    「私もないです」



    「では、次はこちらにお名前をご記入してください」



     受付の水色ショートのエルフのお姉さんが差し出してきたのは鉄製のクレジットカードのようなものだった。




    (名前……漢字でいいのだろうか。そういえば俺、なんでここの人たちの言葉通じるようになったんだろ)




    (それは私が、マスターと私に契約により魂同士に繋がれた精神のパスからマスターの前の世界の記憶を解析しこの世界の言語と照らし合わせているからです)




    (ふーん、――って念話! あれ、今のもしかして念話にしちゃってたのか)




    (ええ、そうですよマスター)



     ん~念話って便利だけどかなり難しいな、下手したら周りに俺の考えていることだだもれになる。


     言葉で思い出したけど昨日のあの鎧野郎どもってアレ、仕方なかったとはいえ俺が原因で殺してしまったようなもんだよな……なんつーか、結果的にクランを助け出すこともできたし後悔とかはないけど――やっぱり命を奪うっていうのは後味が悪いな。通り魔に殺されたとはいえ俺が今まであの平和過ぎた日本でずっと暮らしてきたから命のやりとりをするって感覚がない、ってのもあるのだろうけど――




     でもこの先そういった事は魔物とかがいる限り日常茶飯事なことになってくるし。あぁもう、くそ、モヤモヤするな。





    「どうかしたんですか? ユートさん」




    「ああ、いやその。字が書けないんだ。以前俺のいたところの文字なら書けるんだが」



    「そんなことなら私にお任せください。代わりに書かせて頂きます。――えーと、ユート、カ・ミ・サ・カっと。はい、できましたよユートさん」




     やはりクランにとっては辛いことだからなのか馬車から助け出した時の事はクラン自身が何も聞いてこないから話してない。けど、俺達の前に鎧野郎どもと戦ってた角付きの人たちのこともあるしそのことについても後でじっくり話合う必要がありそうだな。



    「ありがとうな、クラン助かったよ」




    「あ、ちょ、頭撫でないでくださいよ、子供じゃないんだからは、恥ずかしいじゃないですか」



     顔を真っ赤にして恥ずかしがっているようだがどことなく嬉しそうだ。クランが年相応の子供らしい反応をしてくれると俺としても嬉しい。



    「はい、ユート・カミサカさんに、アルス・X・マキナさんに、クラン・クル・マルグリットさんですね。確かに登録しました。では最後に皆さんのステータスを測定しますのでこちらに来てください」



     水色ショートの受付のエルフのお姉さんに連れられて小さく区切られた教会の懺悔室のような所に入るとそこには俺の顔とほぼ同じくらいの大きさの水晶が部屋の中で浮いていた。



     これがさっき言っていた“メタトロンの瞳”ってやつか。





    「では、こちらの水晶に順番に皆さんの血を一滴ずつ垂らしてください」




     血を垂らすとさっき書いたそれぞれのカードと水晶がひかりだした。



    「はい、これにて冒険者ギルドの登録を終わらせていただきます。お疲れさまでした。そちらのカードはこれからの皆さんのギルドカードとなりますのでくれぐれもお無くしなさらないようにしてください。あ、それとカードと共に皆さんの銀行の口座も同時作成されていますので。今からご利用できますよ」



     やった。これで俺も今日から冒険者だ!



    「マスターマスター、ギルドカードにステータスが浮かび上がってます」




    「おお、ほんとだ。なになに」





     ユート・カミサカ


      年齢:17歳 

      性別:男 

      筋力: D

      頑丈: B

      体力: D

      俊敏: B

      精神: -E

      器用: -E

      知力: C

      魔力: A

      魅力: +B

      運勢: C

      存在: EX

      職業: 精霊王

      加護: 魔工の目

      所持魔法属性: 無

      装備: 旅人の服

      所持金: 6,441G

      レベル: 1





    「くっそ~A以上は魔力のAと存在のEXだけか、アルとクランはどうだった」



    「私はA以上は知力のA一個しかありませんでした」





     アルス・X・マキナ



      年齢:5歳

      性別:女

      筋力: E

      頑丈: -E

      体力: -C

      俊敏: C

      精神: C

      器用: -F

      知力: A

      魔力: -D

      魅力: +C

      運勢: B

      存在: +B

      職業: 魔工を司る者

      加護: 精霊王の加護

      所持魔法属性:火 水 土 木 風 光 闇 氷 雷 魔工

      装備: 旅人のドレス

      所持金: 0G

      レベル: 1





    「は!?ちょ、ええ!!二人ともほんとですか。っていうかそんなこと、そんな大声でいったりなんかしたら。あわわわわ」



    「お、おちつけ、どうしたって言うんだクラン」



     クランの顔色はみるみる青ざめていく



    「いいですかユートさん。ステータスっていうのはF-からEX+まである全23段階で表されます。そしてだいたいFで一般の子供くらい、Eで一般成人、Cで一流、Bで伝説、Aで神族入りという風に言われています。そしてユートさんがEXである存在のステータスなんですけど。魔法は行使し続けると世界のもとに戻ろうとする修正力による反動により行使者自身に絶対に負荷がかかるものなんです。そしてその魔力反動の負荷によるダメージの度合いを測るのが存在です。存在のステータスは、どんな精霊や神の加護を受けている人でも、いえ例え精霊自身や神族であってとしてもたいていの者はA以上いかないものなんです」




    「そ、それで」




    「それでですね、存在:EXだなんて前代未聞のことを、冒険者を筆頭に様々な人が入り乱れるギルドのしかも酒場に近いこんな場所でいったりしたら……ね。」










     気づけばあんなに騒がしかった周りが静まり返っていた。




     周りを見渡せば皆凍結したかのように固まってこちらを様々な目線で凝視している。受付の水色ショートのエルフのお姉さんもカウンターに帰る途中で固まっている。











    「おい、聞いたかさっきの、存在:EXって」

 


    「ま、まさかそんな、ありえねーって、何かの聞き間違いだろ」



    「いや、でも他の奴らも聞いたみたいだし。それに、俺達人狼の耳の良さはお前もよく知っているだろう」



    「それじゃあなにか、“メタトロンの瞳”がぶっ壊れたっていうのか」



    「バカかおめーは、それこそ絶対にありえねーだろうがあれは伝説級のオーパーツだぞ」



    「そ、そうだけどよう」







    「ねね、そこの受付さんぼーっとしてるぐらいなら、あの子達のステータスのデータ確認してきたら」



    「え!?あ。はい、直ちに確認してきます」



    「ねえホセ爺どう思う。もしあの珍しい黒髪黒目のキュートな坊や達のステータスが水晶の故障や聞き間違いじゃなかったらとっても面白いと思わない」



    「ふん、そんなこと。どうだっていいわい。たとえあの小僧共が凄かろうとワシらには関係のない事じゃろうが」



    「そうだけどー。もう、つれないなぁホセ爺は。ねェ~ルルセ、ホセが冷たいィ」


 

    「あらあら、まあまあメルったら、あの坊やに興味があるの」



    「もう、ルルセェ~」







    「すん、すん。ジャームぅ、なんだかメルヘンな匂いがあっちの方からするよ~」



    「ほんとだわぁ、マッシぃ、カラミテぃな臭いがそっちからする~」






    「おい、ザン、今すぐあの不思議黒色生物を捕まえてきなさい。ジョージ、解体の準備を早く。ホサラあなたは、……そのままつっ立てなさい」



    「オケー、リリス任せときな」 「わかっだ。俺ここ動かない」



    「ちょちょちょ、まった、まったお嬢」



    「なによザン、まさか、あなたこの私の命令を聞けないっていうの」



    「そのまさかさ、いいかいお嬢。いつも言ってるようだけど興味があるからってそう何でもかんでも解体しようとしないで、――まて、ジョージどこに行く気だ。わわわ、お嬢なに出してんだよ」



    「特大メス」



    「とりあえず落ち着こう、ね。ほら深呼吸、はいスースーハー」



    「どきなさい、ザンさもなくばあなたもみじん切りにするわよ」



    「落ち着こう、ほんとマジで落ち着いて。また、町に滞在できなくなるから。な、だからお嬢。落ち着いて、落ち着いてください」













     おいおいおい、なんだよ。なんだか至るところから色んな事聞こえてくんぞ!!



     と、とりあえずここはあれだ、うん。



    「クラン! アル!」





    「はい、ユートさん!」 「マスター?」










    「戦略的撤退ぃー!!」


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