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第九話 光の中の眠り姫

ずいぶんと遅れてしまいましたが。あけましておめでとうございます。


少し忙しくて更新が遅れてしまいました。誠に申し訳ありません。

本年も頑張らせてもらいますのでどうぞよろしくお願いします。



   「始まりは何てことないただの二日酔いのようだったんだ」



    俺達はとりあえずついて来てほしいというキアと共に、キアの住んでいるという町から森へ出て少し東に行った所にある小さな小屋にやって来ていた。



   「お、おい。キ、キア――これって」


    中に入るとそこには想像を絶する光景が広がっていた。



    俺達がここに来た時には、もうほとんど日が暮れて辺りも暗くなり始めていたというのに中は眩しいくらいまでに明るかった。



    しかも、その光は、ただの光ではなく部屋の奥からキラキラと光る粒子のようなものがこちらに流れ出てきていて、その一つ一つが強い光を放っているのだ。



    そして、粒子の流れをたどって行くとそこには、一人の女性がベットの上で寝ていた。



   「ユート、それに二人も。これが俺が薬草を盗んだ理由だよ」



    女性は、キアと同じ赤毛をしておりその容姿はかなり整っていた。また、周りの光の粒子も相まってさながら王子の目覚めのキスを待つお姫様のように美しかった。



    しかし、何よりも俺たちの目を引かせたのはその女性の美しさではなかった。



    女性の体が薄らと透けて輝いているのだ。



    彼女の体から光の粒子が舞い上がっていき。そして、その都度に彼女の体は、クリスタルのように透き通っていく。



    先ほどから見かける光の粒子はどうやらこの女性から出てきた物のようだ。








   「レネ・ソルト・メディスン。――俺の姉さんだ。」



    キアは、俯きながらポツリポツリと喋り出した。


   「姉さんは冒険者をやっていたんだ。――――二年前ぐらいかな、その日姉さんはある薬草を取りに行くクエストを受けて“静寂の森”の方へと行ったんだ。本当ならそこまで危険じゃない森の入口付近で薬草を採ってくるだけの簡単な仕事なんだったんだけど、その日何故か姉さんは帰ってこず、翌日にとあるパーティーの冒険者の人達が“静寂の森”の奥地で倒れている姉さんを発見したんだ」



   「森の奥地で倒れていた? 魔物に襲われたのでしょうか?」

    


   「わからない、姉さんは森に入ってからの記憶がないっていっていたし、見つけてくれたパーティーの人達もそれらしい痕跡は一つもなかったって……」



    本人にその時の記憶がないのか。



   「先も言ったように帰ってきた最初の頃は二日酔いのように少し気分が悪そうにしていただけだったんだ。でも、日が経つにつれ段々体力がなくなってきて。しまいには、体が透けるなんて前代未聞なことまで起き始めた。医者に見せても原因は全く分からないっていうし。最初の頃こそ良くしてくれていた人達も気味悪がって近寄りすらしなくなったんだ。その上冒険者達の中から姉さんと同じ症状をきたす人々が出てきて、それが俺達が原因じゃないかっていう声まで聞こえ始めてきて――」





    その時の悔しさが思い出されたのか、キアは涙ぐんでいた。



   「いっつも喧嘩ばかりしていた姉さんだけどさ、それでも俺にとっては早死にした父さんと、母さんの代わりに俺をここまで育ててくれた自慢の姉さんなんだ。それなのに、あいつら……まるで穢れたものを見るかのような目をしやがって――そのせいで、少しでも姉さんを楽にさせてやりたいのに、ろくに物を売ってすらもらえなくなった。だから、俺は物乞いのような格好をして身を隠し、盗みを働くしかなかったんだ」




    一通りを話し終えたキアは、とうとう我慢できずに泣き出してしまった。


   「大丈夫だ、ギア。これ以上、そんな思いお前達姉弟にさせない。俺達がどうにかしてやる!!」



   「どうにかしてやるって……。姉さんを見てくれた医者は曲がりなりにもここらじゃそれなりに腕の立つ医者だって人だったんだよ? そんな医者でさえ病名すら分からなかったのに――一体どうやって!?」



    確かに、ただの冒険者が専門家でわからなかったこと知ってはるはずがない。しかも、俺のランクはF-だ。最高ランクのSSSであったならばまだしも、駆け出しも駆け出しのひよっこぺいぺい冒険者のF-が何を知っているのだといわれて当然だろう。



    さらに、俺は異世界人だ。この世界のことなど、生活していく上で必要になってくる常識ですらも、いまだ完璧に分かっているとすらいえない状態である。



    本来ならば大丈夫だというような大それたことは口を裂けていえないはずである。しかし、俺は、キアの姉、レネさんを救うことができるという確信が漠然とだがあったのだ。




    なぜなら、俺はこの目の前で起きている現象と同じ光景につい数週間前に出くわしているのだ。



    そう、アルが俺を助けるために自分を犠牲にしてまでして魔法を使って助けてくれた時のことである。現在のレネさんの状態はあの時のアルの症状ととても酷似している。



   (アル、もしかしなくてもレネさんの魔力はほとんど枯渇状態なんじゃないのか?)



   (マスターもお気づきになられましたか。はい、その通りです。今レネさんの魔力は限界までに減っています。どうやら異常な魔力枯渇からくる存在の希薄化現象のようですね)



   (やっぱりか、だったら俺のあまりある魔力をレネさんに上げることによってこの状態は止まるんじゃないのか?俺の魔力を他人へと譲渡することはできるか?)



   (!!――なるほど。はい、できますマスター。確かにそれなら、今の状態のレネさんを救うことができます)



   (よし、じゃあそうとわかれば早速とりかかろう。俺はどうすればいい?)



   (まずは、憑依してレネさんの体内の中にある魔力源を探してください)



    言うなり、アルは俺に憑依をした。周囲の光の結晶自体にも濃い魔力宿っているのか魔力回路がいつもより複雑に絡み合っている。そんな中俺は、ひときわ青い輝きが強い球体を腹部に見つけた。良く見れば周囲の魔力回路は全てあの球体に繋がっているようだ。



    これか!!これがレネさんの魔力源だな。


 

   (魔力源を発見しました。そちらは、見つかりましたか?マスター)



   (ああ、こっちも見つけたぞ、アル)



   「お、おいユート。姉さんに一体何をしようとしてるんだよ。それに、アルさんはどこに!?その光は!?」


   「落ち着いて、キアくん。心配ないだから」



   「く、クランさん、そんなこと言ったて……」



   「大丈夫、大丈夫だよ、キアくん。なんたってユートさんは精霊王様なんだから」




   「せ、精霊王!?」



    キアに、俺のことがばれてしまったが、仕方ない。そんなことより、今はレネさんの治療に専念しなくては。



   (マスター、魔力源を見つけたのならば。次は、そこに手を当て魔法を使うときのように気を送るようにしてください)



   (わかった。やってみる)



    俺が魔力をレネさんの魔力源へと注ぎこむと、程なくして徐々にレネさんの体は色を取り戻していき光の結晶も出なくなっていった。



    どうやら、概ね成功したようだな。くっ、しかし、随分と魔力を食いやがるぜこれは。いくら、膨大にあまりある俺の魔力とはいえど、こうゴリゴリとすり取られちゃこっちの身が持たないな



   (アル、あとどのぐらいでレネさんは元の体に戻りそうだ?)



   (――ま、マスター)


   (どうしたんだ、アル?)



   (それが、レネさんの魔力は概ね戻って言ってはいるのですが――)


   (ですが?)



   (それと共に、何故か多くの魔力が外部へと放出されて行って魔力をどれだけ送ってもきりがありません。どうやら、ただの魔力枯渇ではなかったようです)




   (そ、それじゃあ俺達はレネさんを助けることができないのか!?)




   (あのままだったなら保って数日の状態だったのを数年にまでに引き延ばすことができたのですが――状況から推測するにどうやらレネさんは外部から魔力を無理やり吸い取られているようです。それをどうにかしないことには、これはどうにもなりません)



   (外部からって――。一体なんだって言うんだ?)



   (それは、私にもわかりかねません。とにかく強大な力を持つ何者かとしか……)



   (そいつの居場所はわかるか? アル)



   (魔力の流れを追えばなんとか――とにかく、レネさんの一命は取り留めることはできました。魔力供をいったん止めましょう。これ以上すれば、今度はマスターの身がもちません)



   (そうか――――仕方ない、わかった。いったん魔力供給をやめよう)



    アルの憑依を解くとすぐさまキアが俺に抱きついてきた。



   「あ、ありがとう!! ユート。姉さんを助けてくれて。お、俺なんて言ったらいいか――それに、ユートが精霊王様だなんて知らなくて無礼なことしちゃって――とにかくありがとう」



   「やりましたね。ユートさん、アルさん」



   「無礼とかはいいんだ。今までどうりに変わらず接してくれた方が嬉しい。それよりも…………すまない、キア。お前の姉さんはまだ完全に完治したわけじゃないんだ」




   「――え」



   「どうやら、レネさんは何者かによって魔力を奪い取られているようなんだ。今は、俺の魔力を供給して一命を取り留めたんだが」




   「そんな、じゃあ、その姉さんから魔力を奪い取っている奴をどうにかしない限り姉さんはずっと危険なままなのか――くそ、どこのどいつだ!!姉さんをこんな酷い目にあわせている奴は。ぜって―に許せねぇ」



    いきなり小屋から飛び出して森の方へ行こうとするキアを、なんとか捕まえる。




   「何すんだよ、はなせ。はなしてくれユート」



   「どこに行こうって言うんだ!! 今はもう夜だぞ。町の中ならまだしも、森なんかへ行って魔物にでも襲われたらどうするつもりだ。それに行き先立ってわかってないだろうが!!」



   「で、でも」




   「でもじゃない。――なに、大丈夫だ。必ず、キアの姉さんは助かる。俺達に任せろ。とりあえずレネさんの魔力は満杯にまで注ぎ込んだから心配はない、じきに目も覚ますだろう。今日はもう遅いし疲れただろうからキアは、もう休め。俺達もいったん宿に戻って休んでから。明日朝一に元凶の奴の捜索を始めるから、な。」





   「――わかった」



    どうやら不服ではあるが、納得してくれたようで良かった。







































    翌日、約束通り俺達はレネさんの魔力を吸い取っている奴を探すべくアルに吸い取られていく魔力をたどってもらいながらそいつを探した。


    魔力を吸い取っている奴を探してキア達が住んでいる小屋から更に東の森へと入って行き、俺達は“静寂の森”の奥地へと入って行った。



   「ユートさん、この先って」



   「ああ、――アル方向は間違ってないか?」


   「はい、マスター。この森の奥へと進むにつれレネさんの魔力だけでなく様々な所から魔力が集められているのを感じ取ることができます。どうやら、相手は人間だけでなく他の生物からも魔力を吸い取っているようですね」



   「だから、森に入ってから一度も魔物に一度も出会うことがなかったんですねアルさん」



   「ええ、そのとうりです。しかしこの先からはどうも油断できないようですよ。すぐ近くで凄まじい数の魔力源を感知することができます」




   「とにかく、だ。うだうだいってないで進もう二人とも」







   「ええ、そうですね」 「了解しました」






   


   「ダンジョン“深緑の遺跡”へと!!」




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