絵しりとり
「――ということで、今日はユイとニヤさんとコラボします!」
「いえーいにゃ!」
「よろしく!」
:いえーい!
:豪華メンバーだ!
:これは楽しみすぎるw
:ユイとニヤの組み合わせ初めてじゃない?
「この三人だけでコラボするの初めてにゃね」
「そうですね。この三人が揃うのは、三期生全体のコラボの時だけでしたから」
:意外だよね
:結構仲がいいエピソードはあったのに、意外とコラボは無かったんだよね
「それで、今日はこの三人で絵しりとりをしていきます!」
「楽しそうなのにゃ!」
:いいね!
:ノアは上手だったよな
:偏見だけど、ユイはうまそう
:ニヤは……なんか下手そうな気がする
「な、なんでにゃ!」
「確かに、わたしもそんな気がします」
:だって、ニヤって特化してるタイプじゃん
:得意なことはとことん得意だけど、苦手なことは絶望的だからな
:0か百しかない
:この前の配信を忘れたの?
「この前って、何をしたんですか?」
「……将棋のアプリで、初心者レベルに惨敗したのにゃ」
:あれは伝説だったw
:初心者レベルに負けるのは逆に才能
:ニヤの苦手分野は見てて安心する
:RTAしてる時は、惚れてしまうほどカッコいいのに
「にゃ、にゃんで安心するんだにゃ!」
「でも、そういうところもニヤさんの魅力ですよね」
:それは否定しない
:ニヤのそういう所は好き
:ユイノアみたいな万能型もいいけど、ニヤみたいな特化型もいいよね
「むぅ……でも、絵は得意かもしれないにゃ!」
「えっ、本当ですか?」
「にゃはは! 得意かどうかは、描いてみてのお楽しみにゃ!」
:フラグ立ったw
:これは絶対カオスになるやつ
:ニヤの絵心チェック楽しみすぎる
:逆に伝説が生まれる予感
「じゃあ、最初はノアちゃんから描いていこう」
「え? 僕から? ま、いいけど……」
初手は、ちょっと緊張する。でも……ユイの後にするよりかはマシかな?
そんなことを考えながら、白色にペンを走らせる。
:おお、うまい!
:いい感じじゃん
「ああー、あれにゃね」
「ニヤさんも分かりました?」
「当然にゃ。ノアは絵を描くのが上手いにゃね」
僕が描いているのを見て、ニヤさんたちや視聴者が僕のことを褒めてくれている。褒められるのは、まだ慣れていないから……ちょっとだけ、こそばゆい。
「はい、出来ましたよ」
:上手!
:リスかな?
:かわいい!
「おおー、うまいのにゃ。じゃ、次はユイの番にゃね」
「うん。わたしもノアちゃんに負けないような絵を描かないとね」
僕の絵がみんなから認められて、少し嬉しい。
:ユイのターンきた!
:絶対上手そう
ユイは少し考えてから、丁寧に線を重ねていく。
ペンを握る彼女の指先は迷いなく動き始める。線は滑らかで、形は整っている。僕が緊張しながら描いたのとは違い、ユイの筆致には落ち着きと余裕があった。
画面に少しずつ形が浮かび上がっていく。小さな体、丸い頭、電線の上に立つ姿――。
:うまっ!
:リアルすぎるw
:雀だ!
:これは一目でわかる!
:ユイ絵心ありすぎだろ
「ふふっ、絵は得意なんでね」
「……ユイって本当に何でも出来るんにゃね。下手したらベオ先輩レベルの万能さがあるんじゃないかにゃ?」
「いや、まだまだですよ。あの人は、本当に実力はある人なんで。……その分、性格が非常に終わってますけど」
「否定したいけど、否定できない……」
一応、僕はベオ先輩に恩があるから、何とか否定してあげたかったけど、あの性格の悪さは擁護できるようなものでは無く、口をつぐむしかなかった。
性格さえよければ、面倒見もいいし完璧な先輩だったのにな。……性格が良いベオ先輩なんて、ベオ先輩じゃないかもしれないけど。
「じゃあ、次は問題のニヤさんですね」
「問題のじゃないにゃ!」
「でも、ニヤさんだからなぁ……」
「ノアも酷いにゃ!」
:信頼度なさすぎだろw
:いや、ある意味信頼度高いぞ
:がんばって見返してやれ!
「ふん、にゃーの絵を見て驚くがいいにゃ」
:ついにニヤのターンw
:これはスクショ案件だな
:頼むから分かる絵であってくれw
ニヤは勢いよくペンを走らせる。
しかし、線はどこかぎこちなく、形も歪んでいる。
そして、出来上がったものは……。
「ふっ、完璧にゃ」
「……なんですか、これ?」
「……棒?」
:wwwwww
:マジでわからん
:画伯すぎるだろw
出来上がった絵は、ガタガタした輪郭に点々が散らばった不可解なもの。
見れば見るほど混乱が深まる。点は目なのか模様なのか、それすら判別できない。
僕は首を傾げ、ユイは眉を寄せて沈黙した。
「え? わからないのにゃ?」
「申し訳ないですけど……本当にわかりません」
「逆になんで伝わると思ったんですか?」
:ユイ、辛辣すぎる
:でも、気持ちはわかるよ
ユイの冷静な突っ込みに、ニヤは肩をすくめて必死に笑顔を作る。
その笑みはどこか引きつっていて、本人も内心では「やばい」と思っているのが伝わってくる。
「ほ、ほら、もう少し考えてみるのにゃ!」
「うーん、ユイはわかる?」
「全く、ルミナ先輩ですらわからないんじゃない?」
:これは、ルミナでも無理w
:これは伝説更新だわ
:次の人どう繋げるんだよw
次の人……あ、僕のことか。
ということは、かなり不味い。
頭の中で必死に考える。
丸い……ような気もする。点々……は模様? いや、目? それとも種?
どれを取っても正解に辿り着ける気がしない。
こうなったら仕方がない。絵で判断するんじゃなくて、ニヤさんの性格から描いたものを判別しよう。
ユイが描いたのは雀だから、めから始まる言葉の物のはず。だから、ニヤさんが描きそうなのは……。
「よし、決めました」
「え? ノアちゃん、わかったの?」
「自身は全くないんだけどね。もうこの方法しかなかったから」
そうして、僕は絵を描いていく。
この絵が合っている自信は全くないけど、描かないわけにはいかない。
:何を描くんだろう
:がんばれ!
:失敗しても、ニヤのせいだから気にしないでいいよ
「そ、そんなにひどかったのにゃ?」
「そうですよ」
「ゆ、ユイが冷たいにゃ」
うん、さすがにあれは擁護出来ないほど酷かった。
というか、絵と言うことすら出来ないほどだった。
「よし、出来ました」
僕が描いたのは――黒い羽を広げたカラス。
正直、ニヤさんが描いた絵から繋がっているか自信を持てないけど、これしかやりようが無かった。
:おおー!
:ノアの絵はやっぱり安定してる
:これはカラスだろ!
:わかりやすい!
:あってるのか?
「ほら、ノアはわかってくれたにゃ!」
「え? ということは、さっきの絵はメダカだったんですか?」
「そうにゃよ!」
:えぇ……
:メダカとは……?
:ちょっと価値観壊れた
「よ、よかったー」
「ノアちゃん凄いね。どうして、あれがメダカだとわかったの?」
ユイが不思議に首を傾げてくる。確かに、あの絵の正体がメダカだって判断するのは、ルミナ先輩やベオ先輩でも無理だろう。でもね……。
「めから始まる言葉ってことはわかっていたから、ニヤさんが描きそうなものを予想しただけ。あの絵については、全く参考にしてないよ」
「にゃ?」
:wwwww
:悲報、ニヤの絵は理解されてなかったwww
:結局、ノアも理解してなかったのかよ
:よく正解したな
「てことは……」
「……こっちを見るなにゃ」
「絵を描くのが苦手でも、僕はニヤさんのことを尊敬してますよ」
「……うるさいのにゃ」
:ショック受けてるぞ!
:ノア、それはとどめだ
:どんまい
そうして、僕たちは絵しりとりを続けていった。
僕が安定してわかりやすい絵を描いていき、ユイが圧倒的な絵を描く。
最後にニヤさんが、良くも悪くも衝撃的な絵を描いて、配信を笑いで包み込む。
「もうそろそろ、終わりにしよっか」
「そうだね、もうこんな時間だし。ニヤさんも、それでいいですか?」
「……もうどうでもいいにゃ」
:ニヤが落ち込んでる
:でも、あの絵はフォロー出来ねぇよ
:この三人のコラボ、また見たい!
「ということで、今日はここまで! みんなありがとね!」
「またね!」
「……また今度なのにゃ」
「ニヤさん、まだ落ち込んでる……」
【ニヤユイノア】みんなで絵しりとり!
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