コラボ1
「はじめましての人も、そうでない人もこんにちはー、NeoVerse三期生の月夜ユイと――」
「こんにちはー! 朝霧ノアだよ」
「今日は、同期と初コラボ、初オフコラボをしていくよ!」
:おおー!
:オフコラボ!
:待ってた!
:二人ともかわいい!
「ふふ、チャットの勢いすごいね。ノアちゃん、緊張してない?」
「えっ……あ、あの……ちょっとだけ……」
「ちょっとどころじゃない顔してるよ?」
「してないっ……!」
:照れてるのかわいい
:ノアちゃんがんばれ!
:ユイちゃんのツッコミ助かる
だって、ユイが隣にいるから仕方がないじゃないか。画面越しならまだやりようがあったけど、直接会うのは、まるで別物だった。
「ノアちゃんをいじるのはこのくらいにしておいて、まずは二人でマシュマロを読んでいくよ」
:おおー!
:質問コーナーきた!
:二人に聞きたいこといっぱいある!
「えっと……じゃあ、一つ目は……『お互いの第一印象を教えてください!』だって」
「だ、第一印象……?」
ボクは思わず言葉を詰まらせてしまった。ユイとは、まだ出会ったから一時間も立っておらず、うまく言葉で表すことが出来ない。
第一印象だから、あまり正確では無くてもいいってことはわかっているけど、あの時に見た目の奥の影が、頭にこびりついて離れない。
「うーん、小動物?」
そんなことを考えていると、隣でユイがそう呟いていた。あまりにも即答だったので、思わず息を呑んでしまう。
小動物……? ボクが?
「ちょ、ちょっと待ってください! どういう意味ですか、それ!」
慌てて抗議すると、ユイは肩を揺らして笑った。
「だってさ、配信の準備のとき。マネージャーさんに手伝ってもらったでしょ?」
「……え?」
「そのとき、ノアちゃん、全力で息ひそめてたじゃん。で、話すのはぜーんぶ私に丸投げ」
「っ……! そ、それは……!」
抗議の言葉が喉でつかえて出てこない。
確かに、あのとき僕は一言も声を出せなかった。
人見知りのせいで、ただ隣に立っているだけで精一杯だったのだ。
「ほらね。小動物でしょ?」
ユイは楽しそうに肩を揺らして笑う。
:わかるww
:守ってあげたくなるタイプ
:思ってたより人見知りだった
:ノアちゃん=小動物説爆誕
「うぅ……」
せっかく今までボクの人見知りがどれほど酷いか隠すことが出来ていたのに、ユイのせいでばれてしまった。
いや、ユイのことを責めているわけではないんだけど、こうしてあっさり暴かれてしまうと、穴があったら入りたい気分になる。
「……ノアちゃん、ほんとに顔真っ赤だよ?」
「っ……! だから、それ言わないでくださいって!」
必死に抗議する僕を見て、ユイはますます楽しそうに笑う。
その笑顔に、チャット欄がさらに盛り上がった。
:照れてるの尊い
:ユイちゃんの笑顔につられて笑っちゃう
:小動物いじりが止まらないw
苦手だ、この人は。こんなにもぐいぐいとこられると、僕みたいな人見知りには正直、息苦しい。
「ところで、ノアちゃんはわたしと会って、どんなことを思ったの?」
不意に向けられた問いに、喉がひゅっと鳴った。
第一印象……? そんなの、言えるわけがない。
「え、えっと……その……」
視線を泳がせていると、コメント欄がざわめいた。
:おおー!逆質問きた!
:ノアちゃんの答え気になる
「……ふ、不思議な人?」
自分でも驚くほど小さな声だった。
けれど、ユイはちゃんと聞き取って、ぱちりと瞬きをした。
「不思議な人?」
ユイは、ボクの言葉を聞いて首を傾げた。
チャット欄も同じようにざわめいている。
:どういう意味?
:褒めてるの?
:気になる言い方w
「いや、その……なんというか」
言葉を探して口ごもるボクに、ユイが身を乗り出す。
「なんというか?」
「明るいとは思うけど、それだけではないような感じがする人」
自分でも何を言っているのかわからなくなって、声がどんどん小さくなる。
けれど、ユイは目を瞬かせてから、にこっと笑った。
「へぇ……それって、どういうこと?」
ユイの瞳が、ほんの一瞬だけ真剣な色を帯びた。
その視線に射抜かれて、胸がどきりと跳ねる。
「……あ、あの……明るいんですけど……その奥に、なんか……うまく言えないけど……」
言葉が喉でつかえて、最後まで出てこない。
けれどユイは、ふっと目を細めて笑った。
「そっか。ノアちゃん、意外と鋭いんだね」
「っ……! ち、ちが……!」
慌てて否定する僕を見て、ユイはまた楽しそうに肩を揺らす。
チャット欄も一斉にざわめいた。
:え、なにその意味深なやり取り
:ノアちゃん、核心ついてる?
:ユイちゃんの笑顔が逆に気になるんだが
「ひみつー。だって、ミステリアスの方が面白いでしょ」
ユイがウインクするように笑うと、コメント欄が一気に盛り上がった。
:ずるいw
:気になるに決まってるじゃん!
:ユイちゃんのひみつって何⁉
「ほ、ほんとに……からかわないでくださいよ……」
ボクは視線を逸らしながら小さく呟く。
けれど、ユイの笑顔はどこか挑発的で、同時に優しさも滲んでいた。
「じゃあ、この話はここまで。次のマシュマロいこっか!」
軽やかに話題を切り替えるユイに、チャット欄も再び期待の色を見せる。
――けれど、胸の奥には、さっきのひみつという言葉が小さな棘のように残っていた。




