僕の初配信4
「てことで、格付けチェックはおしまい。ユイトさんが生き返ったところで……次は、みんなでカラオケをするよ!」
「カラオケ!? 配信でやるのか?」
「そうにゃ! 歌って笑って、最後は盛り上がって終わるにゃ!」
:カラオケきたーー!
:歌枠助かる
:ユイトの歌が一番楽しみw
「それじゃあ、最初はにゃーから歌うにゃね!」
ニヤがマイクを握ると、スタジオの空気が一気に明るくなる。
選んだのは、誰もが知っているアニソン。イントロが流れた瞬間、観客もコメント欄もざわついた。
「----、---♪」
:知ってる歌だ!
:この歌良いよな!
:ニヤの歌って勢いがあるな
歌声は決して上手いとは言えないが、楽しさと勢いが圧倒的だった。
歌っているニヤさんは、とっても楽しんでいて、聞いている僕たちも楽しくなっていく。
それは、みんな同じだったようで、ユイたちも自然と手拍子を始め、視聴者のみんなもコメントで盛り上がっていた。
:手拍子してるの可愛い
:コメント欄もライブ会場みたいw
「にゃははっ! ありがとにゃー!」
最後まで全力で歌い切ったニヤは、満足そうにマイクを掲げる。
スタジオは拍手と笑いに包まれた。
「トップバッターから飛ばしてくれたね」
「勢いがすごかったです」
「場が一気に明るくなったな」
ニヤがマイクを次の人へ渡す。
「じゃあ、次はマサ。もっと、もーっと盛り上げるにゃよ!」
「まったく、プレッシャーをかけやがって……」
そう言いながらも、マサさんはこれ以上ないほどの笑顔で笑っている。
マサさんはマイクを受け取ると、少し照れくさそうに肩をすくめた。
「じゃあ……俺の番だな」
選んだ曲は、まさかの昭和歌謡。イントロが流れた瞬間、スタジオの空気が一変する。
落ち着いた旋律に、マサさんの低く響く声が重なった。
「――――、――――♪」
:選曲が渋すぎるw
:声がダンディすぎてびびった
:ギャップ萌えきたーー!
:古いよwww
それでも、マサさんの予想外の選曲に、みんなが笑い楽しんでいる。
予想外の行動で、みんなを楽しませる。確かに、それはマサさんの強みだった。
:なんか落ち着くw
:渋いのにクセになる声
:ニヤも楽しそうで草
最後のフレーズを歌い終えると、マサさんは軽く息をついてマイクを下ろした。
スタジオには拍手と笑いが広がり、コメント欄もまだざわめいている。
「ふぅ……まあ、こんな感じだな」
「渋すぎて逆に盛り上がりましたよ!」
:ギャップにやられた!
:声がクセになる
「ははっ、それは良かったよ」
マサさんは照れくさそうに笑いながら、マイクをユイトへ差し出す。
「さて……次はユイトだ。今度はお前の良さを、みんなにちゃんと見せてやれ! 今のところは、見せれてないからな」
「それを言うな……」
:ユイトの番きたーー!
:罰ゲームの後だから余計に期待w
:ここで挽回できるか!?
イントロが流れ始める。ユイトは真剣な顔で立ち上がり、深呼吸をしてから口を開いた。
「----、---♪」
その歌声は少し不安定で、音程が揺れていた。けれど、真剣に歌おうとする気持ちは伝わってくる。
スタジオの空気は笑いと応援が入り混じり、みんながユイトを見守っていた。
:音程迷子w
:でも頑張ってるの伝わる
:ユイト、応援したくなるタイプだな
:がんばれ!
音程が外れても、少し躓いたとしても、ユイトさんは一度も止まることなく歌い続けていた。
もしかしたら、カッコよくないと言う人がいるかもしれないけど、僕にとっては今のユイトさんは誰よりもカッコよく見えた。
:いいぞ! あと少しだ!
:がんばれ!
:俺はお前の良さをわかってるぞ!
最後のフレーズを歌い切ると、ユイトさんは大きく息を吐いてマイクを下ろした。
その顔には、どこか達成感のような笑みが浮かんでいた。
「……ふぅ、なんとか最後まで歌えたな」
「止まらずに歌い切ったのはすごいですよ!」
「ユイト、意外と根性あるにゃ!」
:がんばった!
:チャンネル登録者したぞ!
:高評価もな!
タジオは拍手と笑いに包まれ、コメント欄も温かい言葉で溢れていた。
ユイトさんは照れくさそうに頭を下げながら、マイクを僕へと差し出す。
「……次はユイの番だ。確か、ノアと初コラボの時に歌ってたよな」
「うん、あれ以来配信で歌ってないけどね」
ユイは少し緊張した様子でマイクを受け取ると、静かに立ち上がった。
「じゃあ……久しぶりに歌うね!」
イントロが流れ始める。柔らかいメロディに合わせて、ユイの澄んだ声がスタジオに響いた。
「----、---♪」
その歌声は透明で、まるで夜空に浮かぶ星のようにきらめいていた。
ニヤもマサさんも思わず聞き入ってしまい、ユイトは感心したように頷いている。
:声が綺麗すぎる
:癒やされる……
:ユイの歌もっと聞きたい!
サビに入ると、ユイの声はさらに伸びやかになり、スタジオ全体を包み込んだ。
笑いに満ちていた空気が、今は静かな感動へと変わっていく。
「……やっぱりユイはすごいな」
「透き通る声ってこういうことを言うんですね」
歌い終えたユイは、少し照れくさそうに笑いながらマイクを下ろした。
「……久しぶりに歌ったけど、やっぱり緊張するね」
「いや、すごかったよ」
「ユイの声で空気が変わったな」
「癒やし枠ってこういうことだにゃ」
:もっと聞きたい!
:ユイの歌枠希望!
:感動した……
スタジオは拍手と温かいコメントで満たされ、ユイは安心したように息を吐いた。
そして、マイクは僕の手に渡される。
「よかった。それじゃあ――」
「うん……最後は僕の番だね」
歌は本当に凄い。
感動も、呪詛も、怒りも、悲しみも、喜びも、嬉しさも――すべてを包み込んで、声に乗せて届けることができる。
だからこそ、僕はこの歌に、今まで抱えてきた想いを全部込める。
静かに目を閉じる。
手のひらが汗で濡れているのがわかる。
イントロが流れ始め、心臓の鼓動がリズムに重なる。
――もう逃げない。
僕はマイクを握りしめ、声を放った。
――――憎んだ星 夜空に散る光
傲慢な輝き 僕を見ないまま
裏切りの影 胸を裂く記憶
手のひらの未来 砂に溶けていく
守るものはなく 荒野に立ち尽くす
叫んだ声は 風に消えていく
過去の刃が 心を切り裂き
光は零れ 闇に染まっていく
優しさなんて 嘘と裏切り
信じるものは 何もない
星よ堕ちろ 夜を壊して
光をすべて 闇に沈め
でも それだけじゃなかった
弱さは強さ 間違いは証
荒野にいても 闇じゃない
僕の側に 灯る炎がある
狼は走り 猫は鳴く
月夜は僕を包み
孤独の中で 命が歌う
暗い夜空で 星が瞬く
地にいる僕は 空を見上げる
星よ昇れ 夜を染めて
僕の光は ここにある――――
最後の言葉を吐き出した瞬間、スタジオは静まり返った。
コメント欄も、一瞬だけ止まる。
――誰もが、息を呑んでいた。
そして、ゆっくりと拍手が広がる。
画面には「888888」が溢れ、コメント欄が感動の言葉で埋め尽くされていく。
:鳥肌立った
:ユイの時とは違う感動
:感情が凄くこもってた
:これ、配信で聴けてよかった
:泣きそうになったんだが
僕はマイクを下ろし、深く息を吐いた。
胸の奥に絡みついていた暗いものが、音に溶けて消えていく。
今は、霧が晴れて朝日が差し込むように、すがすがしい気分だった。
「……すごかったよ。本当に」
ユイが微笑みながら言う。その声に、僕は小さく頷いた。
ニヤさんも、マサさんも、ユイトさんも、満足そうに笑っている。
「これで配信の締めは完璧だにゃ!」
ニヤが両手を広げて叫ぶと、コメント欄が再び賑やかになる。
:最高の締めだった
:感動した、ありがとう
:今日の配信、神回すぎる
「じゃあ、そろそろ終わりにしよっか」
ユイが優しく言う。僕は深呼吸をして、画面に向かって笑顔を作った。
「最後まで見てくれてありがとう。みんなのおかげで、ここまで歌えたよ」
「また次の配信で会おうにゃ!」
「俺も、今日みたいな楽しい時間をまた作りたいな」
拍手と笑い声がスタジオに広がり、コメント欄は感謝の言葉で埋め尽くされる。
僕はもう一度、深く頭を下げた。
――こうして、長い夜は静かに幕を閉じた。
【大型コラボ!】三期生のみんなで、スタジオで色々するよ!
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これにて、第三章「朝霧ノア」が終わります。
ここまで読んでいただき、本当にありがとうございました!
この章では、ノアがやっと前に進むことが出来ました。
過去で、どのように傷つき、どのようにして今に至り、そして仲間と本当の意味で共に笑えるようになった――その過程を書けたと思います。
ここまで読んでくださった皆さん、本当にありがとうございました!
もしこの物語を楽しんでいただけたなら、ぜひ感想や星を残していただけると嬉しいです。
ここからは、番外編を数話挟んで、第四章「最愛の君へ」に入ります。
次の章では、この章で登場することが出来なかったコウジや社長も登場しますし、ティアのような先輩たちもより多く登場します。
「最愛の君へ」――これは、誰が誰に向けて言ったことなのか。
そして、その言葉が物語をどう動かすのか。
どうぞ、お楽しみに!




