僕の初配信2
「それでは、三問目に行きます。ここからは難しいそうですよ」
:ついに本番か…!
:ここからが格付けチェックの醍醐味
:ユイトがまた外す未来しか見えないw
:難問きたーー!
「三問目は、コウジ先輩と社長が作った……え? プロテインとカロリーメイト?」
「……え? 料理じゃなくて、プロテインとカロリーメイト?」
僕が思わず聞き返すと、スタジオにざわめきが広がった。
「社長、なんでここで栄養補助食品なのにゃ!」
「我は理解できない……」
「いや、むしろ理解したくない」
マサさんが真顔で突っ込む。
:料理から遠ざかってるwww
:プロテインとカロリーメイトって格付けするものなの?
:ユイトが絶対外す未来しか見えない
「ちなみに、コウジ先輩曰く『筋肉は裏切らない』だそうです」
「あの人、ほんとに筋肉ことしか頭の中に無いな!」
「社長曰く『間違えたら減俸』だそうです」
「ひ、ひどすぎるにゃ!」
:コウジは相変わらずだし、社長は社長だ……
:減俸はひでぇ
:なんかの法律に引っかかってそうw
「ちなみに、カロリーメイトの八割くらいは一期生のルミナ先輩とベオ先輩が作っており、社長はちょっとしか手を加えなかったそうです。……あ、これは企業秘密? まぁ、いいや」
「八割ルミナ先輩とベオ先輩って、ほぼ二人の作品にゃ!」
「社長は二割しか関わってないのに、減俸とか言ってるのか……」
マサさんが呆れたように肩をすくめる。
:おい!
:まぁ、社長って料理苦手だし……
:部下の手柄を自分の手柄にするな!
「それでは、食べていきましょう!」
テーブルの上には、シェイカーに入ったプロテインと、箱から出されたカロリーメイト。
どちらも見慣れた姿なのに、今は妙に緊張感を放っていた。
カロリーメイトを一口かじる。
チーズの香りがふわっと鼻腔をくすぐり、しっかりとした食感とクラッカーやチーズスナックに近い味わいが口の中に広がった。
けれど、特別美味しいわけでもなく、ただ普通に食べられる安心感があった。
「うーん、どっちかわからないね」
「市販の物と競えるってすごくないですか?」
「作ったのは、一期生の先輩たちだがな」
:それはそうw
:やっぱ、あの二人は凄いなぁ
「でも、左の方がちょっとだけおいしくね?」
「そうにゃね。なんか、右の方が八割ぐらいしかおいしさがないような気がするにゃ」
「八割って……」
:社長!
:なにやってんだ!
:凄い不憫だ……
:社長だから、仕方ない……
「ま、まぁ、プロテインの方を飲んで確かめてみましょうよ」
「そうだね、まだ決まったわけじゃ無いし……」
そうして、僕たちはプロテインを飲んでいく。
ただ、このプロテインは、そもそも別の味の物だったようで、比べることが出来なかった。
「……え、これ味違うじゃん!」
ユイが慌てて声を上げる。
「そもそも比べられないにゃ!」
「じゃあ、カロリーメイトでしか考察することが出来ないのか……」
「まぁ、答えはわかりきっていたが……」
:味がちげぇのかよ!
:ま、そうなるか……
:コウジって味という概念を持ってるか怪しいし……
「じゃあ、答えますよ。せーの!」
「「「「「右!」」」」」
「正解です!」
:おおー!
:おめでとー!
:社長が戦犯だろww
「残りは三問。今のところ、ユイトさん以外は全問正解ですが、これからどうなるのでしょうか? じゃあ、四問目。作ったのはティア先輩です」
:おおー!
:あのティアが作った? つまり、事務所に来たのか?
:いや、それはない
「ティア先輩は、家でお母さんと一緒に作り、お母さんが事務所まで持ってきてくれたようです」
「いや、そこは自分で持ってくるべきにゃ!」
:よかった。我らが誇る引きこもりは家から出てなかった!
:たしか、二十歳だったよな……
:お母さん、泣いてるぞ……
「そして、作ったのは、メロンパンです!」
:メロンパンってすごくね⁉
:ティアがパン作るとか意外すぎる
:そっか、親がパン屋をやってるんだった
「さっそく食べていきましょう」
僕たちの目の前に、二つのメロンパンが運ばれてくる。
テーブルに並べられた二つのメロンパンは、どちらも丸くてふっくらしていて、表面の網目も綺麗だった。
一見すると、どちらが手作りでどちらが市販なのか、まったくわからない。
「見た目はほぼ同じだね」
「にゃははっ、これは難問にゃ!」
「まずは、食べてみるか」
そうして、右の方に置いてあったメロンパンを口の中に入れる。
外側のクッキー生地がしっとりとしていて、甘さがやや強めだった。また、中のパンはふわっと柔らかく、口の中でほどけるように広がっていく。
「……うん、これは完成度が高いね。甘さもバランスが取れてる」
「確かに、市販の有名ベーカリーっぽい感じにゃ」
そして、左側のメロンパンを口の中に入れてみる。
左側のメロンパンは、右に比べると少し生地が重たく、甘さも控えめだった。外側のクッキー生地もサクッとはしているが、どちらの方がおいしいのかと聞かれると、間違いなく右側のメロンパンだった。
「ふっ、これは決まったな」
「確かに、俺でもわかる」
ユイトさんとマサさんは、これでどっちのメロンパンをティア先輩が作ったのか理解していたようだった。
でも……。
「あの……ティア先輩が作ったメロンパンの方がおいしいって可能性はありませんか? 市販のメロンパンもパン屋で売られている物だったら、違うかもしれませんけど、コンビニとかなら……」
「なるほど、それは一理あるにゃ!」
「確かに、コンビニのメロンパンなら完成度はそこまで高くないかもしれない。でも、ティア先輩が料理をするイメージがないんだよね……」
「確かに……」
:そっか。その可能性があるのか……
:まじで難問じゃん
:でも、ティアが自分の配信でパンを作った話なんてしたことないはず
:自分の配信でも、あまり話さないからなぁ
「うーん、どっちだろう?」
「もう、勘の領域だよね。これって。みんないい? 決まった?」
「ああ、我は決まった」
「にゃーも」
「俺も」
「僕も」
「よし、せーので言うよ。せーの!」
「「「右!」」」
「「左!」」
右のおいしいメロンパンを選んだのが、女子組。左のメロンパンを選んだのが男子組だった。
:きれいにわかれた!
:これって、どっちみち男子組詰んでね?
:確かに、ティアのパンはおいしくないって言ってるようなものだしな……
「あ」
「しまった」
「にゃははっ! ご愁傷さまにゃー!」
:男子組、地獄の可能性w
:ティア先輩に嫌われる未来しか見えない
:女子組が安全圏いるww
「それでは……正解を発表します!」
マネージャーの声に、スタジオの空気が一気に張り詰めた。
スタッフが札を掲げる。そこに書かれていたのは――。
「正解は……右です!」
:おおー!
:ティアって、パン作れるのか……
:男子組、どんまいwwww
「お、終わった」
「おつかれにゃ」
「へー、こんなにおいしいの作れるんですね。ティア先輩って」
:まぁ、それは意外だった
:ただの人見知りじゃなかったんだな
:ちょっと見直した
「それでは、五問目にいきましょう」




