一期生の二人4
そして、ラウンドが二十を超えて、敵がかなり強くなってきた。
ここに至るまで、ボクは何度か死んでしまい、そのたびにニヤさん達に助けて貰っていた。
弱武器になったティア先輩はともかく、ニヤさんやルミナ先輩は一度も死んでいない。
その安定感に、僕はただ驚かされるばかりだった。
「どうして、そこまで死なないんですか?」
「うーん。常に周りを警戒して、有利な位置を保っているからかにゃ。それと、単純に反射神経などもあると思うにゃ」
「確かに、ボクはゾンビに殴られてから移動するまで、どうしてもワンテンポ遅れてしまいます」
「それは、きっと慣れていないからだな。最初はみんなそんな感じだから、気にしなくていい」
「嘘つき。ルミナはどうせ、最初から出来てたはず」
「そうだが?」
ルミナ先輩はあっさりと認めてしまった。
:即答w
:やっぱりルミナは最初から化け物だったか
:ノアのワンテンポ遅れは初心者あるあるだから安心しろ
やっぱし、ルミナ先輩は天才皇女なんだなぁとしみじみと実感する。
でも、その称号を得るための努力は並外れたものであるはずだろうし、その努力があるからこそ、今もなお誰にも超えられてない壁になっているのだ。
ラウンド25
「よし、後五ラウンドにゃ。でも、油断してると負ける可能性があるから、しっかりと気を引き締めるにゃよ」
そして、いろいろなゾンビが、大量に襲ってくる。
ここに至るまでに何度も戦った、頭がTNTになっている爆発するゾンビ。カーディアンの頭をしたビームを出すゾンビ。
それ例外にも、さまざまなゾンビがおり、少し囲まれるだけでHPがかなり削られてしまう。
「っ……囲まれた!」
ボクは必死にショットガンを構えるが、四方から迫るゾンビに押し込まれてしまう。
「ノア、下がれ」
ルミナ先輩が前へ飛び出し、爆発ゾンビを一撃で吹き飛ばす。
その隙にニヤさんが、ボクを安全な位置へと押し戻した。
「位置取りを忘れるなにゃ! ゾンビの群れに突っ込むのは自殺行為にゃよ!」
ニヤさんの声が鋭く響く。
「……わかりました!」
ボクは息を整え、見渡しも良く、かといって背後からゾンビが湧くことも無い位置に移動する。ここでなら仲間の援護射撃も届きやすく、逃げ道も確保できる。
ラウンド26
このラウンドの敵は、オオカミの群れであり、体力こそ低い物の、一発一発が重く、素早くて当てる中々出来ない。
また、素早いせいで逃げようとしてもすぐに追いつかれ、瞬く間に死んでしまう。
だから、正面から戦うしか道は残されていなかった。
「まずっ」
オオカミに囲まれ、死にそうになった時――。
「その程度?」
ティア先輩の声は冷たく、しかし頼もしかった。
先輩の獣から放たれた弾丸は、全てオオカミたちに命中し、ボクの周囲に空白を作り出した。
「あ、ありがとうございました」
「……礼はいらない。あと、お祓いに行くべき。ベオも含めて、狼に好かれすぎ」
「ははは……」
そんなことを言われると、周囲のオオカミたちが莉緒さんのように見えて、かなりきつかった。
あの人のような性格の悪い人に周囲を核まれてしまうなんて、それこそ地獄のようであった。
「……まぁ、ベオが君のことを好く理由は理解できるけど」
ラウンド27
今度は、いつも通り少しだけ特殊なゾンビの群れ。
このラウンドでボクがピンチになることは無く、何の問題も無く切り抜けられた。
同じく、ラウンド28もゾンビが増えただけ。
これも、問題なく切り抜け、ラスト二ラウンドまでやって来た。
そして、ここからが大変だった。
ラウンド29
扉という扉から、窓という窓から、ゾンビが一斉に溢れ出した。
まるで街そのものが敵に変わったかのように、四方八方から呻き声が響き渡る。
「っ……囲まれた!」
ボクはショットガンを構えるが、数が多すぎて処理しきれない。
一体を吹き飛ばしても、すぐに二体、三体が押し寄せてくる。
一体一体の強さは変わってないけど、それでも難易度は格段に上がっている。
これの状況では、一つのミスが死につながっている。
そして、そんな状況に陥っているのはボクだけではない。むしろ、ボクよりもずっとピンチになっている人もいた。
「くっ……」
そうなるのも、当然だ。ティア先輩のゴールドディガーはまだ最大まで強化されておらず、ショットガンなどに比べると、一段落ちる。
だから、この物量をさばききることが出来ず、ショットガンのリロード時間という明確な隙が出来てしまってる。
なのに、ティア先輩はまだ生き残っていた。
ヒットアンドアウェイ。ティア先輩は、囲んでいるゾンビたちの隙間を見つけ、切り抜けていく。
しかも、ティア先輩にはルミナ先輩やニヤさんほどの技術は無く、常にミスしてしまう可能性もあり、選ぶことが出来る選択肢も少ない。なのに、ティア先輩はまだ生き延びていた。
「凄いな……」
自分のことで精一杯のはずなのに、ついそんなことを呟いてしまう。
それほどまでに、ティア先輩は自分の持つ全ての力を引き出していて、尊敬できるほど凄かった。
「ティア」
「……」
そして、今のような状況になることを予測していたのか、ルミナ先輩がいつの間にか移動していて、チームマシーンの前にまで辿り着いていた。そして――。
「今だ」
チームマシーンで出来ることは三つ。ダウンしている味方を全員蘇生させること。味方全員の弾薬を補充すること。最後に、周囲のモンスターを一瞬で倒すこと。
ティア先輩は、ルミナ先輩の呼びかけに気付くと、すぐに大量のゾンビを引き連れてチームマシーンの側に向かい、周囲のゾンビを一斉に倒した。
はたから見ると、決して阿吽の呼吸とは言えない二人。なのに、言葉をほとんど交わさずとも、お互いの考えていることを理解し合い、最高のコンビネーションを成し遂げていた。
「す、すごいにゃ。どうやったら、今みたいなコンビネーションが出来るのにゃ?」
それは、ニヤさんも思っていたようで、目を丸くして二人に問いかけていた。
「簡単だ。ティアの武器、実力、ラウンド数を理解しておけば、こうなることは想像できる」
「……私はそこまで予想してないけど、ルミナなら絶対に起死回生の一手を打つ。それは、必然のこと。疑う必要が無い」
;す、すげぇ
:ルミナは頭脳で、ティアは信頼で互いに理解し合ってるの良いよな
:たぶん、ベオもこの二人と理解し合っているんだろうな
:あまり仲良さそうに見えないけど、根本的に理解し合ってる一期生の関係は好き
そして、ラウンド30
やっと、最後までたどり着いた。
生まれてくるのは百体のゾンビたち。
一発一発が重く、数が多い。
「いくにゃよ!」
ニヤさんの掛け声と同時に、雷が落ちて、周囲のゾンビが倒れる。
それでも、まだ足りない。
「いけるか?」
「問題ない。私を舐めないで」
先輩たちは、二人で背を合わせて、周囲のゾンビを蹂躙している。
それを見てしまうと、後輩であるボクも負けれはいられないと思う。
常にゾンビに囲われているけど、ボクが持つ力を全て引き出して見せよう。
「ニヤさん!」
「にゃはは! やっぱし、にゃーたちも負けていられないにゃね!」
向こうは、頭脳と信頼で支え合うというのなら、ボクたちには絆がある。
まだ出会ってから、一か月くらいしかたっていないけど、絆には時間という物は関係なく、先輩たちにも負けない絆が――ボクたちをより上へと引き上げる。
「ラスト、三十体にゃ!」
それと同時に、ボスが現れた。
そのゾンビは、金の鎧を身に纏っていて、あのオオカミと勝るとも劣らない速度でボクたちに遅いかかる。
しかも、一撃の強さも、耐久力も、全部今まで戦ったどのゾンビより上なのだ。
「ボクが引きつけます。だから、後は任せました!」
最初にターゲットにされたのはボク。
だから、ボスを引き付けるのはボクの役目だし、いつまでたっても守られてばかりじゃダメだから。
『その程度?』
ラウンド26でオオカミたち囲まれたボクを助けたティア先輩が言った言葉。それはきっと、口下手な彼女なりの発破だったのだろう。
だから、ボクは守られてばかりではないということを――心配する必要は無いということを示さなければならない。
ボスの攻撃をギリギリでかわしながら、ボクは必死に走り回る。
背後からルミナ先輩の弾丸が鎧を砕き、ティア先輩の精密射撃が隙を突く。
ニヤさんは、その間残りのゾンビたちを蹂躙して、このボスが最後の一体になった。
(そうだ。《《僕》》は守られてばかりでは駄目なんだ。《《ボク》》は一人で立ち上がることができ、周りに手を差し伸べることが出来る人物じゃないといけないから)
そして、ボスのHPが残り少なくなる。
「ノアちゃん、最後の一撃は任せたにゃ!」
その言葉と同時に振り返り、ずっと準備してきた銃身を――ゾンビの額に突き付ける。
「じゃあね」
引き金を引く
放たれるのは無数の弾丸
その全てが額に吸い込まれ――敵を消却する
「勝った……?」
ボクの声は震えていた。
画面には大きく【勝利!】の文字が輝いている。
その瞬間、張り詰めていた空気が一気に解け、仲間たちの笑い声が響く。
「やったにゃ! クリアにゃ!」
ニヤさんが両手を挙げて喜ぶ。
「よくやったな」
ルミナ先輩の声は、いつも冷たかったけど、今だけは優しさのような温かみがあった。
「……ノアは、私の後輩だから、このくらいは当然」
ティア先輩は口では、そんなことを言ってるけど、今日初めてボクの名前を呼んで、ボクのことを認めていた。
:おおー!
:完全勝利!
:全員に見せ場があった!
:四人とも最高だ!
「ありがとうございます! みんなのおかげで成し遂げることが出来ました!」
「感謝なんてしなくていいにゃ! この勝利はノアちゃんもおかげでもあるから、もっと自分を誇ればいいにゃ! そして、もう時間だから、これで終わりにゃ。先輩方は最後に一言あるにゃ?」
ニヤさんがそう言うと、最初にルミナ先輩が口を開いた。
「今日初めて後輩たちと関わったのだが、やはり私の後輩だ。これからも辛いことがあるだろうが、歩み続けるがいい」
次に、ティア先輩。
「言葉は不要。ノア達は私の後輩、その事実だけでいい」
最後に。
「じゃあ、これでばいばいにゃー!」
「みなさん、ありがとうございました!」
【コラボ】あの一期生の二人のコラボする!
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