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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
朝霧ノア

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一期生の二人2

「あれ? ティア先輩はどこにいるにゃ?」


 そうして、真ん中の浮島に行こうとした時、ニヤさんがそんなことを呟いた。

 確かに、ルミナ先輩の動きに気を取られて、少しだけ目を離していて、ティア先輩を視界から外していた。

 なのに、その一瞬で――完全に見失っていた。


「ほんとだ。一体どこに……?」


 そう思って、辺りを見渡していると、青い羊毛で出来た不自然な橋があった。

 その橋は、ずっと先まで続いていて、緑のチームの浮島の裏まで繋がっていた。


「え? ティア先輩?」


 そこまで橋を伸ばすことが出来るのは、ティア先輩しかいない。

 ルミナ先輩は赤チームを攻めていて、ボクたちはそれを見ていたから。


「なに?」


 振り返った先、緑チームの浮島の影に――ティア先輩がいた。

 青い羊毛の橋を渡り切り、誰にも気づかれないまま、裏側に潜んでいたのだ。


:え、もう緑の裏にいるの!?

:ルミナが赤を潰してる間にこれかw

:何で気付かれてないの?

:ティア、ステルス型すぎる


「……今だ」

 

 ティア先輩が小さく呟いた瞬間、緑チームの一人が背後から落とされた。


 そして、同時に緑のチームのベッドがある浮島から敵がいなくなる。

 それは、今ティア先輩が落とした敵以外は、中央の島に向かって居たり、ダイヤモンドを取りに行っていたからだ。


「はぁ、なんで誰も私に気付かない?」


 ティア先輩は、そんなことを呟きながら、緑チームのベッドを落とした。

 その動きは、ルミナ先輩のような技術のごり押しでは無く、敵の視線を外し、隙を突き、確実に仕留める――静かな狩人のようなものだった。


:おおー!

:一期生たち凄すぎだろw

:もう少ししゃべれば、影が薄くならないと思うよ……


「遺憾。私は目立ってる」

「そんなわけないにゃ」


:うん、目立ってない

:配信で影が薄いのはまだ理解できるけど、ゲームの中でも影薄いのはバクなんよw

:てか、自分で自分のことを陰キャって言ってるだろw


「そんなことより、後輩より仕事したから帰っていい?」

「ダメに決まっているだろ」


 ティア先輩がそんなことを呟くと、一瞬でルミナ先輩が釘を刺した。さすが一期生とでも言うべきなのか、互いにどんなことを考えているのかわかっているようで、そのやり取りは、まるで長年の呼吸のように自然だった。


:#帰るなティア

:相変わらずコラボ嫌いなんだな

:だから、友達いないんだよw


「さぁ、先輩たちに負けないように、にゃーたちも戦うにゃよ」

「そうですね。まずは、どこから責めますか?」

「そうにゃね……緑チームは残機が無くて目立った動きはしにくいし、赤リームはルミナ先輩が制圧してくれたから、黄色チームを攻めるにゃよ。とは言え、防御を固める時間は十分あったから、まずは中央の島でエメラルドを集めるにゃ」

 

 ニヤさんが中央に向かって橋を伸ばしていく。

 中央の浮島には、一定時間ごとにエメラルドが湧いてくる場所が二つもあり、このエメラルドを集めれば、透明化のポーションなどのかなり強いアイテムを手に入れることが出来る。


「エメラルドを手に入れるってことは、にゃーたちの強化にもなるけれど、それと同時に敵が強いアイテムを手に入れることが出来ないということを意味しているにゃ。だから、かなり重要なことにゃよ」

 

 ニヤさんが、エメラルドを集めることの重要性を教えてくれる。

 確かに、敵に湧き場所がこの浮島にしかない以上、この浮島を制圧してしまえば、敵は一生強いアイテムを手に入れることが出来ず、一気に逆転できるような武器を手に入れることが出来ない。

 ――逆を言えば、どれだけボクたちが有利な状況でも、エメラルドを敵に取られてしまえば、一瞬の隙を突かれて逆転されてしまうかもしれない。


 橋を伸ばし終えた瞬間、黄色チームの影が視界に入った。

 彼らもまた、エメラルドを狙って中央へと進軍してきていたのだ。


:お、黄色も来た!

:ここからが本番だな

:ニヤはともかく、ノアは初心者だからどうだろう?

 

「ノアちゃん、落ち着くにゃ。にゃーが二人を足止めするから、残り一人をよろしくにゃ」

 

 ニヤさんが短く指示を飛ばす。


「……はい!」

 

 僕は剣を握り直し、目の前の敵に向かって踏み込んだ。

 指が震えていたけれど、それでも一歩を踏み出す。


:ノアいけ!

:初心者でもやるしかないぞ

:ここで経験積めば強くなる


 このコラボが始まる前、少しだけニヤさんにアドバイスを貰った。

 それは、エイムを合わせることと、WSADを使って、相手に狙いをあわされないようにすること。

 ボクは、PVPをするのが初めてであり、今から伸ばすことが出来る連打力なんて、誤差程度にすら届かない。

 けれど、エイムや立ち回りというのは、連打力に比べたら伸ばしやすいことであり、工夫次第で勝敗を左右できる。

 

 ボクは必死にマウスを動かし、敵の動きを追い続けた。

 WSADを細かく入力し、左右に揺さぶりながら、狙いを外させる。


:おお、避けた!

:ノア、ちゃんと動けてるぞ

:初心者なのに成長早すぎw


 本物のpvp勢の人が見たら、鼻で笑われるような動きかもしれない。けれど、今この瞬間の戦いでは、確実に役に立った。

 WSADを使って、相手を攻撃を躱し、時にはキーから手を放すことによって、一方的に攻撃できる場所を保っていく。

 

:おお! ガチで勝てそう

:PVPが初めてなのに、よくやるな

:これで初心者は無理があるw


 そして――。


「よし、勝った!」


 相手を倒した瞬間、胸の奥が熱くなって、思わず声を上げてしまう。


:ノアやった!

:初キルおめでとう!

:これで初心者は卒業だなw


「ノアちゃん、おめでとうにゃ!」


 しれっと、二対一の状況で敵を圧倒したニヤさんが祝福してくれる。


「ああ、初めての戦闘で敵を倒すのは凄いことだ。自信を持つといい」

「ふん……私が数年前に通り過ぎたこと」


:ルミナも褒めてくれてる

:ティア……始めた時期が違うんだから無理があるぞ

:協調性を対価にした極度の負けず嫌いだから仕方がない

:人見知りと負けず嫌いって共存するんだ……

:ネット弁慶を体現している人だから…


 この戦いの間に赤チームだけでなく緑チームも壊滅させたルミナ先輩も褒めてくれたし、人見知りであり自分からしゃべることが無いティア先輩も不器用ながら認めてくれて――胸の奥がじんわりと熱くなる。

 ほんの少しだけど、ボクはこのチームの一員として認められたような気がした。


:ノア成長してるな

:一期生に褒められるのはデカいぞ

:ティアの言い方がツンデレすぎるw


「うーん。にゃーだけ何も凄いことしてないにゃね。じゃあ、一個凄いことをするかにゃ」

「え? 二対一を圧倒するのは凄いことだと思いますけど」


 ボクがそう返すと、ニヤ先輩はにやりと笑った。


「そんなのは朝飯前にゃよ。今からするのは、すっごく派手で、華があるプレイなのにゃ」


:凄いことって何?

:さっきのでも十分凄いことだったのに


「さぁ、見て驚くにゃ! 芸術ってのは、爆発なのにゃから!」


 その言葉と同時に、ニヤさんの足元が爆発した。

 ニヤさんが使ったファイヤーボールという物が原因であり、それの効果はブルックにぶつかった時に爆発するという物。

 本来のは、浮島と浮島の間を繋ぐ橋に向かって投げる物であり、その爆発を持って橋の上にいる敵を奈落へと落とす物であったのだが、あろうことかニヤさんは自分の足元に投げたのだ。


「なにをして――!」


 その時、ニヤさんが何をしようとしていたのかを理解した。

 ニヤさんは、そのファイヤーボールの爆風に乗って、勢いよく飛んでおり、黄色チームの浮島まで到達した。

 でも、そこにはまだ敵がいて、二対一や爆発の影響で体力を削られているニヤさんにはきついはず。


「にゃはは! やっぱ、爆発は最高にゃね!」


 ただ、ニヤさんはそれで止まらなかった。黄色チームの浮島に辿り着いた途端、ベッドを囲むブロックの上にTNTを置いて、目にもとまらぬスピードでその爆発の範囲内から逃げる。

 

 そして……轟音と共に、黄色チームのベッドを覆っていた防御ブロックが吹き飛んだ。

 爆炎の中から姿を現したニヤ先輩は、迷うことなくベッドを叩き壊す。


:ベッド破壊きたあああ!

:一人でやり切ったw

:一期生とニヤで、それぞれ一つずつのチームを壊滅させてるw

:壊滅、これにて完成!


「すごい……」


 それは、ちょっとのミスで失敗するような動きだった。

 ファイヤーボールを投げる角度にジャンプをするタイミングなど、ちょっとのずれで奈落に落ちてしまうかもしれないし、浮島に辿り着いた後も、少しでももたついてしまうと、敵に倒されてTNTを置くことすら出来なかっただろう。

 それでも、成功させたのは、ニヤさんの実力だ。


「にゃはは! これで、にゃーも先輩たちに引けを取らないことを示せたにゃ!」


:ニヤかっこよすぎw

:一期生に並んだ瞬間だな

:これで後輩組も存在感出てきたぞ!


「ほう、やるな」

「……」


:ルミナが認めた!

:ティア、少しくらいしゃべってよ!

:負けず嫌いだから、仕方がない


 そうして、残った人たちを、順調に倒して言って、最初の試合は無事勝利で終わらすことが出来た。

 一試合目では、先輩やニヤさんの凄さを身近で感じることができ、そして――ボクもその背中を追いかけたいと強く思った。




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