相談とサプライズ
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ベオ・オーリス
いいじゃないか! 先輩とのコラボ、大成功だよ!
じゃあ、次はボクとコラボしないかい?
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朝霧ノア
お断りします
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さぁ、これからどうしようか。
シュウ先輩は、僕にヒナタ先輩とコラボするのをお勧めしてきたけど、あの人って明るい人で、性格が正反対だから、自分から関わって行こうとは思えない。けれど、シュウ先輩が進めて来たってことは、きっとそうしたほうがいいってことなんだろう。
「ただ、コラボばかりってのもあれだしなぁ」
最近は、もちろん個人配信もしているが、コラボすることが多くなっている。別に悪いことでは無いんだけど、このままだと他人ばかりに頼っていて、自分の力が付かないかもしれない。
でも、三期生の課題として、先輩たちに関わっていかないといけないから、コラボをするべきなのかもしれない。
うーん、誰かに相談したらいいんだろうけど、同期たちは同じ問題を抱えているだろうし、莉緒さんには相談したくない。誰か、良い人がいないだろうか。
「あっ」
なんで忘れていたんだろう。いい人がいるじゃないか。
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朝霧ノア
すみません。相談したいことがあるんですけど
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浅神シュウ
いいわよ。お姉ちゃんに任せて
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こういう時に、シュウ先輩は頼りになる。
『それで、相談したいこととは何かしら』
「最近、コラボばかりになっていて……自分の力が付いていないんじゃないかって、不安なんです」
『なるほどね。三期生の課題もあるし、先輩と関わるのは大事。でも、ノアはちゃんと自分のことも考えてるのね』
僕が連絡すると、すぐに電話を掛かってきて、シュウ先輩が相談に乗ってくれた。
急に連絡したから、もう少し時間が掛かったのかもしれないと思っていたけど、でも、シュウ先輩はすぐに応えてくれた。
『ノアが悩んでるなら、待たせる理由なんてないもの。お姉ちゃんはいつでも聞く準備ができてるわ』
「……ありがとうございます」
『それでね、コラボが多いって話だけど、そこまで気にする必要は無いと思うわよ。ノアちゃんのチャンネルを見たけれど、しっかりと個人配信にも人が集まっているし、今は他の三期生も先輩とコラボしているから、多少コラボが増えたとしても視聴者の人たちは気にしないと思うわ』
「そうでしょうか……?」
『そうよ。それに、コラボを増やすからと言って、個人配信をしなくなるってわけではないでしょう? 頻度が少し低くなっても、個人配信をする限り大丈夫だと思うわ。……まぁ、このコラボ頻度をずっと続けていくのはさすがに駄目だけどね』
「……なるほど。確かに、個人配信を続けている限りは大丈夫ですね」
『そうよ。ノアは真面目だから心配しすぎちゃうのね。でも、視聴者はノアが楽しそうにしている姿を見たいの。だから、コラボでも個人でも、ノアが自分らしくいられることが一番大事』
「ありがとうございます。これで自信が持てました」
『役に立ったのならば良かったわ。……あと、次のコラボ、わたしが決めていいかしら?』
「いいですけど、何をするつもりなんですか?」
『ふふっ、秘密よ」
シュウ先輩は、そう言って電話を切った。
最後に言い残した言葉のせいで、少しだけ胸がざわめいているけれど、シュウ先輩のことだから、きっといい方向に向くはずだ。
けれど、やっぱり気になる。
次のコラボをシュウ先輩が決める――それは安心でもあり、不安でもあった。
「……一体、誰となんだろう」
考えれば考えるほど、答えは出ない。ヒナタ先輩かもしれないし、まったく予想外の人かもしれない。
でも、シュウ先輩が選んだのなら、きっと意味があるはずだ。
胸のざわめきは、少しずつ期待へと変わっていく。
次の挑戦が、僕にどんな自分を見せてくれるのか――それを知るのが、今は楽しみだった。
それは、予想外の人物だったけど。
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そうして、学校に行ったりして、いつも通りの時間を過ごしていた。
相変わらず、僕はずっと一人だったけど、ユイという友達が出来たおかげなのか、心がいつもより軽かった。
まぁ、心が軽くなっただけで、それ以外は何も変わっていないんだけどね。
そして放課後。
スマホに届いた通知を見て、僕は思わず息を呑んだ。
そこに表示されていた名前は、まさかと思うような人物――いや、人物たちだったから。
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日南田ヒナタ
コラボだー!
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大塚ツバサ
やっと、やっと真面な女性と関われる!
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月夜ユイ
ノアちゃん大丈夫? ↑二人と話せるかな?
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「……え、三人同時?」
画面を見つめながら、思わず声が漏れる。
ヒナタ先輩の勢いあるメッセージ、ツバサ先輩の妙に必死な言葉、そしてユイの心配そうな一文。
それらが並んでいるだけで、胸の鼓動が早くなる。
まさか、こんな組み合わせになるなんて。
シュウ先輩が秘密と言った理由が、ようやく分かった気がした。
「……シュウお姉ちゃん、やってくれたね」
別に嫌なわけじゃない。ユイが一緒にいてくれるから、心細さは半分くらいに減っていた。
それでも、ヒナタ先輩の明るさとツバサ先輩の勢いに、自分が押し流されてしまうんじゃないかという不安は残っている。
「……でも、挑戦するしかないよな」
このコラボを乗り越えることが出来たら、自信を持てるようになるのかもしれない。
シュウ先輩も、きっと僕に自信を持ってもらうために、このコラボ相手を選んだのだろう。
小さく呟いて、スマホを握りしめる。
逃げるわけにはいかない。
胸の鼓動は早いままだけど、少しずつ期待へと変わっていく。
次のコラボで、自分がどんな姿を見せられるのか――それを確かめる時が来たのだ。




