表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生したぼっちJK、Vtuberで人生逆転中  作者: 月星 星那
第一章 月夜ユイ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

6/51

コラボの誘い

 初配信から二週間がたった。あれからは、雑談したり、最近流行っている雑談しながら出来るゲームをして、配信をしている。

 だけど、配信を切ったあとに残るのは、ほんの少しの不安だった。


「……これでよかったのかな」


 初配信してから、今までしてきたのは雑談だけ。それでも、ファンの人たちは見てきてくれているし、コメント欄はいつも温かい。

 けれど、心のどこかで「このままでいいのかな」と問いかけてしまう。


 同期はゲーム配信や歌枠に挑戦していて、切り抜きも少しずつ広まっている。

 それに比べて、自分はただ話しているだけ。

 雑談しかできない子って思われてないだろうか、ファンのみんなが笑顔になってくれているのだろうか――そんな不安が、配信を切ったあとに胸の奥でじわりと広がる。


 机の上に置いたマイクを見つめながら、ノアは小さく息を吐いた。


「どうしようかな」


 新しいことを始めたからと言って、僕が生まれ変わるわけではない。立派な人たちは、下を向いている時間が短く、立ち止まらずに新しいことに挑戦していっている。

 それは、とても怖いことで、簡単に出来ることでは無いけれど、 ――それでも、挑戦しなければ何も変わらない。


「僕だって……少しずつでも、前に進みたい」


 口に出した言葉は、思った以上に震えていた。

 けれど、その震えの奥には、確かに小さな決意が宿っている。


 灯火のみんなが笑ってくれるなら。

 不器用でも、ぎこちなくても、挑戦する姿を見せたい。


 ノアはマイクにそっと触れ、深く息を吸い込んだ。

 

「……次の配信で、ちょっとだけ新しいことをやってみようかな」


 そう呟いた瞬間だった。


 机の上に置いてある、配信用のPCがピコンと音を立てて、一通のメッセージが届いた。


【月夜ユイ】

 ねぇ、今度コラボしない?


 それは、僕と同じ三期生――同期からのコラボの誘いだった。

 画面に浮かぶ短いメッセージを見つめて、僕はしばらく固まってしまう。


「……コラボ、か」


 頭の中で何度もその言葉を繰り返す。怖い、失敗したらどうしよう。会話が続かなかったらどうしよう。

 けれど――これは、さっき自分が願った“新しい一歩”そのものじゃないか。


 ノアは震える指先でキーボードに触れた。

 返事を打つまでに、ほんの数秒が永遠のように長く感じられる。


【朝霧ノア】

 ……うん。ぜひ、やろう。


 送信ボタンを押した瞬間、胸の奥に小さな火が灯った気がした。

 それは、不安よりも少しだけ大きな、期待の光だった。


 ――――――――――――――――――――――――――――

 月夜ユイ――これが、Vtuberとしての私の名前。


 私がVtuberになった理由は、褒められたものじゃない。ただ単に、私のことを見てほしかっただけ。

 みんなを笑顔にしたいとか、夢を叶えたいからとかの立派な理由じゃなく、とっても身勝手で醜悪な願い。


 私は、生まれたからずっと、一人の例外を除いて、褒められたことが無かった。それは……私よりもずっと立派で、才能があった姉がいたから。

 そのせいで、親からも、先生からも、友達すらも、姉と私を比べては「あの人の妹なのに」と失望してくる。

 私は私なんだから、姉と比べられる筋合いなんてない。

 そう言い返したかった。でも、口に出す勇気はなかった。

 反論したところで、誰も耳を傾けてくれないと知っていたから。


 さらに悪いことに、私は姉のことを憎めなかった。それは、唯一褒めてくれる人が、姉だったから。

 一体どんな皮肉なんだろうか。唯一褒めてくれる人が、すべての原因だなんて。

 私は、姉のことが嫌いで、関わりたくなくて、どうしようもなく――好きだった。


 だけど、その姉はもういない。


 一年前、交通事故で姉が死んだ。それも、私を庇って。

 それからの私の人生は、より最悪なほうへと転落していく。

 

『なんで、アンタじゃなかったの』

『あの子もかわいそうに。あれだけ才能があったのに、生き残ったのは妹の方だなんて』

 

 直接言われた言葉、裏で言われた言葉、どれも鋭い刃のように胸に突き刺さった。

 私は生きているだけで、誰かを傷つけてしまう存在なのだと、何度も思い知らされた。

 生きているだけで、心が傷ついていく。だけど、それを慰めてくれる姉はもういない。


 だから、私は――インターネットに逃げて来た。

 目的もない。ただただ、ここでなら私の居場所があるのかなと思って。


 最初はうまくいった。企業勢だったということもあり、初配信では人が集まった。

 だけど、そもそも逃げてVtuberになったんだ。そこからはうまく伸びず、気づけば同期の中で一番下になっていた。


 そして、数字ばかりを気にするようになっていく。

 登録者数、同接、切り抜きの再生回数。

 同期の名前が話題に上がるたびに、胸の奥がざわついて、「どうして私はダメなんだろう」と自分を責め続けた。


 でも、自分を責めたところで、何も分からない。むしろ、どんどん差をつけられていく。

 現実世界でも、インターネットの世界でも、私の居場所がなくなってしまうのかと思うと、胸が握り潰されたような錯覚を覚えてしまう。

 だから――

 

 【月夜ユイ】

 ねぇ、今度コラボしない?


 同期に頼ることにした。

 コラボをすれば、新たな視聴者に私の存在を知らせることが出来るかもしれないし、何なら同期の視聴者を奪うことが出来るかもしれない。

 そのために、人見知りだと配信中で言っていた子を選んだ。この子なら、私でも視聴者を奪えるかもしれない。


 こんな醜悪な考えをしている自分に反吐が立つ。

 どうして、こんな私になってしまったのだろうか。どうして、こうでもしないと生きられなくなってしまったのだろうか。

 どうか許してほしい。


「私は……どうすればいいのかな? 姉さん」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ