表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
朝霧ノア

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

53/120

連絡

「えー、こういうことですので、この問題の答えは……」


 あれから、何事も無く授業は進んでいった。

 先生は、ホワイトボードに数式を書き込んでいき、生徒たちもそれをノートに書きこんでいく。


(はぁ、今日は集中できない)


 いつもは、集中して授業を聞くことが出来ていたはずなのに、今朝見た夢のせいで、それが出来なくなってしまっていた。

 こうなってしまったら仕方がない。休み時間や家で、しっかりと復習をしよう。

 

「……ということで、今日はここまで、ちゃんと復習しておくように」


 そんなことを考えていると、気づけば授業が終わっていて、周りのクラスメイトたちは友達同士で集まっていた。

 笑い声や雑談があちこちから飛び交い、教室は一気に賑やかさを取り戻す。

 その輪の中に入ることができない僕は、教科書を数ページだけ戻して、授業の復讐を始めていった。


(僕には関係ないことだ。たとえ、一人だったとしても……この毎日は充実している)


 ただ虚しくなるだけかもしれないけれど、僕はそう考えて自習を続けていった。

 ページをめくる音だけが、僕の机の周りに響いていく。

 隣の席からは楽しそうな笑い声が漏れてくる。

 その声を聞くたびに、胸の奥の空洞が少しずつ広がっていくような気がした。


 そんな時――ポケットの中のスマートフォンが震え、通知の着信を告げた。


(ん? 何だろう? おじいちゃんからかな?)


 そう思いながら、スマホを開くと、予想外の人からの連絡が来た。


 ――――――――――――――――――――――

 ベオ・オーリス

 今日、事務所に来れる?

 ――――――――――――――――――――――


「えっ⁉」


 莉緒さんからの連絡に、つい大声を上げてしまう。

 

「え? 今のって誰の声?」「氷室じゃない?」「氷室って誰?」「いつも、自分の席に座ってるあの人」「へぇ、大きな声出せるんだ」


 周囲の視線が一斉に集まってきた。

 普段は誰も気に留めないはずなのに、今だけは僕が教室の中心にいるような錯覚を覚える。

 けれど、それは居心地の良いものではなく、ただ胸の奥をざわつかせるだけだった。


(最悪、注目されたくなかったのに。それに、事務所に来てってどういうこと? あの人のことだから、碌なことじゃないでしょ)


 僕にとって、莉緒さんは警戒すべき人物であり、決して気を許してはいけない相手だった。

 その人からの「事務所に来れる?」という一文は、ただの呼びかけではなく、何か裏があるようにしか思えない。


(……無視した方がいいのかな。でも、もし行かなかったら……)


 それでも、莉緒さんは偉大な先輩であり、言うことを聞かないのは失礼になる。


(……やっぱり行くべきなのか。いや、でも……)


 心臓の鼓動が速くなる。

 スマホの画面に映る短い文字列が、まるで試練のように僕を見つめ返していた。

 断れば、失礼になる。

 応じれば、何かに巻き込まれるかもしれない。


(はぁ、気が進まない)


 ――――――――――――――――――

 朝霧ノア

 わかりました。学校が終わり次第向かいます

 ――――――――――――――――――

 ベオ・オーリス

 ありがとね

 お詫びになにかしてあげるから

 ――――――――――――――――――

 

 お詫びと言われても、碌なことじゃない気がする。

 それでも、言ってしまったことは仕方がない。ちゃんと、事務所に行かないと。


(はぁ、本当に憂鬱だ)


 ――――――――――――――――――――――――――――――


 ガタゴトガタゴト――電車が一定のリズムで揺れている。

 窓の外には、灰色の街並みが流れていく。

 周囲の乗客たちはスマホを見たり、友人と話したりしているが、僕はただ座席に身を沈めていた。


(それにしても、事務所に来てってどういうことなんだろう? 話すだけだと、前みたいに喫茶店とかでもいいはずなのに)


 莉緒さんが、何故事務所に呼んだのか。あれからずっと考えていたけど、結局答えは出なかった。

 ただ一つ言えるのは――喫茶店や通話ではなく、わざわざ事務所という場所を指定してきたこと。

 それは、きっと軽い話ではない。


 そう考えていると、事務所の最寄駅に着いた。

 電車のドアが開き、冷たい風が一気に車内へ流れ込んでくる。

 人の波に押されるようにホームへ降り立つと、胸の奥の不安がさらに重くなった。


(……本当に来ちゃったんだな)


 改札を抜けると、見慣れない街並みが広がっていた。

 ビルの影が長く伸び、午後の光はどこか灰色がかっている。

 事務所へ向かう道はわかっているはずなのに、足取りは自然と遅くなっていた。


「仕方がない。覚悟を決めよう」




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ