ニヤのRTA2
そうして、ニヤさんはフレイムを倒しながらスポナーに向かって行き、スポナーの側で何個かロットを集めた後、廃要塞で手に入れた黒曜石を使ってゲートを作り始めた。
けれど、少しだけ、いつもと異なる点がある。
「ボート?」
そう。ニヤさんはゲートで移動する直前に、一瞬だけボートに乗り降りしていて、その行動の意図が少しも理解できない。
それは視聴者も同じようで「ボート?」「何で⁉」などの言葉が流れている。
「やっぱし気になるにゃ?」
「はい、なんでこんなことをするのか全く分かりません」
「うーん、これも説明するのが難しいのにゃ……。ボート測量って言う方法なのにゃけど、アイがエンド要塞にある決まった一点にしか飛ばないという性質を利用して測量する方法なのにゃ。その正確さを高めるために、一度ボートに乗るってわけにゃよ。このゲームの仕様で一度ボートに乗ると、視点の向きの角度の少数第三位以下が全て0になって、綺麗な角度になるわけにゃ。こんなの、知らなくていいにゃ」
「……そんな仕様があるんですね。まさか、ボートに乗るだけで角度が綺麗になるなんて」
「そうにゃ。普通に遊んでる人はまず気づかないけど、RTAではこういう細かい仕様を全部利用するんだよ」
:ボート測量⁉
:初めて聞いたw
:角度が揃うとか意味わからんけどすごい
:わけわかんないw
「こんなの覚えなくてもいいにゃ。にゃーもよく理解してないし、海外勢の化け物たちに後は任せるのにゃ」
「そ、そうなんですね……」
このことに関しては、ニヤさんですら理解できていないようで、これ以上聞くことは出来なそうだった。
とは言っても、ボク自身も理解できる気がしないのだが。
「この後は、そのボート測量をしていくにゃよ」
そうして、ニヤさんは地上へ戻り、砂利とソウルサンドで位置を調整した後、アイを投げて、そこに拡大させた視界を合わせた。
「これで、エンド要塞の場所がわかったから、地獄の中で移動していくにゃ」
「それってパールを使ってですか?」
「そうにゃよ」
「でも、体力が危なくないですか?」
パールを投げるたびにダメージを受けていて、食料も残り少ない現状では、ドラゴン戦に備えるには心許ない。
でも、ニヤさんの返答は違った。
「大丈夫にゃよ。残り♡半分でもいいから、生き残ることさえできれば何の問題も無いにゃ。その理由は、これからわかるにゃよ」
そうして、映像のニヤさんは、躊躇わずにパールを投げて移動していき、指定された座標でゲートを作って現世に戻った。
その現世はエンド要塞の中の内部だった。
苔むした石の壁、暗がりに浮かぶ松明の光。しかも、この地点では六分五十六秒であり、常人が何時間もかけて達成することを七分も掛けずに達成していたのだ。
「あと、ここでも例のやつを使うにゃよ」
「例のやつ……? あっ、円グラフ!」
「そうにゃよ。これは埋もれた宝だけじゃなくて、スポナーとかも探すことが出来るのにゃ。だから、ポータルの位置もこれでわかるにゃよ」
「でも、要塞の中にはチェストもあって、そっちに反応したりしないんですか?」
ニヤさんの話が正しければ、スポナーだけでなく、チェストのことにも反応したはずだ。
だから、円グラフだけでその判別が出来るとは思えない。
「まぁ、反応はするけど、細かい数値が違ったり、慣れや運で判別するにゃよ。あと、今回はしなかったけど、廃要塞を探すときにも使ったりするにゃ」
「……すごく万能ですね」
ニヤさんは、円グラフで見つけたポータルへと走っていく。その間にも、モンスターたちに襲われるが、相手にすることはせず、通り過ぎていく。
そして、やっとポータルの位置へと辿り着いた。
「そして、ベッドでリスポーンした後、急いで死ぬにゃ」
「えっ……あ、それで全回復するんだ!」
「正解にゃ!」
ニヤさんは、それで全回復した後、アイをポータルに嵌めて、エンドの中に入って行った。
タイムは、七分二十五秒。
「さぁ、ここからが面白いとこにゃよ!」
ドラゴン戦が始まる。
「まず一度、映像を止めるにゃよ。ノアちゃんは、エンドでベッドを使うとどうなるか知ってるにゃ?」
「確か、爆発するんでしたっけ?」
「そうにゃ。だから、RTA勢はその爆発を利用してドラゴンを倒すのにゃ」
:ええっ⁉
:それ知ってる!
:有名の実況者グループがよくやってるやつ!
「でも、それだとドラゴンが降りてくるまで待たないといけなくて、さらに上のタイムを目指すらなら、そんな時間なんて無いにゃ。そんな時に使うのが、ゼロサイクルという難易度が高いベット爆破なのにゃ。じゃあ、再生していくにゃ」
そして、映像が動き出す。
エンドに入ったニアさんは即座にパールを投げていき、ドラゴンの近くにある黒曜石の棟に登って行った。
ワープした瞬間、足元にブロックを置き、そこから上へと積み上げていく。
「ここからは、決まった回数、決まった方向へと足場を伸ばしていくにゃ。そして――」
その先端に、黒曜石とベッドを置く。すると、丁度ドラゴンが近く――いや、そのすぐ上を飛び、旋回する。
「今にゃ!」
そして、ドラゴンの頭がベットの頭上を通る瞬間、ニヤさんはベッドを爆発させる。
その爆発で、ドラゴンの体力がごっそり削られ、ダイヤモンドの斧でも出せないようなダメージを与えていた。
「まだまだにゃ!」
そうして、ニヤさんはベッドを置く、爆破、置く、爆破、置く、爆破のサイクルをドラゴンの動きに合わせて繰り返していき、とうとうドラゴンの体力を全て削り切った。
「やったにゃ! 討伐完了にゃ!」
:すげええええええええ
:ベッド爆破でここまで削り切るのか…
:命知らずの戦法すぎて笑うw
ボクは思わず息を呑んだ。
危険すぎる戦法なのに、ニヤさんは一度も躊躇せず、正確に爆破を重ねていった。
その姿は、まるで死と隣り合わせの舞を踊るようで――ただただ圧倒されるしかなかった。
「す、すごいです! ニヤさん!」
「まだ喜ぶのは早いにゃよ。ポータルに入った時が記録に反映されるタイミングにゃから」
ニヤさんはボートを使って、安全に地面に降りていく。そして、ポータルに向かって走った時、視界の端でエンターマンが敵対しているのが見えた。
「あ、あぶない!」
「そうにゃ。このタイミングで殺されて、世界記録を逃した人もいるから、油断することが出来ないのにゃよ」
映像のニヤさんは、しっかり冷静に対処をして、死なずにポータルの中に入った。
タイムは八分二十六秒。常人では考えられないタイムをただき出して、ニヤさんは見事、走り切った。
:す、すげぇ
:おれ、ニヤのことを舐めてたよ
:これが、RTA、か
「さぁ。目標は示したにゃよ。ノアちゃんは、ここまで来れるかにゃ?」
言葉が喉で詰まる。圧倒的な走りを見せつけられて、胸が震えていた。
でも、憧憬には嘘を吐けない。
「はい! 何年かかっても、絶対にそこまで辿り着きます!」
:おお!
:応援するぞ!
:ノアちゃんの挑戦も見たい!
:ここからが本当の物語だな
チャット欄は熱気に包まれていた。
ボクの胸はまだ震えている。けれど、その震えは恐怖ではなく、確かな憧れと決意だった。
【ブロクラ】ニヤさんの記録を見る!
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再生回数40,321回
この話は、エンドラRTAランダムシードにおける旧日本記録の走りを参考にして構成されています。
その様子は、Youtubeにて公開されていますので、ぜひご覧ください。実際の走りを目にすることで、この物語に込めた臨場感や緊張感をさらに味わっていただけると思います。
また、この場を借りて、記録を打ち立てた走者の方に心からの敬意を表します。
その挑戦と努力があったからこそ、この物語にリアリティと熱を込めることができました。
そして、読んでくださる皆さまにも感謝いたします。
作品を通じて、挑戦することの楽しさや、限界を超えようとする人間の姿を少しでも感じていただけたなら幸いです。




