ニヤのRTA
「みんにゃー! こんばんにゃ! 今日は、ノアちゃんとコラボするにゃよ!」
「今日は、ニアさんのRTAで自己ベストを更新した時の映像を見させてもらいます」
:おおー!
:自己ベストって何分なんだ?
:そもそも、RTAって何?
「RTAってのはリアルタイムアタックの略にゃよ。この場合は、ワールドを生成してからドラゴンを倒すまでの時間を競うんだにゃ」
「ボクがしたら、一時間くらいかかる気がしますね」
:一時間は、普通の人から見れば早い方なんだよな
:世界記録ってどんくらい?
:六分五十秒
:化け物すぎだろw
「ちなみに、にゃーがしているのは、バージョン1.16のランダムシードにゃよ。ランダムシードってのは、ワールドがランダムに生成されて、どこに何があるのかがわからない状況で競うRTAにゃ。他にも、あらかじめ決まっているワールドで競うセットシードってのもあるにゃよ。そっちの世界記録は、バージョン1.20で一分十六秒にゃ」
「一分十六秒……? それはもう、別のゲームみたいですね」
「そうにゃね。ランダムとセットシードでは戦い方が全然違うんだにゃ」
:一分ってw
:どうやってそんなことできるんだよ
:ニアの記録も見たい!
「じゃあ、さっそく映像を流すにゃ! みんな、目を離しちゃダメだよ」
「はい……集中して見ます」
画面が切り替わり、緊張感の漂うRTAの映像が始まった。
最初、スポーンしたと同時に海が見えた。いや、そんなことよりも……
「何ですか? この円グラフは?」
「F3を押したら出てくる円グラフにゃよ」
「いや、そういう意味じゃなくて……」
:w
:この円グラフって何?
:なんだったっけ? 忘れた
:これで何してんの?
「実は、この円グラフのオレンジ色の部分を見て、埋もれた宝の場所を探しているにゃよ」
「埋もれた宝って、地図を使って探す奴ですよね」
「そうにゃよ。でも、この円グラフで埋もれた宝があるチャンク――16×16マスの場所がわかるにゃ。そして、埋もれた宝はチャンクの特定の場所にしか埋まってないから、こうやって地図無しでも見つけることができるにゃよ」
「……そんなことが出来るんですね」
:そんなことしてたんだ
:凄すぎだろw
:やっぱRTA勢は別格だな
チェストから資材を回収したニヤさんは、迷いなく地上へ戻る。
木を伐り、クラフト台を置き、道具を作る――その一連の動作は、まるで呼吸のように自然で、無駄が一切なかった。
気づけば、鉄のツルハシやバケツがすでに手元に揃っている。
視聴者が瞬きをしたその間に、準備はすべて整っていたのだ。
「……速すぎます。普通なら、ここまでで十分時間がかかるはずなのに」
「にゃはは、慣れれば手が勝手に動くんだにゃ」
:一瞬で揃ったw
:クラフトの速さが人間じゃない
:ここまでで何分経ってるんだ?
画面のタイマーは、まだ一分くらいだ。
ボクならば、この一分では作業台を作る程度のことしか出来ず、だ木材を集めている段階だろう。
けれど映像の中のニヤさんは、すでに鉄の道具を揃え、バケツまで手にしていた。
その差は、まるで別のゲームを遊んでいるかのようだった。
そうして、映像のニヤさんは海のまで潜っていく。
ボクは、何故海に潜っていくのか理解できなくて、思わずニヤさんに聞いてしまった。
「どうして、海に潜ったんですか? マグマだまりを探すんだと思ってましたけど」
「その理由は、もうすぐわかるにゃ」
画面に視線を戻すと、映像の中のニアさんは海の奥深く――海溝へと向かっていた。
そこには、黒曜石やマグマブロックがあり、その下にはきっと溶岩だまりがあるのだろう。
「まさか、ここでゲートを作るんですか?」
「そうにゃよ。ただ、地上と違って周りが水で覆われているから、かなり難易度が高いにゃよ」
ニヤさんは、そう言っていたが、ドアを使いながら瞬く間にゲートを作っていた。
その動きは、目に追えるようなものでは無く、何が起こったのかよくわからなかった。
「す、すごいですね……」
「練習すれば、ノアちゃんも出来るようになるにゃよ」
「そ、そうですね……」
こんな動きが出来るようになる未来が少しも見えないが、ニヤさんだって最初から出来ていたわけではない。そこには、血が滲むような訓練があったから、出来るようになっただけであり、ボクも努力を続けたらいずれ出来るようになるのだろう。……もっと、頑張らないと。
そうして、ニヤさんは地獄へと入る。その時間は、ワールドが生成されてからわずか一分半。
ゲートを抜けた瞬間、視界は赤黒い世界へと切り替わった。
燃え盛る炎、流れる溶岩、そして目の前に見える廃要塞。ニヤさんは、急いでそこに向かって行く。
「この廃要塞はハウジングにゃね」
「ハウジング?」
「そうにゃ。廃要塞の形は決まっていて、これはハウジングと呼ばれる形なのにゃ」
「形が決まっている……つまり、構造を覚えていれば、どこにチェストや金ブロックがあるかも分かるってことですか?」
「その通りにゃ。RTAではどの形かを一瞬で見抜いて、最短で目的地に向かうのが大事なんだにゃ」
:なるほど!
:形で分かるのか
:プロの知識すごいな
映像の中のニヤさんは、金装備を着ることも無く通路を迷うことなく駆け抜けていく。そして、上にあったチェストから必要なものを盗み、モンスターに追われながらも逃げ続けていた。
「あと、この場面はただ逃げているわけではないにゃよ」
「え? 逃げているだけではないんですか?」
そう聞き返すと、ニヤさんが丁寧に教えてくれた。
「そうにゃ。RTAにはパールを集めないといけないから、モンスターと交易する必要があるにゃよ。そして、その時間を最小限にするために、たくさんのモンスターが必要になるし、大量の金が必要になるにゃ。だから、金ブロックがある場所に誘導して、交易しながら金を手に入れていく必要があるにゃ」
実際に、モンスターに追われながらも金ブロックを壊していて、たくさんのアイテムがモンスターから出ていた。
でも、それ以上に気になったところがある。それは、左下にある文字出て来た文字だ。
そこには、アルファベットと数字があり、何かを示しているようだった。
「これは……?」
「それは、描写されているチャンクを変化させることで、要塞の位置を探しているにゃよ。にゃーは、説明が苦手だから、詳しい仕組みは言えないけれど、この方法を使えば要塞の位置を一瞬でわかるにゃ。ただ、かなり難しいにゃけどね」
「そんな方法があるんですね。走りまわって探すしかないと思ってました」
「さすがに、それは遅すぎるにゃよ。RTAでは、一秒一秒が大事なのにゃ」
そうして、ニヤさんはパールなどを大量に集め終え、パールを投げながら要塞の方へ向かって行く。
かなりの距離があったはずなのに、パールを使うことでたったの三十秒で辿り着く。
「さぁ、ここからはロット集めにゃよ!」




