ユイとリバーシ
「こんばんは、月夜ユイと」
「こんばんはー、朝霧ノアです」
:おおー!
:二人だけでのコラボは久しぶり?
:三週間くらい前だったけど、もうそんなに経ったのか
「あの時に比べたら、ノアちゃんは本当に成長したよね。もう人見知りは治ったんじゃない?」
「ほんとうですか? まぁ、直接会ったわけではない体と思いますけど……」
:確かにな……
:通話と実際に会うことは違うからな
:でも、事務所で誰かに会ったりしないの?
「事務所か……」
「あの人はね……」
:何この反応⁉︎
:絶対に先輩と会っただろ。しかも問題児の
:心当たりが多すぎる!
「うん。わたしたちは一期生のベオさんと会ったんだよね……」
「うん。あの狂狼と」
:wwwww
:よりによってそこかよ
:トップクラスにハズレじゃねぇかw
「あの人は、やっぱりあの人だったよ。しかも、ノアちゃんは気に入られちゃったから……」
「ほんとうに会いたくない……」
:wwww
:マジ⁉︎ 二期生は気に入られなかっただろ
:仲はいい(自称)だけど、期待してるとは一度も言って無いからな
:まぁ、二期生たちは期待なんてどうでもいいって、思ってそうだけどな
:だからこそ、期待してないのかも
「あの人の話はやめとく?」
「そうしましょう。配信が進まないし」
そうして、ボクたちは本来する予定だった物の準備をする。
「今日はこれ! リバーシでノアはちゃんと遊んでいくよ」
:おおー! リバーシきた!
:どっちが勝つんだろう?
:全く予想できない
「それじゃあ、始めよっか。絶対に勝つからね」
「そうですね。でも、勝つのはボクですから」
そうして、ボクたちは次々と石を置いていった。
盤面が黒と白に染まり、ひっくり返る音が軽快に響く。
序盤は、お互いにひっくり返していく石は少ない。それは、終盤で一気に勝つために、置くことが出来る場所を増やすため。
しかも、ひっくり返していく石は、隣接する石が多い物を優先的に選んでいき、出きるだけ相手に囲ませようとしている。
「考えていることは、同じなんだね」
「はい。でも、ユイさんには負けません」
:おおー!
:二人とも慎重すぎるw
:実力は同じくらいじゃね?
「ちなみに、何手先まで読んでるの?」
「三手ですね。これ以上は、出来ないので」
「うわ、わたしと同じだ。じゃあ、完全に五分五分だね」
盤面は黒と白が拮抗し、どちらも一歩も譲らない。
石を置くたびに、未来の可能性が広がり、互いの狙いを潰し合う。
角を取るタイミングを伺いながら、慎重に石を進めていく。
「ユイさんは、どのくらいリバーシをしてたんですか?」
「うーん、そんなにしてないよ。姉さんくらいしか戦ってくれる人もいなかったし、姉さんとは実力が離れていたせいで、毎回最後には一桁程度になってたから。ノアちゃんは?」
「ボクは、アプリ相手に何度も戦ってきましたよ」
「……なんか、ごめんね」
:ぼっちw
:ノアは解釈通りだけど、ユイも実質ぼっちなのかよw
:というか、どうしてぼっちなのに、リバーシが上手いんだよ
そんなことを話しながら、石を置いていくと、とうとう終盤へと差し掛かってきた。
「よし、角が取れた!」
「うっ。でも、こっちの角は取ったよ」
「えっ」
終盤に差し掛かっても、戦況は五分。
互いに、ミスをすることなく試合を続けていき、視聴者のみんなも固唾を呑んで見守っていた。
:角の取り合いで互角とか熱すぎる
:ノアちゃん、凄すぎだろ
:ユイも本気出してるのが分かる
そうして、次々と石を置いていく。
三つ目の角はボクが置くことが出来たのだが、四つめの角は取られてしまった。
これで、優劣の差は出来ておらず、まだ勝負の行方はわからない。
「……これで残り少しですね」
「うん。少しのミスで勝負が決まるよ」
盤面は黒と白が拮抗し、どちらも一歩も譲らない。
石を置くたびに、未来の可能性が広がり、互いの狙いを潰し合う。
そして残りは、ほんの数手。
「ノアちゃん、次の一手で勝敗が決まるかもしれないよ」
「……わかってます。だから、絶対に間違えません」
ユイが揺さぶりをかけてくるが、そんなことでは揺らがない。
置くことが出来る場所は残り四つ。盤面の白と黒はほぼ同数、長い沈黙のあと、ボクは迷いなく駒を置いた。黒が広がり、盤面が一瞬だけ傾く。
その光景に、ユイが小さく息を呑む。
「……やるね。でも、まだ手は残ってるから」
ユイもすぐに石を置き返す。白が盤面を覆い返し、再び拮抗状態へ。
残された手は、互いにあと一つ。
盤面の黒と白はほぼ同数――勝敗は、最後の一手に託される。
「これで、最後だね」
「そうですね、ボクの一手で全てが決まります」
ボク黒を置き、ユイが白を置く。
盤面は静かに止まり、黒と白が並んで輝いていた。
:どっちだ?
:同じくらいに見える
お互いの色の駒が並んでいく。 黒と白が画面にびっしりと並んでき、まるで黒と白で画面を分割していった。
観戦していた視聴者も、コメントを打つ手を止めていた。
画面の向こうで、誰もが息を呑み、結果を見届けようとしている。
盤面は、黒と白がほぼ同じ数――引き分け。
:おおー!
:まさかの五分!
:二人とも強すぎるw
:次回こそ決着つけてほしい!
「引き分けかー。ノアちゃんも強いね」
「ええ、ユイさんもとても強かったです。対戦、ありがとうございました」
視聴者のコメントも一斉に弾け、画面が歓声で埋め尽くされる。
「強すぎる」「次回こそ決着を」といった文字が流れていく。
「それじゃあ、ここで終わりにしよっか」
「そうですね。きりが良いところになりましたし」
勝敗はつかなかったが、互角に戦ったという事実が、確かな絆のように二人の間に残っていた。
緊張から解放された空気は柔らかく、笑みが自然とこぼれる。
「でも、次は勝ちますから!」
「ふふっ、わたしも負けないよ。次こそ決着だね」
軽口を交わす声に、視聴者のコメントが再び盛り上がる。
「次回楽しみ!」「シリーズ化してほしい」といった文字が流れ続け、まるで次の試合を待ち望む声援のようだった。
「じゃあ、みんな。また次の配信で!」
【リバーシ】 ユイさんと戦う!
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