第二回三期生コラボ5
ユイトさんの声が響いた瞬間、張り詰めていた空気が動き出した。
ニヤは軽快に走り出し、わざと音を立ててヴォーデンの注意を引く。
マサも続き、ベッドの次々と設置していく。
暗闇の奥から、ヴォーデンの咆哮が轟いた。
重い足音が地面を揺らし、胸の奥まで響いてくる。
ノアは息を詰めながら物資を抱え、ユイトの指示通りに脱出ルートへと進む。
ユイは後方で警戒し、万が一の時に備えていた。
:ニヤが囮役に!
:ユイトの指揮で全員が動いてる…熱すぎる!
「まじか……」
けれど、ヴォーデンのパンチ一つで、マサさんが瞬く間に倒される。何一つ防具をつけていないこの現状では、掠っただけでも、倒されてしまうのだろう。
でも……。
「ははっ、危ない危ない。リスポーン地点を設定しててよかった」
「にゃはは! ヴォーデン、こっちにくるにゃよ!」
ニヤさんが、大きな足音を立てて、ヴォーデンのことを誘導していく。
しかも、ニヤさんはただ逃げるだけではなく、障害物を利用することで、一回死ぬまでの間にも、かなりの距離を稼いでくれた。
「凄すぎだろ……」
自分との違いを実感し、マサさんがそんなことを呟いていたけれど、すぐに自分がするべきことを思い出して、ヴォーデンのことを誘導していった。
これならば――。
「よし。ノア、逃げろ。このくらいの距離があれば、きっと大丈夫だ」
「了解です。行きます!」
ノアは一瞬だけ目を閉じ、深く息を吸い込んだ。
そして、物資を抱えたまま、静かに、しかし確かな足取りで脱出ルートへと踏み出す。
その背中を、ユイトは黙って見送った。
ヴォーデンはニヤとマサの誘導に完全に引き込まれている。
咆哮と足音が遠ざかり、ボクの進路を阻むものは何もなかった。
:ノアが動いた!
:囮役が完璧すぎる…
:ユイトの指揮、マジで機能してる
「マサ、もう少し左の方に。ニヤは後数秒だけ長く生き残ってくれ」
「スパルタにゃね!」
「出来るだろ」
「そうだけどにゃ……。まぁ、仕方がないにゃ」
ボクは足音を殺しながら、慎重に通路を進んでいく。
手にした物資の重みが、今だけは心強く感じられた。
仲間が命を懸けて繋いでくれたこの道を、無駄にはできない。
――でも、誰にだってミスはある。
「あっ」
古代都市の端が見えてきた時、ボクが誤って足音を立ててしまう。それと同時に視界が暗くなり、二体目のヴォーデンが地面から這い出て来た。
「しまった……」
ヴォーデンの咆哮が、まるで怒りをぶつけるように響いた。
ボクの足が、ほんの一瞬止まる。
その一瞬が、命取りになるかもしれない――。
「ノア、どうした⁉」
ユイトさんの声が、すぐに飛んできた。
「二体目が……湧きました。ボクの位置です。完全に、こっちを見てます」
:え、二体目⁉
:まじかw
:逃げてくれ!
もうだめだ。そう思った時――ヴォーデンがボクがいない方向へと急に走り出した。
「えっ?」
そっちに視線を向けると、ベッドを持ったユイさんが足音を立てながら走っていて、わざとヴォーデンの注意を引いていた。
「ノアちゃん、今のうちに逃げて!」
ユイさんの声が、通路に響く。
「ありがとうございます!」
ボクは物資を抱えて、再び走り出した。
出口はもうすぐ。けれど、ヴォーデンの咆哮が背後から響き続ける。
ユイさんが、まだ囮として走っているのだ。
「マサ、そっちのヴォーデンはニヤに任せて、ユイのカバーをしてくれ」
「にゃっ⁉ にゃー一人でこのヴォーデンを引きつけないといけないのにゃ⁉」
「そのヴォーデンは、ノアとは距離が開いているから、重要度が低い。二体目のヴォーデンを引き付けた方が、ノアの生存率が上がる」
「……覚えておけにゃ。スパルタ厨二病」
ニヤはそう呟いて、一人でヴォーデンを引き付け始めた。
マサは、そのことを確認した後、ユイの方へと走り出す。
「あと、ノアは真っすぐじゃなくて、左斜めに進んでくれ。そっちの方角にはシュリーカーが無い」
「左斜め……了解です!」
ボクは指示通りに進路を変えた。
その道は平面ではなく、足元が不安定だったけれど、ユイトさんの言葉を信じて進む。
シュリーカーの警告音は聞こえない。確かに、こっちにはいない。
一方、ユイさんの足取りが限界に近づいていた。
ヴォーデンの咆哮がすぐ背後に迫っている。
マサさんが通路の角から飛び出し、ユイさんの前にベッドを設置する。
「ユイ、こっち!」
「ありがとうございます、マサさん!」
ユイがヴォーデンに追いつかれて、白い煙となって消える。
でも――次の瞬間、リスポーン地点に再出現する。
:ユイ、リスポーン成功!
:マサのカバー完璧すぎる
:ユイトの指揮、神がかってる…
そうして、ボクは古代都市の外へと足を踏み出した。
「ユイトさん脱出しました!」
「よくやった! そのまま、地上へと帰ってくれ」
ユイトさんの声が、少しだけ震えていた
ボクは振り返る。
みんなのおかげで、ボクはここまで辿り着いて、物資を持ち帰ることが出来たんだ。
そうして、ボクたちの古代都市探索が幕を下ろす。
全員無事ってわけにはいかなかってけど、三期生全員が協力して、初めて手に入れることが出来た――かけがえのない成功だった。
【三期生】もう一度!
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