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TS転生したぼっちJK、Vtuberで人生逆転中  作者: 月星 星那
三期生

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裏話

 事務所の一室、そこには一期生のベオ・オーリスとルミナ・セレスティア――莉緒と冴が、ノアのコラボ配信をモニター越しに見ていた。


「アハハッ! やっぱりあの子は気付いてくれた! よかったよ、ボクの見る目は間違ってなかった!」

「うるさい。もっと静かに見ることが出来ないのか?」


 莉緒は椅子の背にもたれ、足を組みながら楽しげに笑っている。対照的に、冴は腕を組み、冷ややかな視線を画面に注いでいた。


「そんなことを言わないでよ。ほら、今日はチョコケーキを作って来たんだからさ。お一つどうだい?」

「ああ、一つ貰おう」


 冴は視線をモニターから外さずに、差し出された皿を受け取った。

 フォークで小さく切り分け、口に運ぶ。その仕草は無駄がなく、感情の揺らぎも見せない。


「……悪くない。甘すぎないのは評価できる」

「アハッ、やっぱり冴は正直だね。相変わらず褒め言葉が少なすぎるけど」


 莉緒は肩をすくめ、楽しげに笑った。

 その笑みは柔らかいのに、瞳の奥には獲物を見定める狼の光が宿っている。


「ところで、冴から見てニヤの動きに特筆すべきことはあったかい?」

「評価すべき所は無数にあった。一つ一つの動きに、何度も試行錯誤をした形跡があり、無駄が削ぎ落とされている。ただの才能ではなく、積み重ねの結果だ」


 冴の声は淡々としていたが、その言葉には確かな重みがあった。


「へぇ、冴がここまで評価するなんて、よっぽど凄いんだねぇ。まぁ、どうせ冴にも出来るんだろうけどさ」

「当然だ」


 冴の即答に、莉緒は目を細めて笑った。

 まるで、それでこそ冴だと言うように。


「それで、何故わざわざ私を呼んだ? 自分一人で見ればいい話であろう?」

「たまには、一期生で集まって後輩の配信を見るのもいいじゃないか! どうせ、あの子は誘ってもここに来ないんだから、冴に声を掛けるのは当然のことだよ!」

「それで誤魔化せると思っているのか?」

「いいや、全く。この程度の嘘で、冴を誤魔化すことが出来るだなんて、一ミリたりとも思ってないよ」


 莉緒はフォークを弄びながら、愉快そうに笑った。

 その声音は軽やかだが、瞳の奥には鋭い光が宿っている。


「ならば、何故だ」

「決まってるだろう? ボクの目的のために、冴の反応を見る必要があっただけだ」


「目的?」

「そう、目的。ただ、冴ですらボクの目的に気付くことは出来ない! いくら君との付き合いが長くても、いくら君が天才だったとしても、ボクという狂人の頭の中を除くことは出来ないのだから」

「……相変わらず大仰だな。自らを狂人と呼んで悦に入るのは、お前の悪癖だ」


 冴は淡々と告げ、フォークを皿に置いた。

 その声音には揺らぎがなく、氷の刃のように鋭い。


「悪癖? アハハッ、そうかもしれないね。でも、狂人だからこそ見える景色もあるし、行動を予測されることなど無くなるんだよ。ハハッ、本当にいいことだらけだよねぇ――狂人になるってことは!」


 狂気を孕んだ莉緒の笑い声が、部屋中に響き渡る。


「愚かだな」


 しかし、その笑い声を、冴の冷たい声が切り裂いた。


「狂人を気取るのは勝手だが、結局は自分を正当化するための方便に過ぎん」

「ふーん、冴はそう思うんだ。……まぁ、いいや。またね、ボクは帰るよ――これから、大事な用があるんだ」


 扉が閉まる音が響き、部屋に静寂が戻る。

 冴はしばらく無言のままモニターを見つめていた。

 配信はとっくに終わっていて、画面は暗闇に変わっている。


「昔から変わったやつだったが……何がお前を変えたんだ? 莉緒」


 

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