その後
申し訳ございません。
34話と35話の順番を間違えて投稿していました。
こちらが35話になります。
「おつかれさまにゃー」
配信が終わり、ニヤさんが僕をねぎらってくる。
「……はい。ニヤさんこそ、おつかれさまでした」
返事をしながら、胸の奥がじんわりと熱くなる。さっきまでの戦いの余韻と、ニヤさんの言葉が混ざり合って――不思議と、心地よい疲労感に包まれていた。
「にゃははっ、ノアちゃん、今日はよく頑張ったにゃ。にゃーも、ちょっと本気を出しすぎたかもしれないにゃ」
その声は、配信中で見せた、低く鋭い声では無く、優しく暖かな声になっていた。
「にゃーの本気を見て、何か思ったかにゃ?」
「……正直、圧倒されました」
素直にそう答えるしかなかった。
「でも、それ以上に……あんなすごい姿を見ても、やっぱり追いつきたいって思いました。あの域に至るまでに、どれだけ努力し続けて来たのか伝わってきましたから」
ニヤさんは一瞬目を丸くして、それからふっと笑った。
「にゃははっ、やっぱりノアちゃんは面白いにゃ。普通ならすごすぎて無理だって諦めるところなのに、追いつきたいって言えるんだから」
その声には、ほんの一瞬だけ驚きと、そしてどこか安堵の色が浮かんでいた。
「にゃーが、RTAやPVPを始めた理由は、友達に誘われたからだったのにゃ。最初はただ、遊びの延長だったにゃ。でも気づいたら、もっと速く、もっと上手くって……止まらなくなってた。気がつけば、にゃーの毎日は練習と挑戦で埋まってたにゃ」
ニヤさんは、自身の過去について、言葉を紡いでいく。
「別に、そのことに後悔なんてしてないにゃ。生き物だから、より上へと目指していくのは間違っていないし、その毎日はとっても楽しかったから……。でも、にゃーの友人たちとは、どんどん差が出来て来たのにゃ」
ニヤさんの声に、ちょっとずつ悲しみが帯びていく。
「差ができるのは当然にゃ。にゃーが必死に走ってたんだから。でも……気づいたら、隣に誰もいなくなってたにゃ」
ニヤさんは笑っている。けれど、その笑みの奥に、ほんの少しだけ寂しさが滲んでいた。
「勝っても、記録を更新しても、すごいって言ってくれる声はもうなくて……、隣で一緒に走ってくれる人も、誰一人残っていなくて……。にゃーはただ、自分のためだけに走り続けてたにゃ」
胸が締めつけられる。
――この人は、ずっと孤独の中で努力を積み重ねてきたんだ。
「そうして、目標にしてたSub九――九分切りを達成した時に気付いたのにゃ。にゃーは、ずっと一人で走ってただけだったんだって……。この努力に意味はあるのかって」
「……意味がないなんて、そんなことありません」
気づけば、声が自然と出ていた。
「その努力があったから、今のニヤさんがいるんです。そして――その背中を見て、ボクは追いつきたいって思えたんです」
「……ノアちゃんは、本当に不思議な子にゃ」
小さく息を吐きながら、ニヤさんは笑った。
「にゃーがずっと抱えてたものを、そんなふうに言ってくれるなんて……」
その声は、どこか照れくさそうで、けれど確かに温かかった。
「ありがとにゃ。ノアちゃんがそう言ってくれるなら……にゃーの努力も、少しは意味があったのかもしれないにゃ」
そうして、ニヤさんは明るく元気な声をあげた。
「ユイちゃんからとる気はないけど――ノアちゃんの姉貴分として、これからは前に立たせてもらうにゃよ」




