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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星那
三期生

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猫塚ニヤ1

「うぅ、あんなことを言わなかったら良かった」


 その後、僕はPCの前で固まっていた。

 喫茶店では僕だけでコラボをしてみると言ったのに、いざこうしてコラボの誘いをしようとすると、腕が固まって動けなくなってしまう。


 迷惑じゃないかな? もし断られたらどうしよう? そんな考えた頭の中をよぎり、胸の奥を締め付けていく。


 ――そんな時。


 ――――――――――――――――――――

 月夜ユイ

 がんばれ!

 ――――――――――――――――――――


「ははっ、タイミング良すぎだよ……」


 思わず声が漏れた。

 画面に浮かぶ短いメッセージは、たった三文字のはずなのに、胸の奥を締め付けていた不安を少しだけ和らげてくれる。


 ――がんばれ!


 その言葉が、背中を軽く押してくれた気がした。

 僕は深く息を吸い込み、震える指先をキーボードへと置く。

 

「……よし。送ろう」


 ――――――――――――――――――――

 朝霧ノア

 ニヤさん、コラボをしませんか?

 ――――――――――――――――――――

 猫塚ニヤ

 ノアちゃんからコラボの誘いが来るなんて予想外にゃ!

 早速今日するにゃ!

 ――――――――――――――――――――


 「えっ……今日?」


 思わず声が漏れる。

 けれど、胸の奥に残っていた不安は、ニヤの明るい返事と、ユイの応援の言葉のおかげで消えていた。


 ――――――――――――――――――――

 朝霧ノア

 わかりました!

 よろしくお願いします!

 ――――――――――――――――――――

「よしっ!頑張ろう」


 *


「みんにゃー、こんばんにゃ。猫塚ニヤにゃ。今日は、三回目のコラボにゃ! コラボ相手は――」

「こんばんは、朝霧ノアです。今日は、よろしくお願いします!」


:おおー

:ノアちゃんは予想外!

:人見知りなのに、よく来てくれた!

:声ちょっと震えてる?w

:がんばれー!


「今日は、ブロクラをやっていくにゃけど、ここはNeoVerse鯖じゃなく、新しく作ったワールドなのにゃ。それで、まだ初心者のノアちゃんに色々教えていくにゃよ!」

「よろしくお願いします!」


:おお

:ニア先生よろしくお願いします!


「まずは、質問からにゃ。ノアちゃんは、このゲームについてどのくらい知っているにゃ?」

「えーっと、先輩方の配信で少し見たことあるくらいですね」

「ふむふむ、ルミナ先輩の配信を見ているなら、基本的な知識の量は問題ないはずにゃから、経験でカバーしていけば大丈夫にゃ!」

「えっと……つまり、実際にやってみろってことですね」

「そうにゃ! 百聞は一見にしかず、百見は一プレイにしかずにゃ!」


:あの先輩の配信を見てたらなぁ……

:あの人、前に何を作ってたんだっけ?

:モブスイッチ

:何それ?

:このゲームって、スポーンするモブの上限が決まってるから、あらかじめその上限を満たすことでこれ以上敵が湧かないようにする機械


「よくわからないこと言ってる……」

「あの先輩が作っているものを理解するのはまだ早いにゃ。ノアちゃんが覚えるべきなのはもっと簡単な奴からにゃ」


:そうそう

:初心者があれを理解する必要はないよ


「じゃあ、前のコラボで言っていた地獄への生き方を教えるにゃ。本来なら、黒曜石を掘ってゲートを作るにゃけど……もっと簡単な方法があるから、それを教えていくにゃ」

「もっと簡単な方法……?」

「そうにゃ。溶岩と水をうまく使えば、黒曜石を掘らなくてもゲートを作れるにゃ!」

「えっ、そんなことできるんですか⁉」


:裏技きたw

:それ知ってる!


「あと、村のゴーレムを狩れば、鉄が手に入るから、洞窟に入る必要すらないにゃ」

「そうにゃ! 村の守護者だけど、倒せば鉄を落としてくれるにゃ」

「うぅ……なんだか悪いことしてる気がします……」


:ゴーレム狩りは通過儀礼w

:初心者の葛藤かわいい

:でも鉄は大事だからなぁ

:ノアちゃんの良心が試されてるw


「ゲームの世界だから大丈夫にゃ! それに、鉄があれば装備も作れるし、地獄に行く準備も整うにゃ」

「……そ、そうなんですね。じゃあ……やってみます!」

「ちなみに、にゃーレベルになると、海溝でゲートを作ることで、ワールドを生成してから、遅くても二分くらいで地獄に入ることが出来るにゃ」

「……えっ、えぇ……?」


:顔文字出てそうw

:( ゜д゜)←今のノアちゃん

:完全に置いてけぼりw


「それって本当なんですか……?」

「もちろん、安定はしないにゃよ。二分もかかることも結構あるにゃ」

「二分も……?」


:プロの領域w

:初心者に一分台は無理w

:上級者でも無理だわ!

:ノアちゃんの脳がフリーズしてるw

:( ゜д゜)←視聴者も同じ顔


「にゃーのことは置いといて、まずは村に向かうにゃよ!」

「そ、そうですね。村に行きましょっか」


 そうして、ボクはニヤさんに導かれるまま、村を目指して歩き出した。


「あれ? 走るスピードが違う?」

「ああ、それはにゃーが段差に躓いて無いからにゃ」

「段差に躓く?」


 それはどういうことなのだろうか?


「そうにゃ。ジャンプするタイミングや、視線の動かし方で、段差に躓かないように調整しながら走ってるにゃ。まだ初心者のノアちゃんには難しいと思うにゃけど、これからもこのゲームを続けていくのなら、今のうちに練習することをお勧めするにゃ」


:プロの動き解説きたw

:初心者に視線操作は無理ゲーw

:ノアちゃんの目が泳いでるww

:ニヤ、上手すぎだろw


「すごいですね……。そんなことをやってるんて。さっきも思いましたけど、なんでここまで極めているんですか?」


 そう尋ねると、ニヤさんは少し考えた後、にやりと笑って肩をすくめた。


「にゃー? ただの暇つぶしにゃよ。……深い理由なんてないにゃ」


:暇つぶしw

:そんな理由で、出来るようなことじゃないw

:バケモン……化け猫かよw

 

 わざと軽く流すような口調。

 でも、そこにはほんの一瞬だけ、影のようなものが差した気がした。


「……そう、なんですね」

 

 思わず相槌を打ちながらも、胸の奥に小さなひっかかりが残る。

 

 ――孤独の猫。


 莉緒さんの言葉の断片が、ふと頭をよぎる。胸の奥に残ったひっかかりは、ただの気のせいじゃない気がした。

 けれど、今はそれ以上踏み込むことができなかった。


「にゃーにゃー! ほら、村が見えてきたにゃ! ノアちゃん、まずはゴーレムを狩ってみるにゃ!」

 

 ニヤさんはわざとらしく声を弾ませ、影を振り払うように前を指さした。


「そうですね……。挑戦してみます!」


 この疑念は、胸の奥に押し込んでおこう。今はただ、目の前のゲームに集中するしかない。


 きっと、その正体を理解できるようになるから。

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