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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星那
三期生

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20/70

三期生コラボ

『準備は出来たかにゃ』

 

 配信が始まる直前、ニアさんがボクたちに向かって、にやりと笑いながら声をかけてきた。

 その軽い調子に、張り詰めていた空気が少しだけ和らぐ。


『いつでも大丈夫ですよ。ノアちゃんも大丈夫そう?』

『う、うん』


 ユイも、ボクの様子を気にかけてくれていた。

 その優しい声に、胸の奥の緊張が少しだけほどけていく。


『フッ……我はいつでも準備万端だ』

『俺も問題なしー、いつでもボケる準備は出来てるよ』

 

 ユイトさんも、マサさんも、同じようで――それぞれのやり方で緊張をほぐしているのが伝わってきた。


『ふふ……じゃあ、わたしがしっかりまとめますから。みんな、暴走しすぎないでくださいね』

 

 ユイが小さく笑いながら言うと、通話の向こうでニアさんが「にゃはは!」と楽しそうに返す


 その瞬間、画面にカウントダウンが表示された。

 5、4、3……


 心臓の鼓動が速くなる。

 でも、不思議と怖くはなかった。

 仲間が隣にいる――そう思えるだけで、胸の奥に勇気が灯る。


(よし……行こう)


 0の数字と同時に、配信が始まった。


 *


「にゃー、にゃにゃにゃ」

「にゃにゃにゃにゃー?」


:うっ

:トラウマが……

:え? これコラボだよね……


 配信が始まると、ニヤさんとマサさんがなぜか鳴き声だけで会話を始めていた。


「にゃーにゃにゃ!」

「にゃにゃにゃー!」


:やめろwww

:また始まったぞ

:一時間半耐久配信の再来か⁉

:翻訳班はよ


 チャット欄が一気にざわつく。

 ユイが慌てて声を上げた。


「ちょ、ちょっと! ふたりとも、ちゃんと喋ってください!」

「フッ……混沌の幕開けにふさわしい挨拶だな」


 このままでは収集が付かなくなると思ったのか、ユイさんが慌てて止めにかかる。ユイトさんも、ふざけている二人に若干引いているような様子を見せ、それでも「……まあ、我も嫌いではないが」と小さく呟いた。

 ユイさんが深く息を吸って、再び声を張る。


「はぁ、この二人は置いといて……はじめましての人も、そうでない人もこんばんは。NeoVerse三期生の月夜ユイです。今日はよろしくね」

「我は、黒木ユイトだ闇の帳より招かれし者……この世界に混沌をもたらす影の使徒――」

「にゃーは、猫塚ニヤにゃ」

「まだ話している途中なのだが‼」

「にゃーにゃー、ユイトの長いのは後で聞くにゃ~」

「我の影の詠唱を遮るとは……許されざる暴挙……!」

 

:ユイトの詠唱、止められてて草

:ニアちゃん自由すぎるww

:この空気感ほんと好き

 

「はいはい、次マサさん。頼みますよ」

 

 ユイさんが若干疲れた声で促すと、マサさんが話し出す。

 

「みんな、こんばんはー。この中で一番真面の近藤マサだ! 元気にやっていくから最後まで見てくれよな!」

「誰かさんのせいで、もう元気では無いんですけどね……」


 ユイさんがぼそっと呟くと、チャット欄がすぐに反応する。

 

:ユイちゃんの疲労が見えるw

:まとめ役おつかれさまです

:この空気、三期生って感じで好き

 

「にゃー! ユイちゃん、元気出すにゃ~!」

「我の詠唱を最後まで聞いてくれれば、癒しの光が――」

「はいはい、次いきましょうね!」


 そして、視線が自然とボクに集まる。心臓が跳ねる。でも、もう逃げない。この空気の中に、自分の居場所がある気がした。

 

「えっと……みなさん、こんばんは。NeoVerse三期生の朝霧ノアです」

 

 少しだけ息を吸って、笑顔を作る。

 

「今日は……みんなと一緒に、がんばります!」

 

:ノアちゃん!

:挨拶できた! えらい!

:がんばれー


「自己紹介も終わったし、これからやることを説明するにゃ」


 ニアさんが胸を張って宣言する。


「今、にゃーたちがいるワールドは、先輩方もいるNeoVerseのの公式サーバーにゃ!」

 ニアさんが胸を張って言うと、チャット欄が一気に盛り上がる。


:公式サーバー!?

:先輩たちの建築物あるやつか!

:絶対荒らすなよwww


「今日はここに、三期生みんなで拠点を作るにゃ。三期生の共同拠点を建てて、先輩たちに負けない存在感を出すのが目標にゃ!」

「フッ……我が闇の城を築き上げる時が来たか」

「いやいや、普通の家を建てるんだって!」

「俺、爆破担当でいい?」

「そんな役目ないから!」


:カオス確定w

:ユイちゃんの胃が心配

:ノアちゃんがんばれー!


 笑い声とツッコミが飛び交う中、ボクは小さく息を吐いた。――でも、不思議と嫌じゃない。


「じゃあ、まずは探索から始めるにゃよ」

 

 ニアさんが元気よく宣言し、キャラクターを走らせる。


「フッ……闇の気配を感じる。北の森に、何かが潜んでいるな」

「先輩方の配信を見ているので知っていますけど、そこには何もいませんよ」

「じゃあ、俺は緑色のモンスターを狩ってくる」

「だから、爆弾を作ろうとしないでください!」

 

:もう方向性バラバラで草

:ユイちゃんのツッコミが止まらないw

:ノアちゃんはどこ行くの?


「えっと……じゃあ、ボクはゲートを作って、地獄の方に行ってきます」


 一瞬、通話が静まり返った。


「……は?」

「ノアちゃん、いきなりスケール大きすぎない?」

「フッ……地獄遠征とは、なかなか良い選択だ」

「いやいやいや! 初心者が最初に行く場所じゃないから!」


:ノアちゃんwww

:命知らずすぎる

:逆に見たい


「にゃはは! ノアちゃん、勇者にゃ! でもまずは鉄装備くらい揃えようにゃ!」

「このゲームは生き返ることが出来るから、無くても大丈夫だと思いますけど……」


 そう言った瞬間、ニヤさんが心の底から引いているような様子を見せた。


「まさか、三期生の中で一番ぶっ飛んでいるのがノアちゃんだったとは……このリハクの目をしても見抜くことが出来なかったにゃ」 

「いや、ニアさんが言うんですかそれ!?」

「フッ……勇者ではなく、狂戦士の素質を感じる」

 

:一番まともそうに見えて一番やばいw

:ノアちゃん天然最強説

:ユイちゃんの胃がまた削られていく……

:これは推せる


「あれ? もしかして……地獄だと、一人だから会話しなくて済むとか考えてないよね?」

「すぅー」


 一瞬、通話が静まり返った。


:草

:地獄に逃げる理由がそれwww

:ユイちゃんの胃がマジで心配

:ノアちゃん人見知りかわいい


「ノ ア ち ゃ ん ?」


 ユイさんの声が、低く、しかしはっきりと響いた。


「ひ、ひぃっ……! い、いや……地獄の素材とかを取りに行こうかなって――」

「怒らないから、正直に言って」

「すみませんでした」


 小さく項垂れるボクに、通話の向こうから笑いが漏れる。


「にゃはは! やっぱりノアちゃんって面白いにゃ」

「フッ……孤高の戦士は群れを嫌うもの。理解できるぞ」

「俺たちはまだまだだな。もっとボケていかないと」

 

「マサさん、何か言いましたか?」


 ユイさんの声が、氷点下の温度で突き刺さる。


「ひぃっ!? い、いや、俺はただ……場を盛り上げようと……!」

「盛り上げる方向性が間違ってるんですよ!」


:ユイちゃんの圧www

:マサ即死で草

:三期生の力関係が見えてきたな


「ということで、罰としてノアちゃんはわたしについてきて。一人でいるなんて許さないから」

「えっ……あ、はい……」

 

 思わず小さく返事をしてしまう。胸の奥がじんわり熱くなる。


「にゃはは! ユイちゃん、完全にお母さんポジにゃ!」

「フッ……保護者と庇護対象。美しい構図だ」

「俺も罰でノアちゃんについていこうかな?」

「マサさんは来なくていいです」


:ユイちゃんの保護者力w

:ノアちゃん守られてる感かわいい

:マサくん即切り捨てられてて草

:三期生の関係性が見えてきて最高


 笑い声とコメントに包まれて、ボクは小さく息を吐いた。


(そっか、ユイさんは、ボクのことを気遣ってくれていたんだ)


「ユイさん、ありがとう」

「……っ」


:ユイちゃん照れてるwww

:ノアちゃんの破壊力やばい

:保護者から急にヒロイン感出すのやめろw

:二人の関係性ほんと尊い


「……さっさと、物資を集めに行くよ」

「はいっ!」


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