Fromベオ
「さぁ、後はボクたちの勝負だよ。そうだよね? ルミナ」
「ああ、お前に勝てば、これらの勝負は私の勝ちだな」
「アハハッ! 安心していいよ。ボクが勝つから」
:挑発しかしてねぇ……
:幼馴染だから仲いいな!
:火花しか飛び散ってないんだけど!?
あの二人、やっぱり仲が悪いんだろうか? こんなにも、挑発しているし……
「ユイ」
「どうしたの?」
「あの二人って昔からあんな感じだったの?」
この場で一番、ベオ先輩たちと関係があるユイに聞いてみる。
確か、ユイの姉はあの二人と友達で、ユイ自身も何回か関わったことがあるはずだ。だから、昔の二人を知っていると思ったんだ。
けれど――
「うーん、よく知らないんだよね」
「そうなの?」
「うん、ベオ先輩とは、嫌になるほど話したことがあるけど、ルミナ先輩とはあまり話したことが無いし……。でも、姉さんは凄く仲がいいって言ってたよ。今の調子じゃ、そのように見えないけど」
:あれ? ユイって狂狼たちと知り合いだったんだ
:結構配信で言ってるぞ
:うんうん、小学生の時から狂狼から煽られ続けたって
:かわいそ……
うん、それは僕も同意見。あの人から小学生のころから煽られるなんて……本当に同情する。僕なら絶対に嫌だね。
そんなことを考えている間にも、あの二人のやり取りは……あまり変わってかった。
「それにしても、四勝四敗。調子でも悪いの?」
「安心するといい。今すぐ、お前に勝って五勝四敗にするからな」
「アハハッ! もしかして、ボクに勝つ気なんだ? 本当にできると思ってるの?」
「それはこちらのセリフだ。今まで、お前が私に勝ったことがあったのか?」
「へぇ、言うねぇ」
「そっちこそな」
「あのー、二人とも……」
「「うるさい」」
:挑発合戦……
:社長、かわいそう
:つい口出ししてしまったばっかりに……
:でも、ある意味、楽しそうだな。二人とも
うん、仲がいいって評価は間違ってないかも……だって、二人とも本当に楽しそうだから。……ベオ先輩はいつも笑っているし、ルミナ先輩は相変わらず無表情だけど。
「ちょどいいや、社長。司会よろしく」
「えっ?」
「そうだな、他の適任はユイぐらいだし、ちょうどいい」
「あの……」
「それに、私はユイには負けたが、社長には勝ったからな。敗者は勝者の言うことを聞くべきだろう」
「そう、ですよね……」
:社長!
:死体撃ちだぞ!
:社長が一番悔しがっていたのに、この仕打ちとは……
「ルミナのやつ、社長で遊んでいるな」
「そうなんですか? ティア先輩」
「うん、ルミナってそういうとこあるから」
「そうなんですね。少し意外です」
へー、少し意外だ。ルミナ先輩は、無駄なことを一切しないタイプだと思っていた。そんな面白い一面もあるなんて。
「はいはい、わかりましたよ。僕が司会をすればいいんでしょう!?」
「最初からそう言ってる」
「やれやれ、社長は察しが悪いね」
「ほんと、この人たちは……。はぁ、もういいです。さっさと始めましょう」
:※一応社長です
:なんで社長なのに、一期生の方が権力を持っているんだよ!
:社長は二期生だから
:なんでだよ!
:それはどう
「さあ! 第九戦、ベオ・オーリスVSルミナ・セレスティア! 勝負内容は、なんとクイズ対決! ルミナさんの得意分野な気がしますが、どのような結果になるのでしょうか!?」
:は?
:マジ!?
:え? なんで!?
「ほう、それで来るのか」
「そうだよ。君の得意分野から叩き落そうと思ってね」
「面白い。お前の方を落としてあげるよ」
「へぇ、やってみなよ」
「あのー、挑発をやめてください。この不戦負にしますよ」
:こいつらwwww
:幼馴染相手だったら、ルミナってこんな感じになるんだね
:幼馴染ってより、相手がベオだからって気がするけどな
「はぁ、埒が明かない。待ってるのもあれですし、始めましょうか。……それでは! 第九戦、ベオ・オーリスVSルミナ・セレスティア! はじめ!」
:二人ともがんばれ!
:どんな勝負になるんだろか?
:ルミナが化けそうな気がする!
「大問一、今から五問出します。早押しで答えなさい。第一問、1+1=10 が正しい世界を前提としたとき、3+2 の答えを求めよ」
ピンポーン!
ルミナ先輩がチャットが打たれるより早く、ボタンを押す。
「101」
「正解です!」
:は?
:どういうこと?
「チッ、二進数か」
:そういうこと!?
:気付くベオも凄いな
:でも、ルミナは早すぎ
「勝つんじゃなかったのか?」
「まずは様子見、ここからだよ」
こうして、第九戦は幕を上げたんだ。
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(相変わらず、冴は早いよね)
ボクは、改めて冴の天才さを実感していた。
驚きはない。でも、勝てる気が全くしなかった。
(はぁ、ボクも結構勉強していたんだけどね……いや、この場合は勉強じゃなくて、頭の柔らかさか)
「第二問、日本の最南端の島は――」
ボタンを押す。冴に勝つためには、多少のミス覚悟で攻めないといけないから。
「沖ノ鳥島」
「不正解です」
「波照間島」
「正解です」
(そっちか……)
波照間島は日本で最南端の有人島。つまり、この問題は、最南端の有人島について問う問題だったのだ。
(やられたよ)
速度を求めてせいで、間違えてしまう。しかも、これは予測できた。
ルミナがいる以上、簡単な問題なんて、出るはずがないんだから。
「第三問、一般相対性理論において、重力は何の曲がりとして説明される?」
ピンポーン
ピンポーン
ほぼ同時、でも冴の方が少し早い。
「時空」
「正解です」
:は?????
:二人とも早すぎだろ
:問題を最後まで聞かせてくれ
「三対0だな」
「アハハッ! もう勝った気でいるの? 慢心しすぎじゃない? あ、そうそう、これって何問あるの?」
「大問一が五問、大問二が八問あって、それで終わりです」
「ほら、まだまだ、ボクが勝つ可能性は残っているよ」
:でも、この調子じゃきついだろ
:ベオも常人からしたら、すごく早いんだけどな
:まじで、相手が悪い
(まずいな、これ。ちょっとだけ想定を超えてる。ボクが負けることは許されないんだから、もっと頭を回転させろ)
本来なら、三問目までに一問は正解しているはずだった。
でも、それすら冴は上回っていて、勝てる気がしない。でも、弱音はここまで、後輩や同期がつないでくれたものを、そう簡単に落とすわけにはいかない。
「第四問、黄色信号の法律上の意味は?」
これも、冴の方が早い。
「停止。ただし、安全に止まれない時だけ進んでいい」
「正解です」
:え、そうだったんだ
:普通に通ってた
:お前ら家から出るんだな
:は?
:喧嘩売ってる?
「違反した場合は2点の減点と7,000円の反則金が科せられるんだっけ?」
「そうだ。お前は守っているのか?」
「ノーコメント」
:おい!
:狂狼!?
:お巡りさん、この人です
(そもそも、車乗らないし)
まったく、何でこのボクが違反していると思っているんだろうか? ちゃんと話を聞いてほしいな。……まぁ、そんなことはどうでもいい。今一番重要なのは、次の問題を正解することだけだ。
「年周視差で距離を測るときの基準距離単位は――」
「約3.26光年」
:はやっ
:問われているのは単位だから、間違いだろ
:やっと間違えた!
(……違う、冴は――)
「せ、正解です」
:え? なんで??
:問題に続きあったの?
「は、はい。年周視差で距離を測るときの基準距離単位はパーセクですが、1パーセクは何光年でしょうか? という問題でしたから」
:まじ?
:予測してたのか……
:確かに、二問目は同じような引っかけだったけど
「これで、五対0だな」
この勝負は、大問二を合わせて全部で十三問。あと一回しか、点を取られることは許されない。
それを、冴という天才相手に成し遂げるのは、本当に難しいこと。……それは、ボク自身が一番わかっている。
でも――
(それが何? ボクは、あの時誓ったんだ。冴を、あの場所から引きずり堕とすって)
それが、ボクが生まれた理由で、何があったとしても成し遂げないといけないこと。
だから、こんなピンチくらい超えて見せる。そうでもしないと、冴には絶対に勝てないんだから。
「それでは、大問二に行きます」
(だから、宙からボクのことを見てなよ。日向美咲)
原点を思い出す。
ボクが、狂狼になった……あの日のことを。




