コラボ4
(ははっ、やっぱりすごいなぁ)
目の前で歌っているノアを見て、私はそんなことを心の中で思っていた。
彼女と最初に出会った時は、人見知りなこともあってか私のことを怯えたように見つめていた。だから、このコラボは私主体で動かすことが出来ると思っていた。
けれど、実態は全くの別物だった。
最初は、私がそばにいることに緊張して、いつものように話すことが出来ていなかった。なのに、しばらくすると、いつもと一緒というわけではないけれど、普通に私や視聴者と話すことが出来るようになっていた。
それに、私が何年もかけて腕を磨いていたゲームの実力に、ノアは一瞬で到達てきたし、歌でさえも、私を上回っている。
これなら、私が勝てるような分野は一つも無い。
(悔しいはずなのに……)
少し前の私ならば、きっと素直に嫉妬していた。
自分の努力を追い越されることが怖くて、相手を遠ざけようとしていたかもしれない。
でも今は違う。
悔しさより先に、笑いがこみ上げてきて、もはやリベンジしようとも思えない。
笑顔を作ろうとしても、頬が引きつって、笑顔になっているか自分でもわからない。
胸の奥に広がるのは、悔しさでも嫉妬でもない。
ただ、空っぽ。
(……もう、無理だ)
姉にへし折られた自信を取り戻すために、私はここに来た。
なのに、やっと掴んだはずの舞台で、ノアの歌声にあっさりと打ち砕かれてしまった。
努力を積み重ねても、笑顔を貼り付けても、結局私は誰かの影でしかない。
視界が滲む。
チャット欄はノアへの歓声で埋め尽くされていて、直視することが出来ない。
耳に残るのは、あの時と同じ親の声――
『なんで、アンタじゃなかったの』
心臓がぎゅっと握り潰されるように痛む。
立ち上がろうとする力は、もうどこにも残っていなかった。
(……ごめんね、姉さん。やっぱり私は、何も出来ないままだ。やっぱり、あの時に私を庇ったのは間違いだったよ)
そんなことを思っていると、ノアがとうとう歌い終わり、マイクを私に渡してくる。
ノアが差し出したマイクが、目の前にある。
逃げ出したい。けれど、逃げることすら許されない気がした。
震える手を、どうにか伸ばす。
マイクを握った瞬間、冷たい金属の感触が心臓まで突き刺さるようだった。
(……歌えるわけ、ないのに)
それでも、画面の向こうには期待する視線がある。
ノアの瞳も、真っ直ぐに私を見ている。
喉が塞がりそうになりながら、私はかすれた声で言った。
「……次、いきます」
その声は、震えていて、今にも消え入りそうだった。
「――ッ」
歌いだそうとしても、声が出ず、喉がひゅっと締め付けられる。
声を出そうとするたびに、胸の奥の痛みがせり上がってきて、息すらまともに吸えなかった。
マイクに口を近づけても、ただ空気が震えるだけ。
音にならない声が、虚しく宙に消えていく。きっとチャット欄も、私に対する失望で埋め尽くされているに違いない。
――そう思った瞬間だった。




