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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
最愛の君へ

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Fromノア&ユイ1

 さて、次はやっと僕たちの番だ。


「さぁ、これで三勝四敗! 四勝四敗にまで持って行くのか? それとも、ルミナの勝利で終わるのか! 運命の第八戦、朝霧ノア&月夜ユイVSルミナ・セレスティア! 二人とも、前に出てきな!」

「ノアちゃん、いこっか!」

「うん、そうだね」


 僕とユイは、互いに目を合わせて小さく頷き合った。


「ノアちゃん、緊張してる?」

「……ちょっとだけ。でも、ユイが隣にいるなら大丈夫」


 ユイはふわりと笑って、僕の手を軽く握った。

 その温度が、不思議と心を落ち着かせてくれる。


:がんばれー!

:待ってたぞー!

:ファイト!


「君たちは自信あるのかい?」

「わたしはそこまでですけど、ノアちゃんはあるらしいですよ」

「え!? ちょっと!」


:おお!

:ノアがそこまで言うなんて……

:成長したなぁ

:誰目線だよ


 そこまで言ってない。せいぜい、秘策があるって言っただけだ。

 

「え? 絶対に勝てる秘策があるって言ってなかった?」

「絶対に勝てるとは言ってないよ!」


:草

:wwww

:ノアかわいすぎるだろw


「むー」

「アハハッ! ここまで大口を叩く人は、ほとんどいないよ!」

「言ってませんって!」


:どんまい

:いじれら役になった?


「ユイ、ベオ先輩に似てきた?」

「えっ? 嘘だよ、ごめんって。それだけはやめて!」

「アハハッ! ボクと似てるってだけで、それほど嫌がるかな?」


:www

:嫌がりすぎだろw

:気持ちはわかるけどさ

:ベオはなんで喜んでるんだよ!


 ほんとに酷いよ、この人たち。

 僕で遊んで、楽しいのかな? ……ユイのことは、許すけど。


「それで、君たちは何をするんだい?」

「ブロクラで、鬼ごっこをします。ルミナ先輩が鬼で、十五分間逃げ切れたら、わたしたちの勝ちです」

「ついでに言うと、鬼が有利になるアイテムや、逃げ側が有利になるアイテムがあります。それは、チェストの中に入っていたり、特殊なミッションをすると手に入ることが出来ます」

「あー、あれね。うちの社員が「いい仕事が来たぞ!」って燃えてたやつ」


:へー、面白そう

:この事務所、なぜかブロクラの技術高い人多いから……

:社長の好み定期

:何回も思うけど、他の事務所に自作ワールド提供するってどういうことだよ

:そのくせ、ブロクラする人あまりいないし


「で、ルミナ。鬼ごっこだと言うけど、自信はあるのかい?」

「当然だ。私はRTAやPVPをやっていて、こういう動きは慣れているからな」

「確かにそうだね。RTAはニヤに負けていたけど」

「……」

「べ、ベオ先輩!」


:あ、煽りすぎだろ……

:えぐっ

:幼馴染相手だとしても、よく言うな


 ベオ先輩、何を言っているのだろうか。ルミナ先輩にそんなことを言うなんて……。


「……司会なら、中立でいろ」

「アハハッ! やっぱりバレたか。ちょっとでも挑発をして、後輩たちの援護をしようかと思ったのだけど」

「挑発なんかが私に効くとでも思ったのか?」

「いや、まったく」


:なら挑発するな!

:やっぱり性格悪いな……

:知 っ て た


「じゃ、準備も終わったようだし、始めよっか」

「そうですね、性格が悪いベオ先輩」

「ゆ、ユイ……?」

「アハハッ! 理由も無く煽ってくるユイも中々だと思うけどね」


 そうして、僕たちは用意されたPCの前に座る。

 この席に座ると、これからあのルミナ先輩に挑むんだという時間が湧いてきて、少し怖い。


(ここで、みんなは戦ってきたんだ……)


 ティア先輩、社長、シュウ先輩、コウジ先輩、ツバサ先輩とヒナタ先輩、ニヤさん、マサさんとユイトさん。

 僕の前に戦ってきた人たちが、この恐怖を乗り越えてルミナ先輩に挑んでいたとするならば、心の底から尊敬する。……いや、もとから尊敬はしていたんだけど。


(……尊敬してばかりじゃだめだよね。僕も、そうならないと)


 気を引き締める。深呼吸をひとつ。指先が少し震えているのが、自分でも分かった。

 けれど、大丈夫。僕の側にはユイがいて、一緒に戦ってくれるから。


「それでは! 第八戦、朝霧ノア&月夜ユイVSルミナ・セレスティア! 開始!」


 マップは、社員たちが作った自作マップ。大きな壁に囲われている都市部のようなイメージだ。

 ビルの窓ガラスは光を反射し、道路には車がずらりと並んでいる。

 信号機や街灯まで丁寧に作り込まれていて、まるで本物の都市に迷い込んだような錯覚すら覚えた。


:再現度高すぎだろ

:社員の趣味全開で草

:これ作るのに何時間かかったんだよ

:絶対仕事じゃなくて遊んで作ってるやつ


(……なんで、ここまで再現したんだろう? 僕が見た時は、そこまでじゃなかったのに)


「あの人たち……妙に進捗が遅いと思ってたら……」

「社長、社員の統率が取れていない」

「ティアさん!? 私のことをそんな目で見ないでください!」


 なんか外野もそんなことを言っているけど、無視しておこう。


「最初の三十秒は、ルミナ先輩が動けないんだよね」

「うん、今のうちにアイテムを集めたり、隠れたりしないと」


 外野の声はほっといて、僕は僕がするべきことをしよう。

 ビルの影へと駆け出し、チェストを見つけてアイテムを集めていく。


 でも、ユイとの距離は常に意識しておく。近すぎると、捜索範囲が小さくなってアイテムを見つけることが出来なくなるし、遠すぎるとルミナ先輩に追われている時に、手助けできなくなってしまう。

 だから、ちょうどいい位置でいることは、何よりも大切だったのだ。


 そして――


「よし」


 ルミナ先輩が動き出す。

 別に、特段走るスピードが速いわけではない。でも、走ることが難しいルートでも問題なく走ってくるため、追われるとその内追いつかれることは確実だった。


(だからこそ、アイテムが重要なんだよね)


 この三十秒で、何個かアイテムを手に入れることが出来た。

 これを、しっかりタイミングを見計らって使わないと。


(でも、ほしいアイテムは手に入ってない)


 ずっと隠れるのもありだったけど、欲しいアイテムが手に入っていないため、それは出来ない。

 だから、リスク覚悟で動かないといけないのだ。


:ノアはアイテムを探し続けるのか

:勇気あるな!

:がんばれー!


 そう思って、僕はビルの裏手にある細い路地へと足を踏み入れた。

 チェストが置かれやすい隠しポイントだ。


:チェストないかな?

:こういう所はありそう

:でも、ちょっと怖いね


 うん、それはそう。ここは、周りを見渡すことが出来なくて、いつルミナ先輩が出てくるかわからないから、本当に怖い。……なんか、この言い方だとルミナ先輩がお化けみたいなってるけど。


 そうして、僕は細い路地でチェストを探していく。

 足音が自分のものなのか、誰かのものなのか分からなくなる。


(……大丈夫。まだ距離はあるはず)


 そう自分に言い聞かせながら、僕はゴミ箱の裏や、段ボールの隙間を覗いていく。


 その時――


「……あった!」


 小さなチェストが、壁の陰にひっそりと置かれていた。

 けど、その時――視界の端で、見たことの無い足跡が作られたのを見た。


(もしかしてっ)


 急いで走り出す。まだチェストの中身を見ていないけど、それくらいのことはどうでもいい。

 今は何よりも、自分の命を大事にしないといけない。


:えっ、どうしたの?

:チェスト見てないよ!

:あっ、もしかして


「へぇ、私に気付いたんだ」


 誰もいない、なにもない場所からルミナ先輩の声が聞こえる。

 そう、ルミナ先輩は透明化のポーションを使って、透明になっていたのだ。

 

(やっぱり……!)


 背中に冷たい汗が流れる。透明化しているルミナ先輩は、姿が見えない。

 でも――足跡だけは、わずかに残る。


 その足跡が、ゆっくりと、確実に僕へ近づいてくる。


(ニヤさんに教わっててよかった)


 視界の広さ。それは、何よりも重要なこと。ニヤさんから教えてもらってずっと鍛えていたけど、こんなに役に立つとは思ってもいなかった。


:すごっ

:よく気が付いたな!

:ノアも、ニヤ達側に足を踏み入れたかも


「ノアちゃん、大丈夫?」

「うん。けど、念のため近くにいてほしいかも」

「わかった」


 ユイが近くで待機してくれる。

 もしものことがあったら、アイテムを使って援護してくれるだろう。


 こうして、僕たちの戦いは始まったんだ。

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