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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
最愛の君へ

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116/124

Fromマサ&ユイト

「さて、第六戦がニヤの勝ちで二勝四敗に! でも、まだ一敗も許されない状況は変わってないよ。次は、近藤マサ&黒木ユイトVSルミナ・セレスティア! 二人とも、前に出てきなよ!」

「よし、次は俺たちの番か」

「フッ、我らの力を見せてやろう」


 ベオ先輩の声がスタジオに響き、マサさんとユイトさんが舞台上へと歩みだす。

 その歩みに緊張なんてものは一切見えず、自信と高揚感に満ち溢れていた。


「ノアにユイ、しっかり待っておけ。絶対に勝って帰ってくるからな」

「ああ、俺たちは二人で最強だからな!」

「……なんかフラグが立った気がするんですけど」

「しっ! 言っちゃダメ!」


:フラグwwww

:ユイトがいる時点でな……

:不憫枠がいるせいで、フラグになった説あるんだけど!


 本当に大丈夫なのかな?

 あの二人の実力を疑ってるわけじゃないんだけど、よくフラグを立てて失敗してたりするし、正直不安だ。


(そう言えば、ずるをするって言ってたけど、何をするんだろうか?)


 一応、社長に話を通して許可されたらしいけど、許可される程度のずるがルミナ先輩に通用するか分からないし、不安がぬぐえることは一度も無かった。

 でも、あの二人のことだ。きっとなんとかしてくれる……はず。


「それで、君たちはどうやってルミナに挑戦するんだい?」

「フン、我たちがするのは……」

「野球のビデオゲームだ!」

「我が喋ってる途中なんだが!?」


:www

:野球ゲームか

:意外だな


 へー、あの二人って、野球が好きなんだ。


「ちなみに、君たちは野球をやったことがあるのかい?」

「我がチームスポーツなんてするわけがないだろう」

「俺はテニスだな」


:なんで野球にしたんだよ!

:まぁ、Neoversに入る人がチームスポーツなんてするわけが無いか

:……否定できんな


「まぁ、君たちが決めたのなら、ボクは否定しないよ。準備も終わったようだし、席に着きな」


 ベオ先輩がそう言うと、マサさんとユイトさんは同時に頷き、まるで戦場に向かう兵士のような顔で席に座った。

 

「待たせたな」

「気にしないでいい。時間なんて、私に影響を与えないのだから」


:それはそう

:どうなるんだろ?

:マサユイト頑張れ!


「てことで、第七戦近藤マサ&黒木ユイトVSルミナ・セレスティアはじめ!」


 球場は、両翼百メートル、センター百二十メートル。センターからホームベースへ秒速三メートルの風が吹いており、ホームランが出にくい、完全に投手有利のコンディションだった。

 今回は時短のため二イニングのみ。

 マサさん達が先攻、ルミナ先輩が後攻だ。


「どっちから打つか?」

「それなら、我からいこう」


 まずは、ユイトさんがコントローラーを握る。

 

「ユイト、頼んだぞ」

「任せろ。打てばいいんだろう、打てば」


:いや簡単に言うな

:野球ゲームって意外と難しいぞ

:ユイトの自信はどこから来るんだ?


 まずは初球。外角低め、ストレート。


「フン」


:空振りwww

:おい!


「ユイト……?」

「今のは様子見だ。仕方がない」

「様子見?」


:様子見にしては狙ってたな

:強がるなよww


「二球目、投げるよ」

「ああ、問題ない」


 内角低め、外から来るスライダーが少し外れる。

 ユイトさんは、しっかり見逃した。


「――ぶなっ」

「ナイス! ボールよく見えてるよ!」

「やるな」


 三球目。内角に食い込むカットボール。

 ユイトさんは何とか食らいついてファールにした。でも……


「おいこんだぞ」

「ま、まだまだっ」


 四球目。外角低めにスプリット。

 ユイトさんは手を出せず見逃し三振。


:三振!

:手が出ず!

:せめて振れよ!


「悪い。いいって、まだチャンスはある」


 そして、バッターが変わり、マサさんがコントローラーを握る。


「こいっ!」

「声はいいな」


 マサさんの初球は、真ん中低めのチェンジアップ。

 マサさんは、ストレートのタイミングで強振していて、尻もちをついてしまう。


:まじか!

:山を張ってたのかよ


「まじか……」

「……結構読みやすかったぞ」


:おい!

:なんで読まれてるんだよ


 山を張ってるのを読まれたら意味が無いだろうに。

 そして、二球目。今度は、内角高めのつり球に手を出して、ツーストライク。


「しまっ……」


:つり玉に手を出すな!

:ユイト以上に悪いぞ


 そして、運命の三球目。内角低めのボール球に手を出し……けれど、何とかバットに当てて、打球が大きく上がる。

 打球はレフト後方へ。しかし、ボールは風に押し戻され、グラブに収まってしまう。


「低めのボール球を芯に当てるとは」

「ちっ、あとちょっとだったのに」


:おしい!

:凄いな、あれをあそこまで飛ばすなんて

:少しだけど、ルミナの予想を上回ったぞ


「後は頼んだ」

「ああ、任せておけ」


 ユイトさんの二打席目。初球は外角低めのカーブ。

 ユイトさんはしっかり流して、ライン沿いのファール。


:おしい!

:当たってるよ!


 二球目。内角低めのストレート。少し外れてボール。


「選球眼は良いな……」


 三球目。ど真ん中のストレート。

 ユイトさんは、驚いて振り遅れてしまい、ファール。


「しまった……」


:何してんだよ!

:今のは打てるだろ!


(そっか、予想外のボールが来て、手が止まってしまったんだ)


 ユイトさんは、観察眼が良い。そのせいで、予想を上回られてしまった時に、一瞬止まってしまう。

 ユイトさんの弱点を上手くついた形になるが、ホームランになるかもしれないボールを投げた、ルミナ先輩の勇気に息を呑んでしまう。


 そして、四球目。外角低めのチェンジアップ。

 さっきの残像が残ってたのか、ユイトさんは空振り三振に終わって、スリーアウト、チェンジ。


:手玉に取られてる……

:次は、ルミナのバッティングだろ

:何点取られるんだ?


 一回の表。マサさん達の攻撃だったはずなのに、ルミナ先輩の凄さが際立つ結果となってしまった。

 そして、次はルミナ先輩の攻撃。


「どっちから投げる」

「ああ、我から投げよう」


 どうやら、守りの時も一回ずつ交代して投げるようだ。

 でも、それなら二対一の意味が無いんじゃ……。


「さぁ、こい」


 ルミナ先輩の一打席目。初球、内角低めのシンカー。ストライクゾーンぎりぎりに決まってストライク。

 ユイトさんが捜査しているピッチャーは、右投げのサイドスローだ。


「良いコースだ」


:いいぞ、その調子

:いけいけ!


 しかし、二球目。外角低めの少し外れたスライダーを流されて、ライト前ヒット。


:まじかよ

:ミート打ち!?


「悪い、任せた」

「ああ、後は任せろ」


 次はマサさんが操作する。

 初球、内角高めのストレート。

 けれど――


「よし」

「は?」


 乾いた金属音が響いた。打球は高く、高く舞い上がり――レフトスタンドへ一直線。


:えええええええ!?

:初球ホームラン!?

:なんで打てるんだよそれ!


 0対2 しかも、まだ一度もアウトを取れていない。


:ルミナ化け物すぎ

:読めてたの?


 試合はまだ続いていく…………


――――――――――――――――――――――――


「なんとか、収まった……」


 スコアは0対5。

 コールドになる前に、何とか抑えることが出来たのだが、ルミナ先輩相手にこの点差はきつい。

 

「まだするか?」

「まだまだ!」

「たかが五点差。我たちなら余裕だ


:無理だろ……

:ルミナの勝ちか……


 視聴者たちはあきらめムード。

 正直、僕もここから勝てるとは思わない。


「マサ、一発ぶちかませ」

「ああ、わかったよ!」


 盛り上がっているのは、二人だけだった。

 けど、諦めていないのなら、まだ勝つ可能性は少しだけ残っている。


 初球、内角低めスプリット。

 マサ(マサ)さんは見逃して、ボール。


「あぶなっ」

「見逃した?」


 ルミナ先輩は予想を外したのか、首を傾げている。

 二球目、内角のストレート。マサ(マサ)さんは、バットに当てて、ライン際に落とした。


:ヒット!?

:走れ走れ!


 落ちた場所が良くて、ランナーは二塁に進む。

 五点差もあるけれど、ノーアウト二塁。反撃することは、まだできる。


「よしっ」

「いいぞ、後は我に任せておけ」


 そして、ユイト(ユイト)さんの初球。内角のチェンジアップ。

 しかし――


「フッ」


 打球は伸び、レフトフェンスに直撃する。


:打った!

:一点目!

:タイムリーツーベース!

:ナイス!


 これで、1対5 点差はあるが、またノーアウト二塁だ。


「初球を……」


 これもまた、ルミナ先輩の予想を外していたようで、首を傾げている。

 これなら、勝てるかもしれない。


 次、マサ(マサ)さんの打席。

 初球、なんとど真ん中のストレート。しっかりとらえて、センター後方――超えた! ホームラン


「しゃぁぁぁっぁっぁ!」

「よくやった!」


:3対5!

:いいぞ!

:しかも、まだノーアウト


 どうかしたのだろうか? あのルミナ先輩から、一気に三点も取ったのだ。


 次、ユイトさんの初球。これも、外角低めのスライダーを流して、ライト前ヒット。

 次、マサさんの初球。内角低めのスプリットを引っ張って、サードとショートの間を抜けようとしたところを、何とかショートが掴んで、ショートゴロ。ワンアウト二塁。

 次、ユイトさんの三球目。高めのつり玉を打って、レフトの前にぽてんヒット。ワンアウトランナー一三塁。

 次、マサさんが十球粘って、フォアボール。ワンアウトランナー満塁。


:すげぇ、勝てるぞ!

:ヒットで同点!


「まさか……いや……」


 あのルミナ先輩が動揺を隠せていない。あの二人はどんなことをしたのだろうか?


「さぁ、我が決めてやる」


 次、ユイトさんの初球、外角低めストレートを見送ってボール。


:いいよ、見えてるよ!

:フォアボールでも一点とれる!


 二球目。内角低めストレート。ファール

 三球目。外角低めカーブ。見逃し、ストライク。


:追い込まれた

:でも、まだある!


 四球目、背後から来るスライダーが内角低め。少し外れてボール。


:あぶなっ!

:その調子


 五球目、外角高めのストレート。食らいついてファール。

 六球目、外角低めスプリット。少し外れてボール。これで3-2。

 七球目、今度は内角高めのストレート。しっかり当ててファール。

 八球目、外角中断ストライクコースぎりぎりのストレート。ボールがバットが掠って、ミットに収まりかけるが、何とかミットから離れ、ファール。


 そして、勝負の九球目。


 互いに一言も発しないほど集中し、ボールが放たれた。


 それは、まさかの真ん中! ユイトさんは、今度こそ捉えるために、振り遅れずバットを振る。

 しかし、ボールはどんどん曲がっていき、外角低めに吸い込まれて行った。


(スライダー。でもっ)


 このまま行けば、ボールになる。バットを止めれば――


 けれど、バットは止まらない。次の瞬間には、ボールが打ちあがり、ライトの方へ高く飛んでいく。


「よしっ」


 ルミナ先輩が喜びの声を上げる。この飛距離だと、タッチアップをされるだろうが、それでも4対5。勝負は決まらない。


(あれ?)


 けれど、ボールが中々落ちてこない。少し、少しずつ伸びていき――


 ライトスタンドに突き刺さる。


「は?」


:逆転満塁ホームラン!

:7対5!

:すげぇ、あそこから逆転した


「ホームラン? ユイトが? 何故?」


 ルミナ先輩は、何でこうなったのか理解が出来ていないようだった。


「ナイス!」

「フッ、我の力、思い知ったか!」


 流れが一気にこっちにやって来た。

 これなら、もしかしたら勝てるかもしれない。


――――――――――――――――――――――――――


 二回裏ツーアウト二三塁。7対6


 あの後、ルミナ先輩は何とか落ち着いて後続を抑えた。

 でも、完全に落ち着けてはいなかったようで、次の攻撃ではツーアウトまでに一点しかとれていない。

 しかし、これが最終イニング。ヒット一回で逆転される。


「今度は俺だな」


 ピッチャーは、マサさん。操作するのは、左の変則フォームのムービング使いだ。


「……」


 ルミナ先輩は、これ以上ないほど集中している。

 そこから放たれる圧だけで、暴投してしまいそうなほど。


 初球。内角低めツーシーム。鋭い打球だが、三塁の横を通り過ぎて、ファール。


「ぶなっ」


 二球目。外角高めのムービング。バックネットに突き刺さるファール。

 三球目。外角低め、カットボール、バックドア。少し外れてボール、カウント1-2

 四球目。内角高めツーシーム、詰まらせてファール。

 そして、勝負の五球目


(マサさんなら、外角低めのストレート。あの人なら、絶対そうする)


 きっと、ルミナ先輩も、それを読むだろう。

 マサ先輩のことだから、最後はストレートで見逃し三振を取ろうとしてしまうはずだ。


 ボールが放たれた瞬間は、ただの外角低めストレートにしか見えなかった。

 回転も、軌道も、初速も。誰もがストレートの決め球だと信じて疑わなかった。


 ルミナ先輩のバットがそこを狙って回転してくる。


――だが。ボールが消えた。


「……スプリット?」

「しゃあああ!」


 バッター三振、ゲームセット! マサさんと、ユイトさんの勝利!


:すげぇぇぇ!

:ナイス!!!

:大金星!!!

:負けだと思ってた!

 

 初回に着いた五点差を、見事取り返して逆転勝利。

 視聴者も、僕たちも、誰も敗北を疑わない中で足掻き続けた、二人の勝利だった。


「な、ぜ……?」


 みんなが喜んでいる時、ルミナ先輩が疑問の声を上げた。

 

「何が、起きたんだ?」

「ちょっと、ずるしました」


 マサさんが正直に言う。

 そう言えば、あの二人はずるをするって、明言していたんだった。


「ずる?」

「はい、とある漫画で使われてた方法なんですけど、コントローラーを持つ人物を変えて、入れ替わってたんですよ。俺たち」

「それは考慮したけど、通用しなかった……」

「それは我の観察眼のおかげだな。入れ替わるタイミングは、我が観察することによって、ルミナ先輩に気付かれないようにしたのだ」


 それは、予想外の事実であり……とは言え、ずると言ってもとても小さなずるだった。

 けれど、この小さなずるは――。


「漫画では、心を読んでくる相手に使った戦法だったんですけど、ルミナ先輩は似たようなことできるでしょ? だから、うまく刺さるかなって」

「ちなみに、我の最後のホームランは、最後のボールだけマサに代わっていて、マサの最後のスプリットは、我が操作したボールだ」


 それは、こんな結果になってしまうだろう。ルミナ先輩は頭が良すぎて、相手の思考を完全に読み切ることが出来る。

 これは、シュウ先輩との戦いでも示されており、実際にマサさんたちとの戦いでもしていたのだろう。

 それが、一イニング目の0対5という結果を編み出した。


 しかし、二イニング目に入れ替わりを使い始めると、読みと現実のずれが出始め混乱してしまう。

 ルミナ先輩相手では、バレる危険性もあるが、そこはユイトさんの力で何とかすることで、ぎりぎり成り立っていた小さな戦法だった。

 

「ふふっ」


 その時、予想外の声が漏れた。


「あははっ、そんなっ……そんな戦法で私に勝つなんて」


 今まで聞いたことが無い、ルミナ先輩の笑い声だった。

 ルミナ先輩はいつも表情が変わらないから、冷たく笑わない人だと持ってた。でも――この姿を見ると、普通の女性の様に見えてしまう。


「ほんと、おもしろいよ。……おめでとう、二人とも。そして、ありがとう。私を楽しませてくれて」


 時が止まっていた。

 それほどまでに、ルミナ先輩の笑う姿は予想外だったのだ。

 視聴者も、僕たちも、社長やティア先輩でさえも。しかし、この中でいつも通り動けた人が一人――


「ということで、第七戦。近藤マサ&黒木ユイトVSルミナ・セレスティア、近藤マサ&黒木ユイトの勝利!」


 いつも通りのベオ先輩の声によって、第七戦は幕を下ろした。

 


 

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