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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
最愛の君へ

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115/124

Fromニヤ

「さて、次は第六戦――猫塚ニヤVSルミナ・セレスティア。ここまでで一勝四敗。ここからは一回でも負けたらルミナの勝ちが決定するよ」


:圧倒的すぎるな

:そう思えば、ティアが大金星すぎる


「ほんと、二期生が全滅なんてしなければ、もっと楽だったのにね」


:※ベオはまだ戦ってません

:炎上するぞ!

:ほんとのことだけど


「……すみません。ベオさん」

「社長! しっかりしてください!」

「一番追い込んでいましたから!」


 ベオ先輩の言葉に、社長がとっても追い込まれている。

 ほんと、ベオ先輩は言葉を選んでほしい。


「ところで、君はルミナに勝つ自信はあるのかい?」

「そうにゃねー。そりゃ、胸を張ってあるとは言えないにゃけど、それでも負けるとは思っていないにゃよ」

「へぇ、いいね。ルミナのことを過小評価も、過大評価もしていないところが、すごくいいよ」


:凄い自信

:正面からルミナに勝てる可能性があるのって、狂狼かニヤだけだし

:だよな。他の三期生も優秀なんだけど、相手がルミナだからな……


「挑戦するジャンルは?」

「もちろん、RTAにゃよ」

「だよね。絶対にそうすると思ってたよ」


:やっぱRTAだよな!

:互いにトップクラスだから、ほんとに楽しみ!

:ちょっとのミスが負けに直結するよな


「ルミナ先輩も、それでいいにゃよね」

「ああ、もちろんだ。私も、ニヤと競えるのを楽しみにしていた」

「にゃはは! ルミナ先輩にそう言っていただけるのは光栄なのにゃ。ま、勝つのはにゃーだけど」


 ニヤさんとルミナ先輩は、静かに……されど激しく火花を飛ばす。

 言葉は穏やか。表情も柔らかい。

 なのに、空気だけがピリッと張り詰めていた。

 そして――

 

「それでは、第六戦――始めっ!」


 ベオ先輩の掛け声と共に、試合が始まった。


:海スタート!

:宝か

:二人とも頑張れ!

 

 二人とも、まずは円グラフを出し、地中に埋まっている宝箱を探す。

 これは、マップレスという円グラフの反応で埋もれた宝を探す方法であり、今のRTAの主流の始め方だ。


:中身は⁉

:ダイヤ3鉄14金6TNT1秋サケ3

:TNTが埋まってるのは嬉しい!


 ルミナ先輩も、ニヤさんも、鉄の感圧版を作って、木の側でTNTを起爆する。そのおかげで、木や石を手に入れる時間を短縮でき、土などの足場替わりとなるブロックも手に入れることが出来るのだ。

 作った道具は、ダイヤピッケル、鉄斧、鉄シャベル、それとバケツのみ。

 あとは、ボートやドアなどの最低限の道具だけを使って、海の方へと走り出した。


:鉄剣は作らないんだ

:まだ作らないだけじゃね?

:たしか、フレイムが鉄斧クリティカルと鉄剣一回で丁度なんだよな


 そして、二人は海溝を探す。

 けれど、このマップは中々海溝が見つからず、お互いに手間取っていた。


:海溝どこ!?

:あ、あった!

:見つけれるか?


 もちろん、二人とも海溝を見つけ、ゲートを作るため、潜っていく。

 しかし、彼女たちは予想外の方法でゲートを作り上げた。


:は?

:一マス!?

:信じられない!


 普通、海溝でゲートを作る時は、ニマスのマグマブロックがあるところで作り始める。しかし、ニヤさんたちがゲートを作ろうとした場所は、一マスしかマグマブロックが無い場所だったのだ。

 そんなの、信じられない。二マスのマグマブロックがあるところでさえ、かなりの難易度があるのに、彼女たちはそれを超える難易度のゲート作りを本番で披露したのだ。


 地獄に入ったタイムは二分ちょうど。

 海溝を探すのに時間を取られてしまっため、地獄に入る時間としては遅いと言えるが、それでもここまでの動きは、みんなのことを圧倒し、魅了した。


:すげぇ……

:言葉で表せない

:この速度でミスなし……ほんとうに化け物だろ


 そして、地獄の地形は運がいい。普通の要塞だけでなく、廃要塞までもが入ってすぐの場所にあり、彼女たちは全力で駆け続ける。

 廃要塞の形はハウジング。この形は、速く攻略できる形であり、ちょっとのミスがより響いてしまう。


:チェストの中身は!?

:黒曜石がたくさん

:ナイス!


 ニヤさん達は、ヒグリンを怒らせながら、要塞を縦横無尽に駆け巡り、順調に金を集めていく。

 この攻略の仕方は、トップダウンといい、かなりヒグリンが集まる攻略であり、うまくいけばヒグリンたちが圧死してしまうほど集まってくれる。

 途中で、ゾンビヒグリンもいなかったし、お互いにうまくヒグリンを集めて交易をすることが出来ていた。


:どっちが早い!?

:ほぼ互角!

:あとは交易の運次第か……


 そして、交易が終わるのを待っている間に、二人はパールというワープをするためのアイテムを要塞の方に投げ、描写範囲を差証言に縮めた。これは、パールハングと言われる方法であり、描写距離外にパールを投げることで、後から描写距離を広げた時に着弾させるというかなりの時短になる技だ。


 そして、交易する場所に戻った時には、二人とも必要な物は揃っており、描写距離を広げることで、要塞へとワープした。

 しかし――


「チッ」

「にゃ⁉」


 ワープした目の前には、黒いスケルトンが三体と、遠くからカストが火の玉を撃ってくるという文字通りの地獄だった。

 黒いスケルトンから攻撃を受けないようにするために、足元にブロックを置き続け、スケルトンの攻撃が届かない場所に移動する。けれど、そんな場所はカストにとって、絶好の的だ。

 火の玉が、直撃し、ハートが残り1.5個まで減らされる。


 そして、ここで差が出てしまった。


 ニヤさんは、ハートが削られてしまったことで慎重な動きになったのだが、ルミナ先輩はむしろ大胆に動き始めた。

 それは、ルミナ先輩の技術に起因する動きであり、その動きのおかげで、ニヤさんに小さな……しかし、絶望的な差を作り出す。


:ルミナがリードした!

:RTAの数秒はでかいぞ

:ここからどうなる!


「……っ!」


 ニヤさんが、遅れを取り戻すために急いで走りだす。

 でも、差は一向に縮まらない。それもそうだ。互いに極限まで無駄を減らした者同士であるため、縮めることが出来る部分なんて、存在しない。


 そして、ルミナ先輩は野良で湧いたフレイムを狩って、二本のロッドを手に入れる。

 必要なのは、残り四本。この時間をどれだけ縮められるのかが勝負だ。


 ルミナ先輩がスポナーに辿り着く。スポナーの特徴として、プレイヤーが近づくと一~四体の敵モブがランダムでスポーンするという特徴がある。そして、今回湧いたのは三体。

 ルミナ先輩から見れば、運がよく、ニヤさんから見れば絶望的に運が無かった。


 いや、それだけじゃない。隣に別のスポナーもあった。

 これならば、フレイムベットというフレイムが湧く確立を上げる技術を使うまでも無く、一瞬でロッドを集めることが出来る。


:すげぇ

:十分切りあるんじゃね?

:それはもう確定だろ!


 そして、ルミナ先輩は六本のロッドを集め終え、黒曜石を使って現世に戻り、ボード測量という方法を使って、エンド要塞の位置を特定する。

 そこにミスは一欠けらも存在しておらず、どうしようもないほど、素早かった。


「……仕方がないにゃ」


 それに対して、ニヤさんはロッドを五本だけ集めて、ボート測量を始めた。まだ、倒していないフレイムが存在しているのに。

 それは、すなわちポータルに二つ以上のアイが嵌っていることを信じた分の悪い賭けであり、もしかしたら完走することすら出来ないかもしれない行動だった。

 けれど、そうでもしないと、この遅れは取り戻せない。

 ニヤさんの選択は、正しく、絶望的だった。


:並んだ!

:これはどうなるんだ?

:アイが二個以上嵌っている確率は34.1%!


 そして、二人とも特定した座標に移動し、素早くゲートを作る。

 出口はもちろんエンド要塞の中。Preemptive Navigationという円グラフを使う方法で、ポータルがある場所を探っていく。


:緊張する……

:どっちが勝つんだ?

:二期生や一期生だけじゃなくて、ベオやティアまで黙って見届けている……


 二人は同時にポータルを見つける。

 嵌っていたアイの数は二つ。ニヤさんの賭けは成功し、まだ戦いは終わらない。


:よしっ!!!!!

:まだあるぞ!!!!!!!

:勝負は、これからだ!


 エンドに入るタイミングも同時。

 しかも、左手に食べ物を持ちながら、ジャンプして入ることで、食べる時間すらも省略している。


 そして、今からするのはゼロサイクルというベット爆破でドラゴンを倒す技であり、パールを使って黒曜石の塔にワープして、ドラゴンが地面に降りてくる時間すら短縮する技である。

 これは、RTAの醍醐味と言える部分であり、これで全てが来まる。


 ニヤさんとルミナ先輩は、同時にパールを投げ、黒曜石の塔にワープする。

 そして、ソウルサンドと通常のブロックを交互に積むことによって、0.05秒という限りなく小さい時間すらも短縮し、より高い位置まで登っていく。


(ニヤさん、頑張れ!)


 僕は、心の中で、姉貴分のような人に声援を送った。


――――――――――――――――


(にゃはは……これはまずいにゃね)


 体感でわかる。エンドに入った時間は、ルミナ先輩の方が少しだけ早かった。

 誤差ともいえる小さな時間でも、その差で勝敗が決まるのがRTAだ。決して、無視できない。


(これでも、届かないのにゃ?)


 ここまで、にゃーは自分の持つ力の全てを使った。

 しかし、ルミナ先輩に届かない。この僅かな時が、限りなく遠い。

 

 でも! こんなところで挫けるのは、にゃーらしくない。それに、にゃーに憧れている人(朝霧ノア)がいるんだ。情けない姿なんて、見せてられない。


(ノア、見てるにゃよ! にゃーは今から、限界を超えて見せるにゃ!)


 エンドラの位置はバックの85。いつもなら、高さ95でセットアップをしている。

 でも、今回だけは、さらなる高みへと至って見せる。


:まじか!

:高さ99!?

:間に合うのか?


 間に合うとか、間に合わないとかどうでもいい。

 ノアに憧れた人として、最っ高の輝きを見せてあげるんだ!


:ルミナは95セットアップ!

:ニヤが成功させたら、ニヤの勝ちだぞ

:どうなる!?


 指先が震え、心臓がバクバクうるさい。ちょっと黙ってほしい、だって深呼吸する時間なんてないんだから。

……いや、今のやっぱなし。心臓(エンジン)はフルスロットルで動け。もっとアドレナリンを回せ。にゃーは今、人生で最高の時間(とき)を生きているんだから。


(にゃははっ! やっぱり、コレ(RTA)は、最高なのにゃ!)


 今を全力で楽しめ。だって、ここにいるのはにゃーだけ。

 この最高の舞台を、たった一人で味わっているのだから。


(にゃはっ! これなら、いけるにゃよね!?)

 

 ベット爆破の隙間に弓を挟むことによって、ドラゴンの高さを調整し、より近距離でベッド爆破のダメージを与えていく。

 一個、二個、三個……一回でもミスれば、高さ99まで来た意味が無い。


:あとちょっと!

:いけるか!?


 そして、ベットを五個使って、ドラゴンを倒しきった。


:やったー!

:ニヤの勝ちだ!


(勝った!? ……いや、まだ油断をするには早いのにゃ!)


 達成感が身を包む。

 でも、それに溺れたりはせず、全力で振り切って前に進む。


 何故なら、RTAはドラゴンを倒すことでは、タイマーが止まらない。タイマーが止まるのは、帰りのポータルに入った瞬間なんだ。

 世界記録を達成したはずなのに、ポータルに入る前に死んでしまって、記録が台無しになった人だって、存在する。


(最後の最後まで、油断しないのにゃ……)


 周りをしっかり確認して、ポータルが生成されるのを待つ。

 よし、襲ってくる敵モブはいない。これなら、大丈夫のはずだ。


 ポータルに入り、タイマーが止まる。

 けれど、ルミナ先輩がポータルに入ったのもほぼ同じだ。勝敗は、結果が発表されるまでわからない。


(お願い……勝っててくれにゃ!)


 そして、タイムが発表された。


 猫塚ニヤ 7:45

 ルミナ・セレスティア 7:46

 

「にゃはは……勝った……勝ったのにゃ」


 声にならない声。喉が震えるだけで、音が出ない。


 身体のエネルギーは、今ので全部燃え尽きた。


 でも――胸の奥だけは、まだ熱い。

 まだ燃えてる。


 画面の向こうで、コメントが爆発していた。


:ニヤ勝ったああああああ!!

:sub8!? 凄すぎだろ!

:すげぇ

:最高だよ! 二人とも!


「……おめでとう、ニヤ。私の負けだよ。しかも、真っ向から上回られた」


 ルミナ先輩が、にゃーのことを褒めてくれる。

 でも、素直に受け取れる気持ちにはなれない。


「で、でも、これはルミナ先輩の状況を見ながらやったからなのにゃ……。もし、ルミナ先輩の状況が見れなければ、ロッドも六本集めていたし、99セットアップなんてしなかったのにゃ」

「状況を見て判断できるのも、実力だよ。私がどう動くかを読み取って。自分の最適解を選んだ。それは運でも偶然でもない」

「にゃ、でも……」

「それに――」


 ルミナ先輩は、ほんの少しだけ微笑んだ。

 普段ほとんど表情を変えない彼女が、こんな顔をするなんて。


「私もニヤのプレイを見て、賭けの動きをしてくると分かっていたはずなのに、安定した動きを選択してしまったんだ」


 ルミナ先輩は、淡々とした声のまま、けれどほんの少しだけ悔しさを滲ませて続けた。


「だから、誇ったほうが良い。自ら挑戦した、その心の強さを」

「あれは、私にはできなかった判断だ」

「にゃ……」

「今日の勝利は、君が攻める勇気を持っていたからこそだよ」


 心が熱くなり、目に涙が浮かんでくる。

 ルミナ先輩に褒められた。その事実が、何よりもうれしい。


「それに、後ろを見たほうが良いよ」

「にゃ?」


 そう言われて、後ろを見てくる。

 すると、小柄な体がにゃーにぶつかって来た。


「にゃ!? ノアちゃん!?」

「ニヤさん、本当に凄かったです! すごく感動して、すごく熱くなりました!」

「ニヤさん、おめでとうございます。そういう所は、本当に尊敬しますよ」

「ああ、俺たちもニヤというすげぇ同期がいて、本当にうれしいぜ!」

「もちろん、我もだ!」


 ノアだけじゃない。同じ三期生全員が、にゃーのことを褒めてくれる。


「にゃ、にゃにゃ……!? み、みんな……?」


 急に押し寄せた温かさに、にゃーの頭が一瞬真っ白になる。

 ノアは、涙目のままにゃーの手をぎゅっと握った。


「ニヤさん……!本当に……本当に、かっこよかったです……!」

「にゃ、にゃはは……そんな大げさな……」

「大げさじゃないですよ! だって、憧れている人の最高の姿が見れたんですから!」


 その言葉が、何よりも嬉しくて、胸の奥がじんわりと熱くなる。

 にゃはは……クリアした時よりも、今の方が嬉しいよ。


「青春っていいよねー」

「ベオ、今いい雰囲気なんだから、水を差すな」

「げっ、ごめんごめん」


 外野がうるさいけど、そんなこと気にならなかった。

 本当に、心の底から嬉しかったから。


「ということで、第六戦、猫塚ニヤVSルミナ・セレスティア。なんと、猫塚ニヤの勝利!」


 そうして、にゃーの今までで一番の大舞台が幕を下ろした。


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