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TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
最愛の君へ

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113/124

Fromコウジ

「そして、次は第四戦。金剛コウジVSルミナ・セレスティア! さぁ、勝つのはどちらでしょうか?」


:コウジ対ルミナか、どんな勝負をするんだろう

:コウジだよな……あれしかないだろ

:筋肉は正義だからな……


「その内容、説明してくれるかい?」

「ああ、もちろんだ。俺が提案したのは、長時間の筋持久力勝負だ」


:あー、やっぱり来た

:これはコウジ勝つだろ

:男女の差を考えろ


「ほらほらー、言われてるよー。男女の差を考えろって」

「棒読みで言われたくない。そして、確かに男女差はある。だが低負荷の持久力は筋肉量の差がほとんど出ない。筋肉の質と使い方の勝負になるのだ」


:あ、意外と考えてる

:筋肉を信じすぎているけど、脳筋ってわけじゃないからな

:でも、地味な戦いになりそう


「……あ」

「アハハッ! コウジ、言われてるよー」

「……シュウとのジェンガがあった時点で、地味という面では問題だろうに」


:それはそう

:高度な読み合いがあったんだろうけど、伝わらなかったからな……

:それでも、面白かったけど


「まぁ、地味でも勝負は勝負だ。筋肉は派手さじゃなくて結果で語る」

「そうだね。それじゃあ、第四戦を始めようか。何で耐久するのか教えてよ」

「簡単だ」


 そうして、コウジは足を肩幅に開き、ゆっくり腰を落とした。


「低負荷スクワット耐久だ。浅めのスクワットを、どれだけ長く続けられるかの勝負だな」


:あー、それキツいやつ

:地味だけどガチで辛い

:やりたくねー


「いいね、それ。……あ、そうだ。ティア、こっちに来なよ」

「なに……?」


 ベオ先輩が、急にティア先輩を呼び出した。

 ティア先輩は、嫌そうな顔をしながらオ先輩の方へ歩いていく。


「……何の用?」

「ティア、君にもスクワットしてもらうよ」

「は?」


:え

:なんでティア?

:巻き込まれ事故発生

:ベオの無茶振りきた


「……なんで私まで?」

「だって、ルミナとコウジじゃ絶対に長引くから。一般的な引きこもりが必要かなって。あと、運動不足でしょ」

「一般的な引きこもり……」


:あってる

:正論

:引きこもってばかりで運動しないから


「よし、それでは始めようか」

「そうだな。善は急げ、今すぐやろう」

「待て、天才と後輩」

「アハハッ! いいよー、やれやれー」


:めっちゃ嫌がってる

:運動不足なのは事実だからな

:#ティア運動しろ



「ということで、第四戦、金剛コウジとルミナ・セレスティア(ついでにティア)の低負荷スクワット対決、始め!」

「……馬鹿狂狼め」


 そうして、三人のスクワット対決が始まった。


:ルミナとコウジ、どっちが勝つと思う?

:さすがにコウジじゃね? 男性で筋トレが趣味だし

:ティアの応援もしろよ!

:がんばれー(棒)


「はぁ……はぁ……」

「あれ? まだ十回もしてないよ」

「まだまだだな……」

「おすすめのプランを考えておこう」

「うる、さい……!」


:早すぎだろ

:引きこもりだからな

:よわーい


「……はぁ……はぁ……無理……!」


 ティア先輩が、ぷるぷる震えながらその場に崩れ落ちた。


「えっ、ティア先輩!? まだ十五回ですよ!?」

「十五回もだよ……! 普通はこんなにやらないの……!」


:ティア脱落早すぎ

:一般人の限界を見た

:いや、引きこもりだから平均よりずっと下だぞ

:なんか幼くなってる


「ふむ、ティアはここまでか。 じゃあ、ここからは――」

「そうだな、私たちの私たちの本番だ」


 そうして、彼らはスクワットを続けていく。

 二十回、三十回……九十回、百回――いや、もっと先二百回ちかくまで。いつまでたっても終わる気配が無く、決着がつく光景が想像できなかった。


:化け物すぎない?

:お互いにな

:コウジは筋トレしてるからわかるけど、ルミナもこれほど体力があるなんて


「……っ、はぁ……っ、はぁ……っ」


 すると、コウジの呼吸が、少しずつ荒くなっていく。

 汗が額を伝い、太ももがわずかに震え始めていた。


 一方で――


「……」


 ルミナは無表情のまま、一定のリズムで淡々とスクワットを続けている。

 呼吸も乱れず、姿勢も崩れない。



:コウジのフォームが乱れ始めたぞ

:差が出てきたな……

;ルミナはまだ余裕そう


「……っ、くそ……! まだ……まだいける……!」


 コウジは歯を食いしばり、無理やりリズムを立て直そうとする。


「コウジ」


 ルミナが淡々と声をかけた。


「体重の差などがあるから、どちらかというと、私の方が有利だったが、それでも君の動きには無駄があった。その差だよ」

「……っ、言ってくれるじゃねぇか……!」

 

 コウジは歯を食いしばり、呼吸を整えようとする。

 だが、太ももは明らかに震え、汗が滴り落ちていた。


「君はどれだけ耐えられるのかな?」


 ルミナは淡々と、まるで散歩でもしているかのようにスクワットを続ける。


:煽りが静かに刺さるタイプ

:ルミナ、まだ呼吸乱れてないの怖い

:コウジのフォームがもう限界近いぞ

:でも根性はあるんだよなコウジ


「……っ、はぁ……っ、はぁ……っ……まだ……終わってねぇ……!」


 コウジ先輩は震える脚を叩き、無理やりリズムを戻す。


「コウジ」


 ルミナ先輩が、ほんの少しだけ首を傾けた。


「何で君はそこまで頑張るの?」


 ルミナ先輩の声は淡々としていた。

 責めるでも、煽るでもなく――ただ、純粋な問い。


「……っ、はぁ……っ……そんなの……」


 コウジ先輩は震える脚を叩き、歯を食いしばる。


「壁を越えるのは、生き物の本能だ。親でも、目標でも、昨日の自分でも――超え続けて、前に進む。それが成長だろ……!」


 そして、コウジ先輩は一度息を吐いて、さらに言葉を続けた。


「だから……今日は勝たせてもらうぞ。ルミナ先輩」

「そう……せいぜい頑張りな」


 その言葉とは裏腹に、ルミナ先輩は心底嬉しそうな様子で言った。もちろん、表情は全く変わってないけど、何となく理解できたんだ。

 でも……。


「くっ……」


 三百回を超えた時、コウジ先輩が膝をついた。


「……っ!」


 本人も驚いたように目を見開く。

 支えようとした脚は震え、もう言うことを聞かなかった。


:あ

:コウジ……!

:ついに来たか

:三百は化け物すぎるよ……


「終了ー! 第四戦、ルミナ・セレスティアの勝ち!」


 ベオ先輩の声が響いた瞬間、ルミナ先輩はようやくスクワットを止め、静かに立ち上がった。


「……ふぅ」


 その呼吸は、驚くほど乱れていない。

 もちろん汗はかいていたけれど、それだけだ。疲れている気配なんて、微塵も見せない。まさか、身体能力でさえ、これほど別格だったとは……。


「お疲れ様」


 ルミナ先輩は、コウジ先輩に手を差し伸べる。

 その手は細くて白くて、スクワット三百回をこなしたとは思えないほど静かだった。


「……っ」


 コウジ先輩は一瞬だけ、その手を見つめた。 悔しさ、情けなさ、そしてどこか誇らしさ――いろんな感情が混ざったような表情をしていた。


「……悪いな。情けねぇ姿見せちまって」

「情けなくない」


 ルミナ先輩は、淡々とした声で言う。

 けれど、その言葉には確かな温度があった。


「三百回も続けたんだ。普通の人なら、とっくに立てなくなってる」

「……っ、はは……そうかよ」


 コウジ先輩は照れ隠しのように笑い、差し伸べられた手を取った。

 ルミナ先輩は軽々と彼を引き起こす。


:ルミナ強すぎ

:コウジの体重でそれはやばい

:この二人、なんか良いな……


「コウジ」

「なんだよ」

「待ってるから、また挑んで来い」

 

 ルミナ先輩は表情を変えずに言った。

 でも、その声はほんの少しだけ弾んでいた。


「……ああ。次は負けねぇ」


 コウジ先輩は、悔しさと嬉しさが混ざったような笑みを浮かべた。


:ライバル関係いいぞ

:静と熱のバランスが完璧

:次の勝負が楽しみすぎる

:ティアは?

:ティアは15回で死んでる


「悪い、負けちまった」

「いえ、凄かったですよ」

「ああ、我なら百回も持たない」

「ふっ、まだまだ」

「十五回のティアさんは言う権利ないと思うんですが……」

「うるさい」

 

 ティア先輩はそっぽを向きながら、ぷいっと頬を膨らませた。

 その仕草が妙に幼く見えて、周囲が思わず笑ってしまう。


:ティア拗ねてて草

:15回で死んだ人の態度じゃない

:かわいい

:でも運動しろ


 これで、一勝三敗。僕たちの挑戦は、かなり追い込まれていた。


――――――――――――――――――


 一瞬足の力が抜け、よろめいてしまう。

 しかし――。


「おつかれさま」

「……悪いな」


 横からベオが支えてくれる。コウジたちがいる場所から見えないように、視聴者たちにも気づかれないように。

 性格は悪いし、自ら進んで嫌われ役をやっているベオだけど、こういう所はありがたい。


「全く……君の悪いところだよ。限界近くまで追い込まれているのに、他人に一切隙を見せないなんて……」

「仕方がない。星になるためなのだから」

「……そういうところが、嫌いなんだよ」

 

 そうして、ベオは私を優しく椅子に座らした。


「あと、ボクを含めて残り四戦。絶対に、途中で折れないでよ」

「当然だ。私が私であるために、絶対に最後まで戦い抜く必要があるからな」



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