挑戦
「レディース&ジェントルメン、どうも皆さん、こんばんは。今日、この配信に集まっていただき、誠にありがとうございます」
:いえーい
:待ってたぞ!
:待って⁉ 司会が狂狼? 大丈夫か?
ついに、この日が来てしまった。今日は、Neoverse全員が集まるコラボであり、僕たちがルミナ先輩に挑戦する日だ。
ずっと僕たちは練習を続けて来た。それでも、まだルミナ先輩に勝てるイメージが湧かず、自信が持てない。
けれど、もう逃げることは出来ないのだ。全身全霊、全ての力を使い果たして、僕たちはルミナ先輩に挑まないといけない。
「アハハッ! やっぱりいいよねぇ、この挨拶は。最近は多様性に対する配慮のせいで、この挨拶をやめてたりするらしいけど、ボクは気にしないよ。だって、最高に楽しいんだから!」
:炎上するぞ、コイツ……
:この程度で炎上するなら、もうとっくにしてる
:狂狼のせいで、そういう奴は削ぎ落されたからな……
:ほんと、コイツが司会で大丈夫かな?
「まぁまぁ、炎上とか気にせずに楽しもうよ。だって、今日はNeoverse一期生から三期生まで、全員が集まったのだから!……もちろん、あの引きこもりもいるよ」
「うるさい黙れ狂狼」
「ああ、怖い怖い。妹分の同期に叱られてしまった」
:草
:ティアもいるんだ。良かった
:よく家から出て来たな
「さぁ! みんなは、今日のコラボで何をするか知っているかな? 知らないの? 勉強不足じゃない? まぁ、仕方が無いか。だって、ボクが情報が漏れないようにしていたのだから!」
:殴っていいか? コイツ
:今日も自由だなぁ……
:何故、司会を社長やシュウにしなかった……せめて、ユイやノアでもいいからさ
「アハハッ! 怒らない怒らない。牛乳を飲むことをお勧めするよ。ところで、時間も少ないことだし、さっそく今日することを発表しようか。本日するのはこちら――ルミナVS挑戦者たち! つまり、ボクたちがルミナに挑戦していくってわけだ!」
:マジ???
:うおおおおお!
:すげぇ、一度は見てみたかったやつ!
:あのルミナに勝てるのか?
チャット欄が、これ以上ないほどに盛り上がる。それは、みんなが僕たちの挑戦に期待している証でもあり、同時に背中を押す重圧でもあった。
胸の奥で鼓動が早まり、手先が震え、喉が渇いてくる。でも、これは緊張なんかじゃない。きっと、僕たちの挑戦に向けて、気持ちが高ぶっているせいなんだ。
「アハハッ! やっぱり、そう思うよねぇ。でも、今回のボクたちの勇姿を見届けてほしい。何故なら! 今日は、ルミナに敗北という二文字を焼き付ける日なのだから!」
:大口叩くなぁ
:でも、ほんとにできるのか? ベオなら可能性はギリあるけど、それ以外のメンバーが勝てるとは思えない
:それはそう、企画崩れなんてしない?
「へぇー、これでも信じられないんだ。ま、いいよ。だって、この配信が終わったころには、君たちが得意の手の平返しで、ボクたちを称賛しているのだから!」
:言ったな?
:がんばれルミナ! コイツにわからせてやれ!
:でも、ルミナが破れる姿も見てみたい。どっちを応援しようかな?
「さぁ、ここからはルールやスケジュールを説明していこうか。まず、ルールは簡単。挑戦者たちが自分で決めた分野でルミナに挑戦し、打ち破るだけ。簡単でしょ? そして、挑む順番はこちら!」
第一戦 ティア・ヴァレンティンVSルミナ・セレスティア
第二戦 社長VSルミナ・セレスティア
第三戦 浅神シュウVSルミナ・セレスティア
第四戦 金剛コウジVSルミナ・セレスティア
第五戦 日南田ヒナタ&大塚ツバサVSルミナ・セレスティア
第六戦 猫塚ニヤVSルミナ・セレスティア
第七戦 黒木ユイト&近藤マサVSルミナ・セレスティア
第八戦 月夜ユイ&朝霧ノアVSルミナ・セレスティア
第九戦 ベオ・オーリスVSルミナ・セレスティア
:おおー!
:初手がティアか予想外!
:社長も優秀だから、勝つ可能性はある
:お姉ちゃん、頑張れ!
:筋肉、筋肉なら勝てる!
:ヒナツバか、問題行動しそうww
:ニヤはやっぱりRTAだろうから、上位同士の対決が楽しみ!
:ユイトマサか、何するんだよう?
:ユイノアはやっぱり仲いいな
:狂狼が最後? 大丈夫か?
「アハハッ! みんな、思う所がたくさんあるんだねぇ。まぁ、期待しててよ! 最っ高のショーを見せてあげるから!」
:期待してる!
:なんだかんだ、周囲を煽るのが上手いんだよなぁ
:めっちゃ楽しみ
「さぁ、今から開始! とでも言いたいけど、やっぱりこれは大事だよね。ルミナ、良いよ。ボクたちに何か言ってよ」
そうして、マイクがルミナ先輩に映る。
その瞬間に、盛り上がっていた空気が一瞬で凍り、あのチャット欄でさえ止まってしまった。
それほどまでに、ルミナ先輩の圧がすさまじかったのだ。
「それなら、一つだけ。全力で私という壁を乗り越えてみろ。私が言うべき言葉は、これだけだ」
圧倒的な存在感――それは、言葉の数ではなく、彼女が放つ空気そのものだった。
挑戦者たちの名前が並んだスケジュール表が急に重く見え、誰もが「本当に勝てるのか」と心の奥で問い直していた。
僕の胸も強く締め付けられる。練習を積み重ねてきたはずなのに、ルミナ先輩の前に立つことを想像すると、足がすくむ。
けれど、もう後戻りはできない。挑戦者として名を刻まれた以上、逃げることは許されないのだ。
狂狼が再び声を張り上げ、張り詰めた空気を切り裂いた。
「さぁ! 第一戦、ティア・ヴァレンティンVSルミナ・セレスティア! 開幕だ!」




