表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生したぼっちJK、陰キャの僕がVtuber事務所で仲間と成長していく話  作者: 月星 星成
最愛の君へ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

105/125

苦労人2

「僕がNeoverseを設立したのは、ある二人の人物の影響です。その人物とは――ルミナさんとベオさんなんですよ」

「ルミナ先輩とベオ先輩……?」


 それは、少し……いや、かなり予想外の事実だった。僕は、てっきり社長が事務所を作り上げて、そこにベオ先輩たちが入って来たのだと思っていたのだが、実際は順番が逆だったのだ。

 とは言え、それはどういうことなのだろうか。影響というのが、どういうものだったのか、僕には少しも予想できない。


「それって、どういうことなんですか?」

「ははっ、さすがに説明不足でしたね。それなら、もう少し詳しく説明します。実は、ルミナさんとベオさんは大学の先輩だったんですよ。しかも、大学の中でもトップクラスに優秀な。だから、一方的ですけど、かなり尊敬していたんですよ。……もちろん、ベオさんの性格は尊敬していませんけど」


 社長とベオ先輩たちが同じ大学だった? それは初耳だったし、その大学がどれほど頭のいい大学なのかも理解できた。

 だって、ルミナ先輩やベオ先輩のような頭の良すぎる人たちもいて、大学生で企業して成功している社長までいる大学なんて、絶対に別格すぎる大学に決まっている。

 

 ただ、もしそうだとしたら、さらに疑念が深まってしまう。

 それほどまでに頭のいい大学なら、学歴という面ではかなりの利点があるはずであり、Vtuberという将来が不確定で安定しない職業などではなく、立派な大企業などにも就職できたはずなんだ。

 なのに、このVtuberという世界に入ってくるなんて、リスクに対するリターンが釣り合ってない。


「やっぱり、僕が起業した理由は予想できませんか?」

「そうですね。もし、僕が社長だったのなら、普通の大企業に就職していたと思いますし、起業するとしても、Vtuberという不確定な分野には足を踏み入れないと思います」

「ははっ、本当にそうですよね。昔の僕なら同じことを思っていましたし、両親にもかなり反対されて、勘当されかけましたから」


 社長は自虐げに笑っている。でも、両親から勘当されかけても起業したのは、冗談では済まされないほどの覚悟であり、何が社長をここまで動かせたのかとても興味がそそられた。


「それなら、なんで起業したんですか?」

「それはですね……ルミナさんとベオさん――いや、冴さんと莉緒さんに誘われたんですよ。一緒にVtuberの事務所を作らないかってね。もちろん、最初は断ろうとしていました。そんな不確定な道に進む気にもなりませんでしたし、何より僕には到底力不足の話だと思ったからなんです」

 

 社長は遠くを見つめ、懐かしい記憶を辿るように言葉を続けた。


「でも、あの人たちは僕に向かって、適任でこれ以上なく必要な人材だから誘ったと言ったんですよ。あの人たちのような、素晴らしく心の底から尊敬している人たちが。だから、もう僕には断るという選択肢が無くなったんですよね」


 その時の社長の表情は、心底嬉しそうなのだった。尊敬する人たちから必要とされる――それは、何よりも誇らしいことなのだろう。


「もちろん、僕たちの目的は全員違いました。僕はあの人たちに認められて、期待を応えたいという気持ちが原点であり、冴さんには冴さんの、莉緒さんには莉緒さんの目的がありましたから。でも、向いている先は同じで、それがとても嬉しくて、僕はここまで続けて来たんですよ」


 社長の言葉は、とても誇らしげで社長の言葉は、とても誇らしげで、同時にどこか決意を帯びていた。


「Vtuberの事務所を立てるのは全て初めてのことでしたから、何度も何度も失敗し、挫けそうになりました。でも、そのたびに原点を思い出して進んでいき、今いる社員の皆さんやティアさんと言った初期のメンバーが集まって、ここまで来れたんです」


 社長の声は穏やかだったが、その奥には確かな熱が宿っていた。

 

「……結局、僕一人では何もできませんでした。冴さんや莉緒さんに誘われて始めたことも、社員の皆さんやティアさんの支えがなければ、途中で終わっていたでしょう。だから、今こうして続けられているのは、仲間のおかげなんです」


 社長は少し笑みを浮かべ、資料の束を指で軽く叩いた。

 

「すみません、少し話過ぎましたね」

「いえ、良い話が聞けて良かったです」


 これは本心だ。Neoverseの設立とそれについての社長の考えを聞けて、僕は胸の奥がじんわりと熱くなるのを感じていた。

 この人たちのおかげで、僕は居場所を見つけることが出来て、前を向いて今を生きることが出来る。言葉だけだと、初期の努力がどれほどのものだったかは理解できないけど、その熱量は確かに伝わってきた。


(そんな人生、少しうらやましくて憧れるな……)

 

 社長たちが成し遂げたことよりかは小さくなると思うけど、試行錯誤して自分自身の意志で未来を切り開く、そんなプロジェクトを、いつか立ち上げてみたいと思えて来た。

 まぁ、今の僕では到底出来ないことだし、何年も先のことになるんだろうけど。それでも、心の奥底で芽生えた憧れは、確かに僕を前へ押し出していた。

 

「ここらで終わりにしましょうか。ノアさんも忙しいでしょう?」

「はい……でも、本当にありがとうございました」


 僕は深く頭を下げる。心の奥に芽生えた憧れと決意を、まだ言葉にはできないけれど、確かに感じていた。

 社長は少し目を細めて微笑んだ。

 

「挑戦は怖いものです。でも、挑戦したからこそ、見ることが出来る場所もあるんですよ。ぜひ、覚えておいてください」


 その言葉は、静かに、けれど確かに僕の胸に刻まれた。

 

 (……この話を聞けて本当に良かった。だって、挑戦したいという気持ちが芽生え始めたんだから)


 そう思いながら、僕は立ち上がり、社長に一礼して部屋を後にしようとした。

 けど、一つだけ疑問に思ったことがある。

 それを聞くために、僕はもう一度、社長の方を振り返った。


「最後に一ついいですか?」

「ええ、何でもいいですよ」

「なんで、僕にこのことを教えてくれたんですか?」


 そう言うと、社長は一瞬だけ考えこんだ。

 そして、ゆっくりと口を開く。


「そうですね、三期生であるノアさんにも、僕たち初期からいるメンバーの思いを知ってほしいということもありますし……僕たち三人の、ちょっとした理想のためですよ」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ