表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
TS転生したぼっちJK、Vtuberで人生逆転中  作者: 月星 星那
第一章 月夜ユイ

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

10/51

コラボ2

 それから、ボクたちは何個かマシュマロを返していき、気づけば笑い声が絶えなくなっていた。

 最初は緊張で声が震えていたのに、ユイと並んで話しているうちに、少しずつ肩の力が抜けていくのを感じる。


:二人の掛け合いおもしろい!

:ノアちゃん、最初よりリラックスしてる?

:ユイちゃんのフォローが神


「ふふ、いい感じに温まってきたね。じゃあ、そろそろマシュマロを終わりにして、二人でゲーム実況を始めようか」


:待ってました!

:ゲーム楽しみ!

:二人の掛け合いで絶対面白くなるやつ


「えっ……い、いきなりゲーム……? だ、大丈夫かな……」

「大丈夫大丈夫。ノアちゃんが下手でも、わたしがなんとか盛り上げるから」

「下手って決めつけないでください!」


 思わず声を張り上げると、コメント欄が一斉に笑いに包まれる。


:フラグ立ったw

:ノアちゃんの必死な抗議かわいい

:ユイちゃんの余裕っぷりw


「じゃあ、早速始めよっか。今日やるのは――」

 

 ユイがタイトルを読み上げると、コメント欄がさらに盛り上がった。

 ――緊張はまだ残っているけれど、不思議と胸の奥は少しだけ高鳴っていた。


「これ! テトラス!」


 ユイがタイトルを読み上げた瞬間、コメント欄が一斉にざわめいた。


:あー!落ちものパズルきた!

:初心者でもできるやつw

:ノアちゃん絶対連鎖できないでしょ


「えっ……テ、テトラス……!? む、むずかしいやつじゃ……」

「大丈夫大丈夫。ブロックを積むだけだよ。ほら、簡単でしょ?」

「か、簡単って……! 絶対に簡単じゃないでしょ!」


 必死に抗議するボクを見て、ユイはまた楽しそうに笑った。

 その笑顔に、コメント欄がさらに盛り上がる。


:ノアちゃんの動揺かわいい

:ユイちゃんの余裕が逆に怖いw

:これは波乱の予感……!


「じゃあ、いくよ。テトラス、スタート!」


 画面にカラフルなブロックが落ち始め、ボクの心臓も同じように落ち着かなく跳ねていた。


「えーっと、これをこうして……あっ、間違えた!」


 気づいたときには、ブロックが変な隙間を残して積み上がり、慌てて修正しようとするけれど、次のブロックがどんどん落ちてくる。テトラスのようなパズルゲームは、人生で一度もやったことが無く、初めてのことばかりでうまくいかない。

 だけど、ユイは今までにしたことがあったのか、スムーズにブロックを回転させては、綺麗にラインを消していく。


「ほら、こうやって隙間を作らないように積むんだよ」

「そ、そんな余裕ないですってば!」


 僕が必死にコントローラーを握りしめている横で、ユイの画面はどんどん整っていく。


:ユイちゃん上手すぎw

:ノアちゃんの盤面カオスで草

:この差よ……!


「わ、わわっ!? もう上まで積み上がっちゃう!」

「ふふっ、ノアちゃん、開始三分でゲームオーバーしそうだよ?」

「うぅ……! まだ諦めてませんから!」


 必死に抗うけれど、ブロックは無情にも積み重なっていく。

 そして、その後はみんなの予想通り、三十秒も立たずにボクは撒けてしまった。


「げ、ゲームオーバー……」

「ふふっ、わたしの勝だね。どう、別のゲームにする? わたしはどっちでもいいけど」


 落ち込んでいるボクを見て、ユイが勝ち誇ったように胸を張った。

 どうやら、ユイは今のボクの状態を見て、これならば負けることは無いと思っているらしい。

 だから、他のゲームに移って、一方的な展開にならないように――そう考えているのだろう。

 

 ――でも、配信を見てくれた人を楽しませるには、もっといい方法があるんだよ。それに、負けたままでは、ボク自身も納得できなくて、視聴者のためなら、緊張なんて捨ててしまえるだから。


「もう一回……もう一回させてください!」


 思わず声を張り上げると、コメント欄が一斉にざわめいた。


:おお、ノアちゃん本気モード!

:リベンジ宣言きたーー!

:これは盛り上がる予感


 さっきの対戦で、このゲームの遊び方は理解できた。

 理解さえできれば、あとはブロックを置いていくだけ。

 昔から、ボクは物事を理解するのが早いって褒められてきた。天才と呼ばれるほどじゃないけれど――追いつくことくらい、きっとできる。


 ユイが驚いたように目を丸くして、そして楽しそうに笑った。

 

「ふふっ、いいね。その目、さっきまでのノアちゃんとは違う。それなら、今度は手加減なんてしないからね」


 挑発するようなユイの笑みに、胸の奥が熱くなる。

 負けっぱなしで終わるわけにはいかない。今度こそ、視聴者の前で意地を見せてやるんだ。


:ユイちゃん本気宣言w

:ノアちゃんがんばれー!

:これは神回の予感


「望むところです……! 次は絶対に負けませんから!」


 強気に言い切った瞬間、チャット欄がさらに騒めいた

 コントローラーを握る手は、まだ震えているけれど、これはさっきまでの緊張じゃない――これは、武者震いなんだ。


「じゃあ……第二戦、スタート!」


 再び画面にブロックが落ち始める。

 今度は焦らず、形を見極めてから置く。

 ――大丈夫、もうルールはわかっている。ここからが本当の勝負だ。


「こう、こう……ここはこうして――よし」


 さっきまでの混沌とは違い、瞬く間にブロックが揃い、消えていく。それを見て、ユイが思わず声を漏らした。


「……おっ? ノアちゃん、さっきと全然違うじゃん」


:急成長してて草

:これほんとに同じ人?

:ノアちゃん覚醒モードきたーー!


(そりゃ、出来るようになりますよ。だって、見本が目の前にあるんですから)


 必死に指を動かしながらも、ユイの動かし方は見逃さない。回転のタイミング、置き方の癖――全部を目に焼き付けて、真似するように積み上げていく。


「よし……ここで、こう!」

「……えっ、ノアちゃんって、天才なの?」


:覚醒どころか進化してるw

:さっきまでのカオスはどこへ

:ユイちゃんも驚いてるの草


 違う、ボクは天才じゃない。天才と呼ばれている人は、自他の違いを理解して、その違いを命を懸けて伸ばしている人のことだから。

 ボクは、ちょっとだけ物事を理解するのが早い程度。中の上までしかできるようにならないし、そこまで到達するのは早いけど、超えていくのには時間が掛かる。だから、何度も早熟と言われてきた。

 でも、配信を面白くするためならば、それだけで十分だ。


「これは、やばいかも……」


 隣でユイの呟いている声が聞こえた。

 その声音は、冗談めかしているようでいて、ほんの少しだけ本気の色が混じっている。


「ユイさん、焦ってますか?」

「ちょ、ちょっとだけね! でも、まだ負けないから!」


:ユイちゃん動揺してるw

:心理戦w

:ノアちゃんの成長速度バグってる

:これ逆転あるんじゃ……⁉


 戦況は五分。

 けれど、ここまでが限界だ。これ以上の成長は望めない。本来ならば、まだユイの方が実力が上だけど、ボクの成長に動揺して、本来の実力を出せていない。

 だから、この先を分けるのは――技術でも運でもない。

 ただ一つ、ミスをした方が負ける。


 手に汗がにじんで、緊張で胸が弾けそうになる。でも、それはきっとユイも同じ。

 それに、ボクたちの踊りを視聴者に魅せていくんだから、つまらない終わり方なんて――許されない。


 そうしていると、ユイが小さなミスをした。

 本来なら二列同時に消せていたはずなのに、回転が一瞬遅れてブロックがずれ、結局一列しか消えなかった。

 

「……あっ」

 

 ユイの小さな声が漏れる。画面には消し残った段差が残り、わずかな綻びが広がっていく。

 その瞬間、胸の奥が熱く跳ねた。――チャンスだ。

 迷っている暇はない。次のブロックを素早く回転させ、狙いすました場所に落とす。

 カチリと音を立てて揃った瞬間、盤面が一気に三列消え、派手な光が走った。


「まずいっ……」


 その事実にユイが焦り、指先の動きがほんのわずかに乱れる。

 そのせいで、今まで滑らかに積み上がっていたブロックが、わずかな隙間を残して止まった。


「しまった……」



 そこから先は、一方的だった。

 焦りでユイの指先はわずかに遅れ、積み上げたブロックは次々と隙間を残していく。

 その隙間がまた焦りを呼び、悪循環のように盤面が乱れていった。


 一方で、ボクの手は止まらない。

 ユイの動きを横目で盗みながら、次のブロックを正確に回転させ、狙いすました場所に落とす。

 カチリ、カチリと心地よい音とともに、ラインが次々と消えていく。


「うそ……ノアちゃん、ほんとに……!」

 

 ユイの声が震えた。


:逆転劇きたーー!

:ユイちゃんが押されてる⁉

:ノアちゃん覚醒完了w


 そして、決着の時が来た。


「……勝った」


 思わずこぼれた声は、自分でも驚くほど震えていなかった。

 画面には、GAME OVERの文字。ユイの盤面が崩れ落ちていく。


「えっ……ほんとに負けちゃった……?」


:ノアちゃん初勝利おめでとう!

:神回すぎるwww

:ユイちゃんの負け顔かわいい

:リベンジ成功きたー!


 コメント欄が今までで一番の爆発を見せる。画面の向こうから伝わってくる熱気に、思わず胸が震えた。


「……ほんとに、負けちゃったんだ」

 

 ユイがそのチャット欄を見て、苦笑しながら肩を落とす。その表情は悔しそうで、目の奥に影が落とされていた。


:ユイちゃんの負け顔レアすぎるw

:ノアちゃんのガッツポーズかわいい

:これは伝説の回になるぞ


「や、やった……! 本当に勝てた……!」


 でも、勝利という甘美の酒に酔いしれていたボクは、ユイの瞳に落ちた影に――気づくことができなかった。


「ノアちゃん、おめでとう! 少し休憩する?」


 ユイは笑顔を作りながらそう言った。けれど、その声色にはほんのわずかな揺らぎが混じっていた。

 チャット欄はまだ熱狂の渦の中で、祝福と驚きの言葉が次々と流れていく。


:ユイちゃん優しいな

:でもちょっと悔しそう?

:この空気感たまらんw


「えへへ……ありがとうございます。それなら、少し休憩していいですか?」

 

 ボクは勝利の余韻に浸りながら、素直に頭を下げた。

 勝利の余韻に浸りながら、思わず素直に頭を下げる。

 胸の奥はまだ熱く、鼓動は高鳴ったまま――まるで舞台の上で喝采を浴びているような気分だった。


 けれど、その無邪気な言葉が、ユイの胸にどんな影を落としたのか。

 そのときのボクは、まだ知る由もなかった。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ