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第11話

「アレス!」


「アレス様……!」


 アレスに襲い掛かろうとするスライムに気づいたティオとコトリは彼を助けようとするが、スライムの残骸を回収しようとアレスが先に進んでいたせいで間に合いそうになかった。二人の声を聞いてそこで初めてアレスも自分に襲い掛かろうとしているスライムに気づくのだが、彼はそれに対して恐怖を感じることなく落ち着いた様子で小さく呟く。


「変身」


 アレスが呟いた瞬間、彼が担いでいる無反動砲に異変が起こった。無反動砲の表面を覆ってある動物の革が剥がれたかと思うと、動物の革は今度はアレスの身体を覆って形を変え、革製の全身鎧と化したのだ。


 そして革製の全身鎧を装着したアレスは、常人離れした速度で前方に跳躍してスライムの攻撃を避ける。この時の彼の動きは、スキルで身体能力を強化しているティオから見ても中々の速度に見えた。


「スライムを倒す時は、渾身の一撃を叩き込んで核のみを狙うか邪魔な粘液を削り飛ばす……でしたっけ?」


 スライムの攻撃を避けたアレスは、スライムが次の行動に移るより先にスライムに近づくと、担いでいた無反動砲をまるで巨大な鈍器のように掲げるとスライムに向けて勢い良く振り下ろす。アレスが振り下ろして鈍器と化した無反動砲の威力は凄まじく、スライムの粘液で作られた体を中央にある核ごと一撃で砕くだけでなく、そのまま床を強く叩き亀裂を入れるほどであった。


「ふう……。これでヨシ……と言いたいところですけど、スライムの粘液のせいでベタベタですね」


 スライムを無事倒せたことで安堵の息を吐いたアレスだったが、自分の攻撃で周囲に飛び散ったスライムの粘液が革製の全身鎧に付着していることに気づくと若干落ち込んでしまう。今アレスが装着している全身鎧は無反動砲の表面を覆っていた革が変形したもので、全身鎧の状態を解除すれば粘液まみれの無反動砲を担ぐことに気づいたアレスが若干落ち込んでいると、珍しく慌てた様子のコトリがアレスに声をかけてきた。


「アレス様! 大丈夫ですか!? お怪我はありませんか!?」


「ああ、コトリ。俺なら見ての通り……」


「申し訳ありません! 私がアレス様をお守りしますと言っておきながら、敵の奇襲を許してしまうだなんて!」


「えっ!? コトリさん? 一体何をしているんですか?」


 よほどアレスがスライムに襲われたことに動転しているようで、いつもの一呼吸置いてから話す話し方ではなく早口でアレスに話しかけるコトリ。そのコトリを落ち着かせようとするアレスだったが、言葉の途中で彼女は突然その場で土下座をしてきて謝罪をしてきた。


 アレスが一体どのようにコトリに声をかければいいか分からずにいると、そこに少し驚いた表情をしたティオが話しかけてくる。


「アレス……。その鎧って『アルマ』なのかい?」


 アルマとは一部の冒険者達が使用している装甲の一部がパワードスーツに変形する武器のことである。


 多くの冒険者達はパワードスーツを装着して身体能力の底上げをしているのだが、高レベルのスキルが使える冒険者がスキルで身体能力を強化するとパワードスーツの能力を遥かに超えて、パワードスーツは単なる足かせになってしまう場合が多い。しかしアルマの装甲が変形したパワードスーツは、冒険者がスキルを使うためのエーテルを動力源としていて、身体能力強化のスキルを使えばパワードスーツの性能も同時に強化されるようになっていた。


 アルマにはエーテルが動力源であるため、装着しているだけでもエーテルを消費して長時間装着できないという欠点がある。だがスキルで強化した身体能力に、同じくスキルで強化されたパワードスーツの性能が加わった冒険者の戦闘能力は凄まじく、アルマのパワードスーツを装着した冒険者はまさに一騎当千と言える存在なのであった。

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