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「改めて、そなたらに護衛を頼みたい。私の不在が知れる前に帰りたいのだ」

 ノア君は改めて偉そうに依頼してきた。


 私はライ君を見る。

 護衛の依頼なんて、私はわからない。

 ライ君はどう判断するんだろう。


「サザンティーヌ領までの護衛か。冒険者ギルドを通さない依頼になるのか」

「そうだ。公式記録に残したくない」


 なんだか事情があるみたいだけど、ライ君はちょっと難しい顔だ。

 公式記録に残らない護衛任務って難しいのかな。


 そうだよね。何かトラブルがあったとき、困るよね。




「オレひとりでもいいだろうか。それなりに護衛任務は慣れている」

「いいや、カエルクンに頼みたいのだ。魔力の心地よさと、人柄が信頼出来ると判断した。そなたも守人一族として信頼できるが、ひとりではトラブルに対処が難しいこともあるだろう。二人に頼みたい」


 ライ君の眉が寄る。

 そうだよね、私が護衛任務の手伝いって、やりにくいよね。


「そなたはカエルクンの秘密を守ってやりたいのだろう。これを引き受けてくれるなら、誰にも明かさないと魔法契約をしてもいい」


 うえーん、私の秘密がバレたから、引き受けるしかないみたいだ。


 ライ君が怖い顔になっている!

 なのにノア君は涼しい顔だ。なんて手強いんだ!




「カエルクン、どうせだから中の顔をちゃんと見せてくれないか。可愛い女の子だったと思うが」

 うえーん、中身が女だって、ばっちり見られてる!


 ライ君がさらに怖い顔なのに、平気なノア君。

 うわあ、ノア君つよい!


 私はちょっと口をとがらせて、でも仕方がないので着ぐるみのファスナーを下ろし、上半身を出した。


「ほう、そうなっているのか。面白いな!」


 ふくれっ面な私を見ているのに、ノア君は面白がる。

 なんだか意地悪そうだ!




「くくく、可愛いな。なあ、オレの嫁にならないか?」

「断る!」


 ノア君の言葉に、なぜかライ君が即答した。


 あ、うん。まあ、そうだよね。うん、お断りでいいよ。

 ライ君が言ったので、微妙な空気だけどね。


「いいじゃないか。沼地の一族、両性類のカエル君という妻。私は安らぎが欲しいんだ」


 あー、ようはノア君も、着ぐるみカエル君ボディに癒やしを求めているのだね。

 子供だものね。着ぐるみ大好きだよね


 わかるけど、嫁っていうのは言い過ぎだよ。

 着ぐるみはお友達くらいでいいと思う。


 ノア君は偉い人で、今は子供でも、そのうち立場のある人になるんだろう。

 そんな人の奥さんが着ぐるみなんて、みんな困ると思うよ。


 あと両性類が嫁っていうのも、どう扱えばいいのかわからないよ。

 カエル君は彼女扱いなのか彼扱いなのか、どっちなんだ。


 嫁っていうから、彼女扱いなのかなあ。


「くくく、私だけが可愛い中身を知る妻、面白い趣向ではないか」

 ノア君が何かを言っているけれど、考え事をしていたら聞き流してしまった。




「サザンティーヌ公の息子が平民の娘を嫁になんて、出来るはずがないでしょう」

 ライ君が言い返してくれた。

 そうだそうだ、偉い人のお嫁さんなんか、私には無理だ!


「下手な家から嫁を迎えるよりマシだ。今回の騒動も、招いた先で娘と閉じ込めて既成事実を、なんて考えた可能性もある。色々と面倒な立場なんだ。相性が良ければ平民でも、縁戚と養子縁組の上で嫁入りさせる手段もある」


 ん、既成事実って、何の?

 私が首を傾げていると、ノア君が笑った。


「カエルクンは、わからないという顔をしているな。やはりいいな。なあ、カエルクンはどうなんだ? 私の嫁という選択肢もいいと思わないか?」

「え、嫌だ」


 私の即答に、ライ君が隣でうんうんと頷いている。

 リョク君も私の肩で、うんうんと頷く。ライ君の真似みたいだ。


「なぜだ。毎日ごちそうが食べ放題だぞ」

「別にいいもん。食べたい物をちゃんと買うから」


 だって偉い人のお家なんて、窮屈そうで嫌だ。

 私に似合うとは思わない。


 街でパン屋さんや串焼き、スープやお菓子を買い食いするのがいい。




「それにノア君、子供だし」

「子供じゃない!」


 ノア君は少し怒った顔で言い返してきた。

 ええー、そう言われても子供だよ。


「くっ、魔力の状態はそろそろ安定してきているんだ。あと一年ほどか」

 ノア君、何かぶつぶつ言っている。

 そして顔を上げると、私に詰め寄った。


「子供だから断るのなら、一年後にまた申し込む!」


 いや、ノア君十歳くらいだよね。一年後でも子供だよ。




 そして結局、嫁問題はともかくとして、護衛は引き受ける羽目になった。

 その場でライ君とノア君が、私のことを誰にも話さないと、魔法契約をしていた。


 口止めのために護衛任務をすることになって、ライ君ごめんねー!









 ノア君は、守人一族の血を引いている。

 そのため狭間の森のショートカットルートを使えるらしい。


 ライ君と私が護衛で良かったと上機嫌で、狭間の森に入れる場所へ向かうために、いつもの街を出た。


「気を抜いても大丈夫な場所を通れるとは、快適な旅になるな!」

 ライ君が不機嫌で、私は困っていて、ノア君はご機嫌にリョク君と話す。


「そうか、そなたはドライアドなのか。本体と離れて平気なのか?」

『カエが名前をくれたのー! だからカエと一緒にいるんだよ!』

「ほう、絆ができたのか。相性のいい相手との契約でよかったな」

『カエの魔力、おいしいのー!』

「そうか。私もこれからはカエと呼ぼうか」


 勝手にカエと呼ばれることになった。

 ライ君がさらに不機嫌になるので、私はどうしたらいいのか困っている。




「ごめんねライ君。ギルドを通さない護衛任務って、引き受けるの困るよね」

「いや、それはたまにあるからいいんだ。でもあいつは気にくわない。カエ、気をつけろよ」


 ライ君はノア君と相性が悪そうだ。


 あと着ぐるみを嫁とか言う人だから、確かに扱いに困るだろう。

 ちょっと変な趣味があるみたいだから、気をつけようね!


「大丈夫。カエル君はみんなの着ぐるみアイドルだからね! ひとりで着ぐるみを独占なんて、させないからね!」


 遊園地でも子供たちに人気のキャラクターだったんだよ!




 ライ君は私の言葉に、困った顔になった。


「カエは、独占されるのは困るのか?」

「カエじゃないよ。カエル君は独占されると困るんだよ。人気キャラだからね」

「ん? カエの独占はいいのか?」

「私のことはライ君だけがちゃんと知ってるから、ライ君の独占かなあ」


 リョク君もだけど、ドライアドの子供だから、人とはちょっと違うからね。

 カエル君じゃないカエデとしての私は、ライ君だけが知っている。


 ノア君にも知られたけど、事故だ。

 この護衛任務だけの間柄だ。


 そう話すと、不機嫌だったライ君がにっこり笑った。


「そうか、カエはオレだけか!」

「そうだよ。人ではライ君だけだよ!」




 隣町を通り過ぎて、深い森の中に、狭間の森につながる場所がある。

 川向こうの方が近いけれど、あちらは獣族の土地で危険なのだ。


 隣町へ行く道も人目につかないよう、街道ではなく人通りの少ない道を通るので、魔獣も出る。


「カエル君パワー!」


 私がノア君を守りながら魔獣を退け、ライ君が縦横無尽に魔獣を討伐していく。

 うん、いいコンビだ!


 護衛任務ってよくわからなかったけれど、ライ君はいつもよりやりやすいと言ってくれた。


「カエがいると、安心だからな」

 おお、嬉しい言葉だね!




 ずっと森の中にいるのは大変なので、野宿をした翌日、隣町には寄ることにしていた。

 ノア君は野宿でも、文句を言わなかった。


 ベッドで寝ていないので、体は固まって痛いみたいだけどね。

 私はふかふかの着ぐるみのままで寝れば、快適なのだ!

 魔法で温度調整もされていて、温かいのだ!


「オレもその中に入りたいな」

 ノア君が言い出したけど、子供でも二人で入ったら狭いよ。


「許可するわけがないだろう! カエと密着なんて!」


 子供だからそれはいいけど、狭いから嫌だ。

 リョク君が入っているのは問題ないけどね。




 野宿の翌日、隣町に着いたら、ノア君はほっとした顔をしていた。


 いい育ちだから、そうだよねえ。

 森歩きはちょっとならいいけど、野宿は大変だよね。


 今夜は宿でゆっくり寝よう!

 そう思っていたのに、なかなかノア君は宿に向かってくれない。


「あれも見てみたい!」

 ノア君が強い護衛を従えてはしゃいだのか、勝手をし出したのだ。


「ええー、やだよ。早く宿に行こうよ」

「いいじゃないか! こんな機会はそうそうないんだ!」


 まあ、いいところの子供だと、自由に街を歩けることって、そうないんだろう。

 串焼きも食べたことなかったみたいだしね。




 カエル君グローブをつかんで、私を引っ張り回している。

 またもライ君が不機嫌だ。


「ねえねえ、もう宿に行こうよ-」

「ほらカエ! あれ可愛いだろう! カエも見たいよな!」


 ノア君が指さす先には、小さなヒヨコがいた。

 あ、可愛い!


「なんのヒナかな。可愛いね!」

「従魔の子供だ。ヒナから慣らして、いずれ従魔にするんだ。従魔の行商もあると聞いたが、あれがそうだろうな」


 従魔というのがわからないなと首を傾げると、ノア君はリョク君を指さした。


「カエはリョクが従魔だろう」

 おお、リョク君に名前をつけて、絆ができたのが従魔契約というものらしい。




「あの鳥は、手紙を運んでくれる。従魔としてよくある生物なんだ」

「へえ、賢い鳥さんなんだねえ」


 ノア君に手をひかれるまま、ヒヨコを見た。

 ピヨピヨ鳴いていて可愛いな。


 よく見ようとカエル君の大きな口から覗いていると、目の前の子がピヨッと高く鳴いて、私に向かって飛び込んできた。


 あ、ピヨピヨ私に懐いてくれてる! 可愛い!

 自分の手を着ぐるみから抜いて、ヒヨコを撫でる。

 フワフワした毛並みが本当に可愛い!


「オオオオイっ! ヒヨコ食べちまったよ! 腹の中で鳴いてるよ!」


 ヒヨコの露店の人が、慌てて声を上げた。

 あ、しまった。人から見るとそうなるんだよね。


 リョク君のときも、食べちゃった疑惑をかけられたからね。




「食べてないよ」

 私がカエル君の口からヒヨコをそっと出すと、ライ君が受け取ってくれた。


「え、口の中で遊ばせてやっているのか! まあ、温かい場所が好きだから、口の中もありなのか」


 露店の人はちょっと戸惑っている。

 混乱させて、ごめんね。


あと一話で終わります!

できれば今日中に!

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― 新着の感想 ―
ピヨちゃんが食われた!?   スパーーンッ!!! と、カエル君の後頭部を叩きそうになりますね……(ドキドキ) まだ飛ぶのがヘタだったヒナの頃の愛鳥(オカメインコ)が床に不時着したら、愛犬(柴犬)が、…
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