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踏み台令嬢に転生したのでもふもふ精霊と破滅フラグを壊します! 気づけば王子様ホイホイ状態なんですが!? 完結  作者: まほりろ・コミカライズ配信中・ネトコン12、GOマンガ大賞受賞
二章「学園編&陰謀編」

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57話「一件落着」




事件の後処理をしなくてはならない。


親子鑑定の魔道具のことも、ルシアンが闇の精霊だということも、これ以上広まらないようにしないと!


親子鑑定の魔道具について情報を整理しよう。


親子鑑定の魔道具のことを知っているのは、前国王、コレット、エドモンド、ユリウス、私、ルシアンの6人のみ。


前国王は幽閉され、コレットとエドモンドは投獄された。ここから広まることはない。


ユリウスもルシアンも私も口外しない。


親子鑑定の魔道具のことが世間に広まる心配はない。


次はルシアンが闇の精霊だと知っている人間について整理しよう。


ルシアンが闇の精霊だと知っているのは、私、ユリウス、カイム、コレット、エドモンドの5人。


前述したように、コレットとエドモンドは投獄されたので問題ない。


問題はヴァルトハイムの王太子カイム。彼にルシアンが闇の精霊だと知られてしまったことだ!


よりによって一番厄介な人物に知られてしまった!


ユリウスとルシアンの話では、彼は闇の精霊を相当嫌悪していたそうだ。


あれだけ私のことを「愛してる」とか「白衣の天女」とか言ってたくせに、私が闇の精霊と契約していると知った途端に、掌を返し罵詈雑言を吐くってどういうことかしら?


本当に信じられない!


カイムの言葉も想いもそれだけ薄っぺらいということね!


あんな男、振って正解だわ!


それに比べてユリウスの懐の広いこと。


ユリウスはルシアンが闇の精霊だと知っても、変わらずに愛してくれると誓ってくれた。


私の中で、ユリウスの株は出会った時からずっと上昇している。


対して、もともと低かったカイムの株は地の底まで落ちた。


相手は隣国の王太子。


こちらの権力は通用しない。


さて、どうやって切り抜けたものかしら?





◇◇◇◇◇




ユリウスの部屋に戻ると、カイムがソファーにふんぞり返っていた。


そして、ヴァルトハイム国王と、シャルロット王妃がいらした。


お二人は相変わらず仲睦まじく、ソファーに密着して座っている。


成人した後もこれほど距離が近い兄妹も珍しい。


二人の距離が近すぎるが故に、前国王は王妃殿下の不貞を疑ったのだろう。


「俺が父と叔母を呼んだ!

 闇の精霊ルシアンと、それを使役するアンジェリカを罰して貰うためにな!

 アンジェリカを庇うユリウスも同罪だ!」


カイムがこちらを見て、にたりと笑う。


前国王が幽閉された今、この国で一番えらいのは王妃だ。


彼女に咎められるのはまずい。


というか、ルシアンが闇の精霊だとさっそく二人に知られてる!


やはりカイルの口を封じるしかないわね!


でも、どうやって?


「さぁ、父上、叔母上、奴らに重い罰を……ぎゃぁっ……!」


カイルはヴァルトハイム国王からのげんこつをくらい、頭を押さえていた。


かなり鈍い音がしたけど、アホ王太子は大丈夫かしら?


「ブライドスター王国は、ヴァルトハイムの同盟国。

 しかも親族が治める国だ。

 ユリウスは次の国王、アンジェリカ嬢は次の王妃だ。

 彼らを貶め、悪い噂を流す必要がどこにある」


ヴァルトハイム国王が威厳のある態度で、カイムを睨みつけた。

 

叱られると思っていなかったのか、カイムは背中を丸めている。


「闇の精霊ことルシアン殿には、我が国も大変お世話になった。

 ルシアン殿とアンジェリカ殿がいなかったら、スタンピードと疫病で我が国は滅んでいただろう。

 それから、カイムはドラゴンに殺され、シャルロットはブライドスターの前国王に毒殺されていた」


ルシアンに救われたことを指摘され、カイムが息を呑む音がした。


「だ……だが父上。 

 それでも闇の精霊を見過ごすことはできない!

 闇の精霊は過去にいくつもの国を滅ぼしている危険な存在だ!」


カイムがヴァルトハイム国王に意見した。


過去にルシアンがしてきたことが、問題になるのはわかっていた。


それでも、私にはルシアンが必要だった。


ルシアンは私の親友。今まで助けて貰ったのに、見捨てるなんてできない。


罪を問われるなら彼と共に罰を受ける覚悟だ。


「カイムの言うことにも一利ある。

 だが、過去に召喚された闇の精霊と、ルシアン殿は本当に同一の個体だろうか?

 過去に召喚された闇の精霊は、国に災いを振りまいたが、ルシアン殿は国を救っている。

 別の個体だと考えるのが妥当だ」


そうか、「闇の精霊は一体ではなく複数いる」そう主張すれば、過去の罪から逃れることが出来るわ!


「父上、そんなのは屁理屈だ!」


「では、カイムに問う。

 お前は過去に召喚された闇の精霊と、ルシアン殿が同一個体と証明できるのか?」


「そ、それは……」


カイムは額に汗を浮かべ、ヴァルトハイム国王から視線を逸らした。


「できないだろう。

 できるはずがないのだ」


「……」


カイムは押し黙ってしまった。


ヴァルトハイム国王の言う通りだ。


誰も過去に召喚された闇の精霊と、ルシアンが同一の個体だとは証明できない。


唯一証明できるのはルシアン本人だけだが、自分の不利益に繋がる発言はしないはずだ。


「カイムよ。

 属性になんの意味があるのか?

 闇=悪、聖=善、というものでもあるまい。

 闇の精霊であるルシアン殿は、シャルロット、ユリウス、カイムの命を助け、スタンピードと疫病から大勢の命を救った」


そう、ルシアンが何者であろうとその事実は変わらない。


「対して罪人コレットはどうだ?

 彼女は聖なる力を授かりながら、悪事に加担し大勢の者を苦しめた。

 シャルロットとユリウスを殺す為に毒薬を生成し、悪意を持って結界を張りヴァルトハイムにスタンピードを起こした」


コレットは、聖女の地位を剥奪されても仕方のないことばかりしている。


「ようは、属性よりも力の使い方だ。

 そうは思わないか?」

 

「……」


カイムはぐうの音もでないようで、肩を丸め俯いている。


「とは言え、ルシアン殿が闇の精霊であることを公表し、いたずらに民の動揺を生むこともあるまい。

 幸い、ルシアン殿が闇の精霊だと知っているのはここにいる5人と、牢屋にいるエドモンドとコレットのみ」


少人数しか事実を知らないのがせめてもの救いだわ。


「ここにいる者はむやみに公言しないだろう。 カイムは吾が教育し直す。

 再教育が終わるまで、部屋から出さないと誓おう」


ぜひ、そうしてください。


ヴァルトハイム国王には、カイムの再教育を頑張ってもらいたい。


「エドモンドとコレットは既に投獄されている。

 彼らの世話を口の利けないものにさせれば、問題あるまい。

 万が一のことがあったとしても、彼らは罪人。

 罪人が何か言ったところで誰も信じまい」


そう、彼らは罪人であり敗北者。


ユリウスや私が不利になることを口にしたところで、負け犬の遠吠え。


虚偽の発言として、まともに相手にされないだろう。


「しかし、ルシアン殿が不思議な力を持っていることは隠し通せないだろう。

 大分、目立つ働きをしたようだしな」


ヴァルトハイム国王が私とルシアンを交互に見る。


ドアの粉砕とか、白昼3階の窓から飛び降りたりとか、色々やらかしてます。


「議会に参加していた貴族は、ルシアン殿が精霊だと知っている。

 国民に公表して問題ないだろう。 

 無論、闇属性であることは伏せてな」


そうね、下手に隠して勘ぐられるより、公表してしまった方がよいかもしれない。


精霊の属性なんて、誰も詳しく知らないだろう。属性のことなどいくらでもごまかせる。


「ユリウス、アンジェリカ、異論はあるかな?」


「ありません。

 アンジェリカはどう思う?」


「わたくしもございませんわ」


「ルシアン殿もそれでよいかな?」


ヴァルトハイム国王がルシアンに尋ねる。


『おう』


私の膝に頭を乗せ体を休めていたルシアンが、ふわりとしっぽを上げた。


『アンジェに罪が及ばなくて、アンジェとこれからも一緒に暮らせるなら俺は何でもいいぜ』


ルシアンの顎を撫でると、ゴロゴロと喉を鳴らした。


「私もルシアンやユリウス様や家族とこれからも暮らせるなら、それが一番だわ」


良かった。


これでまた、ルシアンと一緒に暮らせる。


ルシアンが助かったのは、彼に悪い事をさせなかったからよね?


今までルシアンと一緒に善行を積んできて本当に良かった。心からそう思う。


「お兄様、ブライドスター王国とユリウスとアンジェリカの為のご配慮、心より感謝申し上げます」


王妃がヴァルトハイム国王に頭を下げた。


「なぁに、可愛い妹との為だ!

 これしきのこと何でもないさ!

 ついでに甥と甥の婚約者候補の為にもなるしな」


ヴァルトハイム国王は、頬を緩め、口を開けて笑った。ヴァルトハイム国王は妹に激甘だ。


前国王も、この二人の間に割って入れず苦労したことだろう。


前国王が愛していたのは、逝去した愛人のイリス様だけだ。


それはそれとして、正妻が自分より兄にベッタリなのは面白くなかったはずだ。


前国王は器が小さい。





◇◇◇◇◇◇




『アンジェ、親子鑑定の魔道具の処分はどうするんだ?』


ルシアンがポツリと呟く。


「親子鑑定の魔道具とはなんだ?」


ヴァルトハイム国王が興味を示した。


ヴァルトハイム国王には親子鑑定の魔道具のことを説明していなかった。


ここまで知られたのだから、魔道具のことを説明しても良いでしょう。


彼らも、この件の関係者ですからね。


私は親子鑑定の魔道具について、簡単に説明した。


「なるほど、だいたい話はわかった。

 ブライドスターの前国王が、元聖女にそんなものを作らせていたとはな」


ヴァルトハイム国王が眉間に深い皺を作り、神妙な面持ちで顎を撫でた。


「あの方は、私がお兄様と通じていると思っていたのですね。

 ユリウスが私とお兄様の子だと疑っていたなんて……気味が悪いわ」


王妃が眉根を寄せ、口元を引き結んだ。彼女が怒るなんて珍しい。


「あの方が私とユリウスを蔑ろにした理由がよくわかりました。

 あり得ない考えに囚われ、事実確認することもなく、ユリウスの毒殺を図ったこと、到底許容できませんわ」


王妃が目尻を釣り上げ、プリプリと怒っている。


こう言ってはなんですが、怒る姿もなんとも愛らしい。


実を言うと、私もちょっと二人の関係を疑っていました。


王妃は「子作りは好きな人とした方がいい」と言っていた。


王妃は前国王を好いていたようには見えない。憎んでいるというより、前国王を空気のように扱っている。


対してヴァルトハイム国王とは、兄妹にしては距離が近すぎる。だからもしかして、兄妹でそういう……。


でも親子鑑定の魔道具で、ユリウスは前国王の子供だと判明した。


こういうのを下衆の勘繰りというのよね。私の思考のレベルは前国王と一緒だったようです。反省します。


「母上は、父を……前国王を愛していたのですか?」


ユリウスがド直球な質問をした。


彼は真っ直ぐに王妃を見つめ、膝の上で手をきつく握っていた。


ユリウスもずっと自分の出自について悩んでいたに違いない。


こういう機会でもないと聞けないので、思い切って口にしたのだろう。


彼の気持ちを考えると切ない。


「愛していたわ」


王妃の口から意外な言葉が飛び出した。


「初日だけですけど」


……? どういう意味かしら?


「母上、初日だけというのは?」


「あの方は、初夜が済んだ後私にこう言ったのですよ。

『俺が愛するのはイリスだけだ! お前のことは正妻だから抱いてやっただけだ勘違いするな!!』と……」


あーー、それ言っちゃったのね。


小説だったら、離縁されてざまぁされる確定のフラグだわ。


「懐妊を知らせたあとの言葉はもっと酷かったわ。

『これで夫としての役割と、ヴァルトハイム王国への義理は果たした! イリスとの間に子供を作ることができる!』

 そう言って高笑いしていたわ。

 それ以来、私のもとには尋ねてこず、夜はイリス様のいる離宮に籠もってしまいました。

 こんなこと言われたら、誰だって100年の恋も冷めるでしょう?」


それは……なんとうか、想像していた斜め上を行くクズっぷり。


「あの方は、ブライドスター王国をお兄様が訪ねて来るときだけ私に興味を示したわ。

 仲違いしてると思われたくなかったのかしら?  

 でも普段の態度があんなだから、あの方が訪ねて来ても知らんぷりしたの。

 御相子(おあいこ)よね?

 そうしたら、何故かあの方は不機嫌になっていたわ。

 私のことなんか捨て置けば良いのに、おかしいわね」


前国王が王妃に興味を示したのは、ヴァルトハイム王国への体裁のためなのか。


それとも、嫉妬からだったのか。


どちらにしても、親族が訪ねて来たときだけ良い顔をしても遅いのだ。


「お兄様が来訪した時に、沢山お話を聞いてもらっていたのです。

 他人に聞かせられる話ではなかったので人払いをしていました」


当時の国王への悪口なんて、身内以外に聞かせられないわよね。


「では伯父上が来訪した時、お二人が離宮に籠られていたのは……?」


「お兄様に愚痴を聞いてもらっていたのよ。

 他になんの理由があるの?」


「王家の愚痴は外部にはもらせないからな。

 まだ幼かったユリウスには、大人の醜い争いを見せたくなかった。

 なので、そなたも離宮には入れなかった」


「そうだったのですね」


ユリウスは短く息を吐き、安堵の表情を浮かべた。


緊張が解けたようで、肩が下がり、唇も緩んでいました。


ユリウスは前国王に容姿が似ていなかった。


そのことに悩んでいたのだろう。


自分とそっくりな容姿の伯父がいて、母親との距離が近すぎれば、己の出自が心配になるのは当然です。


きっと、心無い大人に酷い言葉を言われたこともあるのでしょう。ユリウスの心の傷は深そうだわ。


私が癒せると良いのだけど。


私はユリウスの手に自分の手を重ねた。


ユリウスは一瞬目を見開き、緩やかに目を細めた。穏やかに口角を上げ、私の手を握り返してくれた。


みんなの前なので、ちょっと照れくさいです。


王妃とヴァルトハイム国王に視線を向けると、彼らも手を繋いでいました。


うーん、やっぱり兄妹にしては距離感がおかしいのですよね。


微笑み合うその姿はまるで……。


ヴァルトハイム国王は、自国の城に隠し部屋を作り、シャルロット王妃の肖像画を飾っていた。


妹が嫁いだ寂しさからだと思っていましたが……。


……忘れましょう。


せっかくいい感じに纏まりかけている空気を、壊すこともありません。


この秘密は、ルシアンと共に墓場まで持っていくことにします。




読んで下さりありがとうございます。

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