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踏み台令嬢に転生したのでもふもふ精霊と破滅フラグを壊します! 気づけば王子様ホイホイ状態なんですが!? 完結  作者: まほりろ・コミカライズ配信中・ネトコン12、GOマンガ大賞受賞
二章「学園編&陰謀編」

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29話「再び王宮への侵入。ユリウスの決意」




その日の夜、カレンベルク公爵邸。


「服装よし! 仮面よし! 荷物よし!」


以前街で購入した黒の冒険者服に、袖を通し、目元が隠れる仮面を装着した。


ユリウスから招待されたとはいえ、昼間に正門から堂々と入るわけではない。


ユリウスと王妃を害そうとする人間に気づかれないように、夜中にこっそり忍び込むのだ。


目立たない服装の方がいいと判断しました。


「頼まれたのは解毒ポーションだけだろう?

 そんなに持っていく必要があるのか?」


解毒ポーション、万能薬、エリクサーを数本ずつショルダーバックに詰めた。


「頼まれたのは王妃様の解毒ポーションだけだけど、もしかしたらユリウス様も毒に侵されてるかもしれないしね。

 二人が何らかの病気にかかっている可能性もあるから、万能薬も必要かなって。

 それから、万が一に備えてエリクサーも持っていこうかなと」


『ユリウスのことになると、急に心配症になるよな』


「うっ……」


『その、弁当も持っていくのか?』


ルシアンがバスケットに鼻をつけ、ふんふんと匂いを嗅いでいる。


シェフに頼んでバスケットかごいっぱいにサンドイッチとマフィンを詰めてもらった。


それから、リンゴやオレンジなどの果物をカットして詰めて貰った。


水筒にハーブティーを淹れ、カップも二つ用意した。


「ユリウス様も王妃殿下も、毎日毒を盛られる恐怖に怯えてるんだよ。

 王宮に味方もほとんどいないだろうし、外から調達したものを食べるのにも限界があるかなと思って」


安心してご飯を食べられないと言うのは、想像している以上のストレスのはずだ。


『アンジェは本当にお人好しだなぁ〜〜。

 まさか毎日弁当を届けるつもりじゃないよな?』


ルシアンにジト目で睨まれぎくりとする。


「だめかな?」


学校では、人目があってなかなかユリウスと二人きりになれない。


挨拶くらいはできるだろうけど、それ以上は無理。


ついこの間まで第二王子の婚約者だった私が、第一王子と一緒にいるのは目立つ。


第二王子に絶縁宣言したばかりだし、その兄であるユリウスと一緒にいるのは不自然だ。


下手をすると「カレンベルク公爵家は第二王子派をやめ、第一王子派に鞍替えした」という噂が立ってしまう。


いずれはそうなるとしても、今はその時ではない。


ユリウスと王妃殿下の命を狙う輩がいる以上、迂闊な行動はできない。


それに、カレンベルク公爵家がどの派閥につくかは私の一存だけでは決められない。


いまの私にできることは、ユリウスにこっそりお弁当と解毒ポーションを届けることぐらいなのだ。


「ねぇ、ルシアンちゃんお願い!

 協力して!

 このままじゃ、いつかユリウス様と王妃殿下が毒殺されてしまいそうで見過ごせないの!」


私はルシアンに向かって手を合わせた。


『はぁ……アンジェは情に流されやすいなぁ……』


「ごめんなさい、でも放っておけなくて」


『ユリウスが死んだら、アンジェは泣くんだろうなぁ……』


ルシアンは耳と目を伏せ、深く息を吐いた。


『親友が泣くところとか見たくないからな、特別に協力してやるよ』


ルシアンはわずかに眉を潜め、諦めの混じったように呟いた。


「ルシアン、ありがとう!!」


ルシアンに抱き着き、彼の頭と背中をよしよしと撫でる。


『その代わり、食後に毎日マッサージしろよ。

 俺様の好物のスイーツも忘れるなよ』


「うん、絶対用意するね」


ルシアンは口ではなんだかんだ言うけど、面倒見が良い性格なのだ。


「ルシアン、ありがとう。大好き!」


『調子いいなぁ。

 まぁ、言われて悪い気はしねぇけどな』


ルシアンは嬉しそうに喉を鳴らし、尻尾を左右に振った。


こうして、ルシアンの協力の元ユリウスに毎晩差し入れすることが決まった。


後は、ユリウスが援助を受け入れてくれるかどうかにかかっている。


彼がこちらからの援助を素直に受け取ってくれることを願うのみ。


私は、ユリウスを死なせたくない。


だからできるだけのことをしたい。。




◇◇◇◇◇




夜の王都。


王宮の上空をルシアンに跨り飛行する。


城内は人気もなく静かだった。


ときおり、巡回の兵士を見かけるが、彼らがこちらに気付く気配はない。


ルシアンの黒い毛と私の漆黒の服は、夜の闇に上手く紛れた。


ユリウスの部屋の周りは、以前来たとき同様に警備が手薄だった。


「ユリウスを暗殺したい奴はご勝手に」と言われてるみたいで気分が悪い。


逆にエドモンドの部屋の周囲は、警備が厳重だ。


ユリウスとエドモンドは腹違いとはいえ兄弟。なのになぜこんなに差があるのかしら?


国王が愛人であるイリス様(エドモンドの母親)を溺愛していたのは有名な話だ。


王妃シャルロット殿下とは政略結婚とはいえ、嫡男のユリウスをここまで蔑ろにしなくても……。


モヤモヤした気持ちを抱え、ユリウスの部屋に続くバルコニーに降り立つ。


ドアを軽くノックすると、ユリウスがすぐに気づいてくれた。


「アンジェリカ嬢、精霊殿、本当に来てくれたんだね。

 嬉しいよ」


ユリウスは目を細め微笑んだ。


ユリウスは、白を基調にし水色と黄色を差し色に使ったジュストコールの上に、赤いマントを羽織っていた。


制服も良いけど、ジュストコールを纏ったユリウスもやっぱりかっこいい。


『アンジェ、目がハートになってるぞ』


「そ、そんなことないよ!」


ルシアンてば、ユリウスの前で変なこと言わないでよ。


「あなたは精霊様ですか?

 昼間見たぬいぐるみが犬の姿になるなんて不思議だ」


ユリウスはルシアンの変化に興味があるようです。


『ふっ、俺様の光沢と艶のある毛並みに見惚れ、ひれ伏すがいい』


ルシアンは注目されてご満悦だ。


「図書館で僕を襲いかかって来たのもあなたですよね?」


そうでした! 初対面のとき、ルシアンはユリウスに飛びかかったのでした!


「ユリウス様、その節は大変申し訳ありませんでした!」


「もう、過ぎたことだよ。

 君達はあの時、毒に侵された僕を助けてくれた。

 だからとっくに水に流したよ。

 いや、それどころか君達には深く感謝している」


ユリウスが心の広い人でよかった。


「そこにいると目立つから中へ」


ユリウスが私とルシアンを部屋に招き入れる。


人気がないとは言え、私達をいつまでもバルコニーに立たせて置くのは危険と判断したんだろう。


「お邪魔します」


ユリウスの部屋は、白と水色を基調にした美しい部屋でした。


天井にシャンデリアが吊るされ、天蓋付きベッド、ソファーとローテーブル、机と椅子などが空間に馴染むように配置されていました。


この前、この部屋に来た時はバタバタとしていてじっくりと見ることができなかった。


家具にユリウスの趣味の良さが現れています。


ですが、第一王子の部屋にしてはやや飾り気が少ない気がします。


それに隅々まで掃除が行き届いていないようで、家具の上に埃が溜まっていました。


城の隅に部屋を与えられ、警備は手薄、その上掃除まで手を抜かれるなんて……。


ユリウスの城での生活を想像すると胸が痛みます。


彼は想像以上に冷遇されているようです。


だからこそ、私が彼の支えになってあげなくては!


「来たばかりで申し訳ないが、母の部屋に行こう。 

 母には君たちの事を話してあるんから、安心してほしい」


今この瞬間も王妃殿下が苦しんでいるんですよね。


気を引き締めなくては!


「母の部屋と僕の部屋は隠し通路で繋がっているんだ。

 廊下にでなくても向かえるから、兵士や使用人に見つかる心配もない」


それは便利ですね。


ユリウスが本棚を動かすと、壁に仕掛けが現れました。


ユリウスが仕掛けを操作すると隠し通路が現れました。


王宮には様々な仕掛けが施されているようですね。


ここの他にも隠し通路があるのかしら?


ユリウスに先導され、隠し通路を進む。


「ユリウス様、私は先月まで第二王子の婚約者でした。

 そんな私が作った薬を王妃殿下が飲んでくださるでしょうか?」


いくら解毒剤があっても、本人に拒否されたらどうしようもありません。


改良したので、解毒ポーションは経口薬であり、噴霧剤であり、塗り薬でもあります。


王妃殿下に飲むのを拒否されたら、彼女に頭からかけて解毒することも可能です。


しかし、そのやり方もいかがなものでしょう?


最悪、不敬罪で捕まりかねません。


「大丈夫だよ。

 母はそういうことに疎い人だから」


ユリウスは苦笑いを浮かべました。彼の横顔は少し疲れているように見えました。


「母は元々、ヴァルトハイム王国の王女で、先代の国王と現在の国王に甘やかされて育ったんだ」


ヴァルトハイムの先代の国王陛下は王妃殿下の実父、現在の国王陛下は王妃殿下の実兄です。


「そのせいか政治的な策略や人の悪意に疎くてね。

 この国に嫁いで来てからも、困ったことがあると伯父上に頼ってばかりだ」


ユリウスの表情には憂いが滲んでいました。


「ヴァルトハイムの国王陛下にですか?」


「ああそうだよ。

 伯父が力を持っていた時はそれでもよかったんだけど、ヴァルトハイム王国の情勢が傾いたら、あっという間にこのざまだよ」


ヴァルトハイム王国は一年ほど前からモンスターの被害が増え、以前の勢いを失っています。


毎年、この国を訪れていたヴァルトハイム国王の来訪も昨年はありませんでした。


「だから、僕がもっとしっかりして母を守らないと」


そう言ったユリウスの表情は険しく、彼の瞳は決意に満ちていました。


そういう男らしい表情もできるのね。


胸がキュンと音を立てる。


ヴァルトハイム王国から嫁いできた王妃殿下は、この国に味方は少ない。


王妃殿下の性格を考えると、味方を増やす努力もしてこなかったのでしょう。


第一王子のユリウスに婚約者がいないのに、弟のエドモンドに婚約者を作ることを認めるくらいですから、王妃殿下はそうとうぽーっとした性格なのでしょう。


ルシアンが自分がしっかりしなくてはと決意する気持ちもわかります。


「私も微力ながら協力いたします」


頼りのないこの人達を守りたいと、側にいて支えたいと……そう思ってしまいました。


「解毒ポーションの他に、万能薬とエリクサーとお弁当も持ってきたんです。 

 万能薬はあらゆる病に効果があります、念のために接種してください。

 エリクサーは万が一に備え、人目につかないところに隠しておいてください。

 お弁当は、王妃殿下が回復されたらお二人で召し上がってください」


これだけあると結構な重量ですが、持ってきてよかったです。


「何から何までありがとう。

 全てが片付いたら、君にお礼をしないとね」


ユリウスが穏やかに微笑む。


「お礼なんてそんな」


ユリウスの笑顔だけで十分です。





読んで下さりありがとうございます。

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