27話「アンジェリカ、ユリウスに全てを話す」
ユリウスに尋ねられ、王宮に侵入した理由を全て話しました。
話の流れでルシアンのことも秘密にしておけなくなり、彼のことも話してしまった。
『アンジェのアホ。
俺様の正体は秘密じゃなかったのか?』
ぬいぐるみ姿のルシアンが不機嫌そうな顔つきでプンプンしてます。
「ごめんね。
ルシアンのことを話さないと、お城に侵入した方法を説明できなくて……」
ルシアンが闇の精霊であることと、私が彼を召喚したということだけは秘密にしました。
ルシアンは通りすがりの謎の精霊で、たまたま出会って友達になって、力を貸して貰っている……ということにしました。
かなり強引な理由付けになりましたが、ユリウスは信じてくれたようです。
『こいつが裏切ったらどうするんだよ』
「その心配はいらないわ。
第一王子殿下はそんな人じゃないと思うの」
『恋は盲目だな……。』
ルシアンは顔をしかめ、深く息を吐きました。
「こ、恋なんかしてません……!
ルシアンの勘違いです!」
ユリウスの前で変なこと言うのは止めて!
『よく言うぜ。
第一王子を見る時目がトロンとなってるし、頬が赤いぜ』
私、そんな表情してたの?
「そんなことないわ……!」
『王子にキスして惚れたんじゃないのか?』
「キ、キスじゃないわ!
あれは人工呼吸のようなものだから!
ノーカウントよ!」
今その話をしないで……!
ユリウスの唇の感触を思い出してしまうじゃない!
「君たちは、仲がいいんだね」
不意にユリウスに話しかけられて、心臓が飛び出しそうになりました。
ルシアンとのやり取りは小声でしたし、聞かれていませんよね?
『おうよ、俺様はアンジェの親友だからな!
親友の枠は王子様にも譲れないぜ!』
ルシアンが私の膝の上に乗り、体を擦り付けてきました。
可愛い……!
猫が飼い主によくやってる仕草ですよね! 前世で動画で何度も見ました!
ぬいぐるみの姿でそんなことをされると、とろけてしまいそうになってしまいます。
私はルシアンを抱きしめ、頬擦りしました。
「親友枠は難しそうだね。
それじゃあ、婚約者枠は空いてる?」
ユリウスが私の目を見つめ、ニッコリと微笑む。
「えっ……こ、婚約者……!?
急に何を言ってるんですか……!?」
穏やかな表情で、おかしな事を言わないでください!
『エドモンドに婚約破棄されたから、アンジェの婚約者の席は空いてる。
だけど、変な男にアンジェはやらないぜ!
俺様の眼鏡にかなった男じゃないと、婚約者とは認めないぜ!』
ルシアンがユリウスに向かって、グルルルルと唸る。
「ルシアンまで変なこと言わないで」
婚約者なんてきっともうできないわ。
「私は、公衆の面前でエドモンド殿下に婚約破棄された身。
再び婚約者を作るなど、贅沢な望みだと諦めております」
カレンベルク公爵家の後ろ盾欲しさに求婚してくる人はいるでしょうが、そんな下心見え見えの人とは婚約したくありません。
「なるほど、婚約自体を諦めた訳じゃないんだね」
どうして、そうなるんですか?
「カレンベルク公爵令嬢、君に求婚する。
僕を君の婚約者にしてくれないか?」
ユリウスが片膝をつき、私に向かって手を差し出しました。
心臓がトクン、トクンと音を奏でます。
「な、ななな何をおっしゃっているんですか!
か、からかわないでください!」
心臓がドキドキしすぎておかしくなってしまいます!
きっと、彼もカレンベルク公爵家の後ろ盾目当てに決まっています。
だって……私に求婚するメリットなど、他に何もありません。
でも、心の奥から「嬉しい」という感情が湧いてくるのはどうしてでしょう?
「カレンベルク公爵家の後ろ盾が欲しいのなら、まずは当主である父に話を……」
エドモンドに邪険にされ続けて振られたので、父の王家への心象はよくないでしょう。
ですが、ユリウスならもしかしたら……。
「違う、そんな理由でプロポーズしたんじゃない!
僕は、ずっと前からカレンベルク公爵令嬢のことが好きだったんだ!」
「…………はぁ?」
心の底から出た言葉でした。
「いえ、それだけは絶対ありえません!」
顔に白粉を塗り、全身黒ずくめで、エドモンドのストーカーをしているヤンデレメンヘラな痛い女に惚れる男なんているはずがありません!
「そのような戯れ、信じられませんわ」
「戯れじゃないよ。
僕はずっと君を見ていた。
君は初めて会った時から自分の気持ちに正直で、真っ直ぐな性格で、自分の想いを臆せずに言葉にできる人で……ずっと羨ましいと思っていた」
ユリウスの表情は穏やかで、真っ直ぐに私を見つめていて、とても嘘をついているようには見えませんでした。
「君はあの頃も今も変わらずに輝いている」
そんなふうに熱の籠もった視線で見られ、柔らかな声色で囁かれると……感情が揺らいでしまいます。
『蓼食う虫も好き好きって奴だな。 俺様がその頃のアンジェと出会っても、友達になりたいと思ったと思うぞ』
蓼食う虫も好き好きとは失礼ね。
でも、あの頃の自分を家族以外の人が認めてくれていたと思うと素直に嬉しかった。
心の奥がじんと暖かくなるのを感じました。
「君の後先を考えない直球な行動は、僕には眩しいくらいだった。
だが……君は弟の婚約者だった。
だから今まで自分の気持ちに蓋をしていた……」
ユリウスは悲しげに目を伏せました。
「同じくらい、先月僕を助けてくれた謎の女性にも、心が惹かれた」
「ふぇっ!?」
「浮気性だったのかと自分を責めた。
でも謎の女性の正体は君だった。
それなら惹かれても仕方ないよね」
ユリウスは記憶を取り戻す前の私も、記憶を取り戻してからの私も、どちらも好きになってくれました。
両方の自分を好きになってくれる人がいるとは思いませんでした。
今、とっても胸の奥が暖かいです。
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