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ケセラセラ  作者: 遠藤 敦子
4/4

宮城慶・奥平捺未の場合

4


「平塚さん、もしよろしければうちの大学の学祭で出店しませんか?」

 私立大学の文化祭の実行委員長である宮城慶(みやぎけい)は、キッチンカー・ケセラセラの店長である平塚直幸に交渉する。その大学は直幸の母校だった。直幸が了承し、それでは何を売ろうかという話になる。

「ケセラセラさんのメインメニューはたい焼きとたこ焼きだと思うんですけど、クロッフルとかいちご飴はどうでしょうか?」

慶が提案し、クロッフルといちご飴も売ることに決定する。クロッフルとはクロワッサン生地をワッフルメーカーで焼いたスイーツで、韓国を発祥にSNS上で日本でも人気となったスイーツだ。

 クロッフルといちご飴の材料などは慶たちが用意するとのことなので、直幸はいつも通りたこ焼きとたい焼きをメインに販売することになった。直幸は学生時代は学祭とは無縁だったので、社会人になって久しぶりに母校に行くのを楽しみにしている。


5


 奥平捺未(おくひらなつみ)は女友達に誘われて、学祭で平塚直幸のキッチンカーであるケセラセラにて手伝うことになる。コスプレに身を包んで恥ずかしかったけれど、女友達のためだと思って捺未は我慢した。

「いちご飴、クロッフルいかがですかー?」

捺未が呼び込みをすると、通りかかった男性客が

「お姉さんの連絡先教えてくれるなら買ってもいーよ」

と言ってくる。初対面の知らない男性からいきなり言われて捺未が困惑していると、直幸が止めに入った。

「はーい、そこまでです。うちはそういうお店ではありません」

「なっ……。僕は客だぞ?」

逆上する男性客に、直幸は

「当店には変質者に売る商品はございません。お帰りください。女性とお話したいのであれば、お金を払って相応のお店に行ってください」

と毅然と言い返した。2度と来るかと男性客は捨て台詞を吐き、去っていく。


「大丈夫だった?」

 2人になったタイミングで、直幸は捺未に声をかけた。捺未が頷くと、直幸は

「君、こないだ俺のこと励ましてお茶くれた子だよね?」

と尋ねる。

「そうです。覚えててくださったんですか?」

捺未が言うと、直幸はもちろんと返す。意を決して捺未は直幸に連絡先を聞いたけれど、

「大学卒業して社会人になってから、また連絡とろうな」

と断られた。成人してるし何が問題なのと捺未は思ったけれど、直幸の言い分としては

「まだ若いし、こんなおじさんやめといた方がいいよ。君が嫌いとかじゃなくて、社会人になってもっといろんな人を知ってほしい」

とのことだった。そういう理由ならばと捺未は納得する。

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