石澤まどかの場合
3
4歳の石澤まどかと母親は、まどかの病院帰りにケセラセラというキッチンカーを訪れる。まどかは「ひらつかしゃん」ことケセラセラの店長である平塚直幸のファンで、テレビで直幸を見てからずっと
「ひらつかしゃんにあいたい!」
と言っていた。予防接種を受けることになっていたけれど、母親がまどかに
「注射頑張ったら、平塚さんのところに行こうね」
と伝えていたこともあり、まどかは苦手な注射も泣かずに頑張れたのだ。予防接種の際も直幸が表紙に載ったフリーペーパーを離さなかったので、男性医師が
「まどちゃんはケセラセラの店員さんが好きなんだね」
と笑って言うほどだった。
ケセラセラにてまどかと母親はたこ焼きを購入する。母親が直幸に
「すみません、娘が平塚さんの大ファンで……。写真とか撮ってもらうことってできますか?」
とお願いした。しかし直幸は
「ごめんなさい、僕芸能人じゃないので写真とかはちょっと……」
と渋っている。そこでまどかは直幸が表紙に載ったフリーペーパーを差し出し、
「ひらつかしゃん、サインくだしゃい!」
とお願いした。サインくらいならと直幸は了承する。
写真も最初は渋っていたけれど、まどかのひたむきな気持ちに応え、写真も撮ることにした。直幸はまどかを片手で抱っこし、もう片方の手でピースサインを作る。まどかの母親がその様子をスマートフォンのカメラに収めた。
「ひらつかしゃん、ありがとうございました!」
と満足したまどかは直幸にお礼を言い、母親とその場から去っていく。