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ケセラセラ  作者: 遠藤 敦子
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平塚直幸の場合

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 飲食店を開業する。それは平塚直幸(ひらつかなおゆき)のかねてからの夢だ。大学時代は居酒屋でのアルバイトを4年間続けてきた。大学卒業後は平日に会社員として働き、金曜日の夜と土日は単発アルバイトアプリを使っていろいろな飲食店でアルバイトする。開業資金を貯めるためだけではなく、飲食店経営に生かせるノウハウも盗める分は盗みたかったからだ。そういうわけで直幸がアルバイトした飲食店は居酒屋以外にも、カフェやホテル内の高級レストランやファストフード店やおしゃれなレストランなど多岐にわたる。

 ボーナスや単発アルバイトで稼いだお金が一定額貯まり、直幸は社会人4年目となる26歳で新卒入社した会社を退職した。退職後は「ケセラセラ」というキッチンカータイプの飲食店を開業し、たこ焼きやたい焼きを主に販売する。ケセラセラをオープンして以来、直幸はビジネス街からイベントまで幅広くキッチンカーで駆け巡った。それ以外にも直幸の容姿が良かったことから、「イケメン店員がいるキッチンカー」としてケセラセラはSNS上でも有名になったのだ。


 日曜日に行われたフリーマーケットのイベントにて、直幸はキッチンカーでたこ焼きとたい焼きを販売する。イベントの終了間際に年配の女性客がたい焼きを買いに来たけれど、たい焼きは全て売り切れだった。

「すみません、たい焼きは全て売り切れてしまったんです。たこ焼きならありますが……」

直幸は女性客にお詫びしたものの、女性客は

「うちの可愛い孫が楽しみにしてるっていうのに、どういうこと? あんたみたいなチャラチャラした若造じゃ話にならないから上の人呼んできて」

と難癖をつけてくる。

「店長は私ですが」

直幸が言うと、

「あっそう、もう来ないわこんなとこ」

と女性客は捨て台詞を吐いて立ち去った。


「あーマジでうざかったわあのおばさん」

直幸は閉店後、公園のベンチに座ってため息をつく。チャラチャラした若造とかもはや難癖つけてるだけじゃん、と直幸は考えた。その頃、若い女性が

「ケセラセラのお兄さんですか? 元気出してくださいね」

と直幸にペットボトルのお茶をくれる。聞けばさっき自動販売機で買ってくれたそう。

「ありがとうございます」

直幸は女性にお礼を言い、キッチンカーに戻った。

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